心和のラノベ感想

1ヶ月15冊読了目標!

新約とある魔術の禁書目録4 感想

新約とある魔術の禁書目録4


今回は、新約とある4巻です。

表紙は、今回出てきた木原ファミリーの面々です。この人たちみんな名前が独特ですよね〜。読み終わってみると、ナチュラセレクターって何だったの?!って感じでした。

あらすじ

反学園都市サイエンスガーディアン27社による格闘大会「ナチュラセレクター」が東欧のバゲージシティにて開催される。その会場に上条も紛れ込む。

その舞台の裏で、学園都市から派遣された木原と名のつく乱数、病理、円周と一方でグレムリンの正規メンバーのウートガルザロキ、マリアン=スリンゲナイヤー、シギン、その他一部の「ナチュラセレクター」参加者による戦闘が行われていた。

感想

前にあった学園都市暗部の闘争に近く、盤面の登場キャラが徐々に明かされていきつつ、負けた者は黒塗りされていく形でした。意外と弱そうだった木原円周や、くノ一の近江手裏が強かったですね。まぁ、敵との相性もある訳ですが。

グレムリンの3人が正規メンバーで今回出てきて(マリアンは3巻ラストで出ていた)、案外サクッと倒された感じでした。マリアンの人を物とかに変える魔術は、リゼロのカペラを思い出しました。あとは、『戦乱の剣』はチート。物語シリーズのどっかの話で、キスショットの前に立つだけで、暦が自殺しようとしていたみたいなシーンを彷彿とさせるというか笑。

木原ファミリーもそれぞれ尖ってて面白かったですね。乱数さんは出落ち感あるけど笑。あとは、この巻は木原加群の話でもあったというか。先生時代はまともだったのかとも思いますが、生い立ち全体で見ると、グレムリンに入ったことも含めてやっぱり木原の一族に収まってるという感じですかね。今回病理への復讐と、自分の罪への浄化の両方を成し遂げたと。

結局、全然自然淘汰してなかったんですが笑、学園都市が圧倒的に反学園都市に対して勝利したって見方で良いんですかね。

そして色々と戦闘が各所であったんですが、この巻で1番やりたかったのは最後のシーンなのかなと思います。グレムリンのボスなのか幹部なのか分かりませんが、魔神のオティヌスが出て来て、一方で魔人になり損ねたオッレルスと拾われたフィアンマが出てきて。

幻想殺しの真の力はまだ分からないながらも、これからフィアンマたちと共に戦う流れになるんでしょうか。

今回のbest words

ばごヴぇるごぶちゃえ⁉︎ (p.312 木原円周)

あとがき

上条が主人公で安全地帯になってるという。そういえば、本文中に現在が0で未来が1みたいな記述がありましたが、アインクラッドの観測者に近いですね。バゲージシティの民衆が居なかったのもこのせいだったのか?

雲川鞠亜さん普通に弱そう…。

 

新約とある魔術の禁書目録3 感想

新約とある魔術の禁書目録3


今回は、新約とある3巻です。

ハワイで繰り広げられるグレムリンとの戦いの火蓋が上がる!のと、キャラ多くて読みづらい!って感じの回でした。最後まで読むと、グレムリンの片鱗が見えただけの巻だったというのが分かる訳ですが…。

あらすじ

バードウェイにより、グレムリンがハワイで暗躍するという情報を得た上条らはハワイへと向かう。オカルトの力によって、何人かの米国人が操られる事象が確認される中、大統領のロベルト=カッツェを巻き込みながら事態は進行する。

上条らは、敵魔術師の魔術の仕組みを手探りで模索していく一方で、事態の裏側にメディア王オーレイ=ブルーシェイクが絡んでいることが分かっていく。

感想

400ページの分量、登場人物の多さ、コロコロ変わる展開等で少し読むのが大変ではありましたが、罪のない弱者を救おうとする上条らしさや、ラストで自分だけで事態を背負いこもうとする所に加えて、少し美琴が勇気を出すシーンは良かったです。ペアリングは渡せてなさそうですが…。

色々話が混み合っているんですが、オーレイが合衆国を意のままに操る為にグレムリンを利用した一件が表にあって、裏側ではグレムリン側は今回の一件で黒幕は表に顔を出さずに、世界大戦で割りを食ったロシア清教の魔術師を指嗾しつつ、『起爆剤』を使用し火山を噴火させることが真の目的だったと。

結果として、表の問題は解決したものの、グレムリン側はやるべき事を成し遂げたという形のようですね。『起爆剤』絡みの目的はまだ分からずでしたが、阻止は仕切れずに目的は達成したようですし、バードウェイの寝返りもあって、今回の介入によって学園都市が孤立の方向に向かいそうという。まぁ、端っからバードウェイは怪しかったんですが、現状完全な敵っていう感じでもないんだよなぁ。そも魔術サイドですしね。

今回の表の敵ロシア清教の魔術師のサンドリヨンは、御伽噺をモチーフにした魔術でサローニャはレーシーを元にした人を操る魔術でした。色々と制約がある訳ですが、こういうモチーフを調べていくのも面白そうですね。それと、読む順番で人を操ると言えば、スパイ教室の紫蟻もそうだったなーと思いつつ。

新約シリーズは、第三次世界大戦の後の話なので、やっぱりその出来事が色々なものの根底にあるんだなーという感じです。また、今まで交わることのなかった一方通行、上条、浜面に美琴などが同じ舞台で戦っているのも新鮮だなぁと思います。

今回のbest words

アンタと私は、同じ道を進んでいる。その事を忘れんじゃないわよ (p.372 御坂美琴)

あとがき

その名の通りグレムリンが"暗躍"する回だったなぁという印象でした。学園都市に戻らないと言った上条はどうなるのか。

前々から思ってたんですが、鎌池さん何であんなに美琴の心情を描くの上手いんでしょう…?笑

新約とある魔術の禁書目録2 感想

新約とある魔術の禁書目録2


今回は、新約とある2巻です。

バードウェイによる魔術サイドの事情説明と第3の勢力への言及、そして神裂によるラジオゾンデ要塞の調査が今回の話でした。とあるシリーズでは、美琴と神裂がキャラとしては好きなんですが、どちらも活躍してたんで良かったです。

あらすじ

上条当麻、一方通行、浜面仕上が1つの線で交わる。上条の復活報告を各所で終えた後に、バードウェイによる魔術関連の説明が行われる。その高説は、魔術の基本的な要素から、第三次世界大戦から派生した第3の勢力クレムゾンの存在にも迫るものだった。

イギリス清教は、超高度に巨大な要塞を捕捉する。それは、魔術でも科学でもない勢力によるものであった。そのラジオゾンデ要塞の調査へ向かった聖人の神裂は、この要塞が学園都市に向かっていることに気付く。

感想

まずは、最初に上条と一方通行、浜面が連絡先を交換したのが大きな進歩ですよね笑。上条は、これまでも魔術サイドとの戦いをしてきた訳ですが、一方通行や浜面からして見れば存在は何となく認知していても未知なもので。

バードウェイが何者なのか、上条はどうやって戻ってきたのかはよく分からなかったんですが、魔術の講義や情勢は、今までそういうものなんだろうという意識だったものが、改めて説明があったおかげで少し理解が進んだ感じです。科学は学園都市上部の支配から始まっているのに対して、魔術は無力感からの脱却から始まっているとか、代替可能な霊装の話とか。

ラジオゾンデ要塞については、クレムゾンによる上条の生存の確認だったようです。それにしても、こんな大掛かりな仕組みを用意できるクレムゾンとは…。オッレルスとは関係ないんですかねー。

コメディパートとしては、五和と建宮の話やらアイテムの面々とフレメアの対面や、滝壺の嫉妬心、様々なヒロインが上条に付き纏うシーン等があって、それぞれにほっこりしました。

そして、やっぱり美琴が良い味出していて、ここを逃すと3冊分くらい出番なしとか普通にありえるみたいなメタ的発言もあり。「はいミコっちゃんこれおみやげー」って酔って言う上条も面白かった笑。最後に、一緒に戦う覚悟を決めた点も今後に期待って感じ。

今回のbest words

お前の姉を殺害した女です。よろしく (p.142 麦野沈利)

あとがき

250ページ弱で読みやすかったです。今後も魔術サイドや第3勢力との戦いが始まるんだろうなぁと予感させる1冊でした。

おまんまは確かに危うい日本語w

新約とある魔術の禁書目録 感想

新約とある魔術の禁書目録


今回は、新約とある1巻です。

便宜上これまでのとあるシリーズを旧約と呼ぶと、旧約を読んだのが1年ほど前で、ようやく新約を読み始められました!2022年現在では、創約の7巻まで出ているとあるシリーズですが、この新約がスタートしたのが2011年の3月。

上条不在で、浜面と一方通行のダブル主役で開幕した新約で、今までを懐かしみながら、また今までの雰囲気を感じながら読めた1巻でした。

あらすじ

第三次世界大戦終結後、浜面や一方通行の周りに平穏が訪れていた。浜面は、改めて麦野、絹旗、滝壺と共に『アイテム』を再結成し、一方通行は打ち止めや番外個体、黄泉川や芳川らと過ごす。

そんな平和な一方で、どこか物足りなさのようなものを感じていた2人の元に、闇の気配が忍び寄る。半蔵に出会った浜面は、元スキルアウトのリーダー駒場利徳の守っていたフレメア=セイヴェルンが『新入生』を名乗るメンバーに追われていると聞き、一方通行を巻き込みながら再び闇へと立ち向かうのだった。

感想

ラノベってこうだよね、と思いながら読んでました。今までのとあるシリーズを思い出しながら読めてやっぱり面白いなと。

今回は上条が不在だった訳ですが、浜面がその役割を担って、無能力者であっても状況を有利に使いながら、ヒロインを守っていく姿はこれぞ!って感じでした。

そのヒロインが、かのフレンダの妹でした。一方通行としては、前に倒した駒場の置き土産みたいなもので、浜面としては、勿論元『アイテム』のメンバーの妹で。浜面には滝壺がいて、一方通行には打ち止めというかけがえのない絶対に守るべき存在がいる中で、それでもフレメアを助けにいくというのがもうね。

それで、フレメアが追われる理由については、フレメア自身にある訳ではなく、浜面と一方通行の共闘をけしかけることで、学園都市が2人を標的にさせるということらしく。そういえば、2人とも学園都市への交渉材料を持っていましたね。現状では、脅威対象認定はされてないって話か。

そして、今回の敵はサイボーグやら、能力を道具を使って増強してくるタイプでした。確かに、レベル5の演算能力を組み込んだ機械とか普通に考えたらチートなんだけど笑、科学は日々進歩してるんだなー。

暗闇の5月計画って言葉も正直忘れてましたが笑、防御性の絹旗最愛と、攻撃性の黒夜海鳥か。

そんなこんなで科学サイドの話でした。最後にここぞのタイミングで上条が出てきたのはやっぱり嬉しかったですね。バードウェイという魔術サイドの人物も出て来て、上条がどう救われたのかも含めて次回がまた楽しみです。

今回のbest words

久々に学園都市まで戻ってみたら、なんか騒がしかったから首を突っ込んだだけ (p.399 上条当麻)

↑途中、浜面も結構良いこと言ってたんですが、あんだけタイミング良く戻ってきておいて、このセリフだもんなぁ笑。さす主人公。

あとがき

初っ端から400ページでびっくりはしたものの、やっぱりこの世界観は唯一無二だなとも感じました。というか内容的に、旧約のSS読んでおいて良かった。

番外個体が何かただの優秀なツンデレになってない…?笑

わたしはあなたの涙になりたい 感想

わたしはあなたの涙になりたい


今回は、わたしはあなたの涙になりたいです。

第16回小学館ライトノベル大賞の大賞受賞作。ラノベっぽくないイラストも相俟って、これから良い話が始まる感が凄い。twitter等でも評価は高そうだったので楽しみにしてました。

が、個人的には微妙でした…。僕が感動系そんなに刺さらない派の人間であることを差し引いても、ちょっと上っ面というか薄かったというか。

話としては、特段これといった才能もない少年と、ピアノの天才少女が中心で、つかず離れずのまま時が過ぎて、立派なピアニストになりかけた少女を塩化病が襲うというもの。失って空いた穴の大きさを知る、という感じ。

あらすじ

三枝八雲が小学3年生の頃、母が塩化病に罹る。八雲は、ふとピアノの音に引かれて出会った少女、五十嵐揺月と仲良くなる。勝ち気な揺月は学校で虐めに遭い、家庭でも母のスパルタなレッスンに苦しんでいるようであった。

中学、高校と時は流れる中、八雲はただ呆然と過ごす一方で、揺月はイタリアに留学する。友人の勧めで小説を書き始めた八雲だったが、中々梲が上がらない。そんな折に、揺月から誘いがかかる。久々に会った揺月は美人になっており、ピアノの演奏技術も格段に上昇していた。しかし、演奏の途中で指が崩折れ、直に塩化病と診断されてしまう__。

感想

どんな話なんだろう?と全くの予備知識なしで読み始めた今作、全然塩化病が出てこないな…と思い始めて、案の定ヒロインが悲劇のヒロインとなるパターンでした。というか、八雲母を塩化病で退場させる意味ってあったんですかね…。僕の半分は影で塩だ、みたいな文章は好きでしたけど。

それからは、徐々に不自由になっていく揺月を支えながら、亡くなった後に八雲は抜け殻になってしまい、それでも揺月の残したビデオレターを見て再起を果たし、小説を書き上げるという展開。なので、テンプレ感は否めないかなと。

文章表現なんかは結構独特で、綺麗な世界観にマッチしていたのと、甲子園の高校名だったり、東日本大震災なんかは、現実のものを採用していて、そこは虚構としては珍しいのかなと思ったり。基本的に、揺月と八雲を中心に描かれるんですが、ギャグみたいな展開が一切なかったのも珍しいかなぁ。

義手とか、物語化とか、風評被害とかその辺りにはメッセージ性が強く現れていたように感じました。でも、後半で物語化が使い方によっては肯定されるという見方もあったので、タイトルの意味も含めて良かったです。

途中で、親に嫌気が差した揺月が八雲に逃避行を誘うシーン、あれで八雲が待ち合わせ場所に行ってたらどうなってたんだろうなーというのは気になりますね。夢で良いから、その世界線の2人の行く末を見て、八雲にどう影響を与えるかみたいな展開も見たかったかも。基本的に、主人公の八雲がキャラとして弱い気もします。流されてるだけというか。

あとちょっと残念だったのが、揺月の両親の扱いですかね。一流になれなかった母が娘にピアノで暴力を振るうとか、父はそれを止めることは出来ず娘に罪滅ぼしの為かお金を渡していたという家庭だった訳ですが、どこかしらに若かりし頃の2人のほほえまーエピソードか、あるいは裏では揺月を大切にしているエピソードなんかが入ると救済されるのになと。なんか輪郭が暈けているというか。ちゃんと看病してるだけ親やってるんだけど、遅いんだよなー。

揺月の死語2年の間どうやって八雲は生き存えたのでしょうか…?

今回のbest words

……もしもいるとしたら、揺月以外の誰かじゃないよ (p.66 三枝八雲)

↑両想いなのがエモい。後半の接吻のシーンで敬語になる所も良かったですね!

あとがき

塩化病の存在理由って、塩になった揺月を食べてタイトル回収する為だけだよな…、うーん。似たような他作品と比べて、突き抜けた何かがあった訳ではないのでアレなのかなぁと思いました。四月は君の嘘とかの方が良き。

事故に遭って義足になりつつも甲子園でHRを打ち、八雲に小説家を勧めた良き親友の清水くんや、小説家の仕事の為に離婚した八雲の父の話とかには触れなかったけど、そこは是非読んでみて下さいということで。

塩の街 感想

塩の街


今回は、塩の街です。

2004年の電撃ゲーム小説大賞の大賞受賞作。有川浩さんと言えば、読んだことはないですが図書館戦争で有名な方で、今作以降はハードカバーの出版になっているみたいで。それから、空の中・海の底と並んで自衛隊三部作なんて呼ばれているらしい。

終始重めな展開ながらも、ためになる言葉が多く出てくるのと、これは愛の話なんだなぁと。世界と好きな人のどっちを取るのかという。

感想

〜Scene-1〜

大きな荷物を背負って群馬から東京までやって来た男(谷田部遼一)を(小笠原)真奈が助けて、秋庭の元へ案内し、綺麗な海に行きたいという遼一の願いを叶える話。

一見すると、遼一が主人公なのかと勘違いしてしまうのですが、今作の主人公は真奈と秋庭の2人。寧ろ作者が女性だからか真奈視点が多い。

塩害の余波が残る東京で、女子高生の真奈と一回りくらい?年齢の離れた男の秋庭の関係や、塩害が何かも分からない上で物語は進む中で、遼一の目的が塩害の影響で塩の彫刻と化してしまった彼女を海へ還すことだと分かる。そして、おそらく遼一自身も塩害の影響があって、彼女と共に死んでいこうとしているんだろうな、と。

この話で重要な点は、塩害が必ずしもマイナスにだけ働いた訳ではないということで。遼一の彼女には彼氏がいたけれど、塩害に罹った彼女はそこで一緒にいたいのが遼一だと気付いたらしく。関係ないのに泣いてごめんなさいという真奈の優しさが切ない。

"景色は美しくあろうとして美しいわけではない"というのは、自分のためというのが根幹にあるというか何というか。

〜Scene-2〜

帰路の途中で、脱獄囚(トモヤ)に脅迫される話。ここでも、塩害周りのことはベールに包まれたまま、塩害の被害者が描かれていました。トモヤの昔の好きだった人に素直に接することの出来なかったエピソードが何とも甘酸っぱい。割と真奈と秋庭の関係性の分岐点となる話でもあったかな。

ルールは自分を守るためにあるというのは、目から鱗かもなぁ。世界は綺麗なものだけで出来ていない。

〜Scene-3〜

塩害の情報が少しずつ明らかになってきます。と言っても、最後まで読んでも結局のところ塩害の発生原因とか、伝染するのかとか、何でそんなに一気に人が死んだの?というのは分からなかった訳ですが。

とりあえず、白い隕石の落下後に関東圏の人口が3分の1になったらしい。真奈の両親はその日以降行方知らずで、前の2件を経て真奈は秋庭と共に真奈の実家に帰ると。向かう車中で、秋庭は真奈に歌を歌わせるシーンがありますが、真奈に思い煩いさせないようにしてたと考えると秋庭の優しさに泣ける。

近所の夫人がクズ過ぎる…。塩害で無秩序と化した混沌の中で、1人で生きる女子の危険さは想像に易い中で、秋庭が真奈の危機を救ったと。何か大地震でコンビニの物が盗まれる光景を思い出してしまう…。

〜Scene-4〜

秋庭の友人の入江慎吾が来訪し、テロの相談をされる話。この辺りから2人の恋愛色が強くなった印象。秋庭が元空自のプロであったことや、塩害が塩の結晶を見ることで発症するという事が分かってくる。生き物っていう話は眉唾な気もしますが…。

ここから、入江の脅迫じみた提案により、2人は基地での生活に移行。

〜Scene-5〜

入江との会合などで中々秋庭に会えなくなった真奈が、基地内の清掃にかって出る中で入江が塩害の人体実験をしていることを見つけてしまうのと、秋庭がパイロットとして塩害阻止の一環で米軍基地襲撃作戦の参加を耳にしてしまう話。

受刑者を使って、塩の結晶を見させ続けたら塩害を発症するのか人体実験をするというのは、非人道的である一方で、ある意味では効率的な考えかなと思ったり。トモヤもその被害者だった訳ですが、トモヤと出会っていなければ情も芽生えたりはしなかったと。知ってしまったからには当事者になってしまう。どこかでフィルターをかけた方が、幸せに生きられるのかも知れません、気持ちの上では。

〜Scene-6〜

明日や世界のことよりも、秋庭がいる方が大事だと真奈は訴える一方で、先に死なれたら困ると撥ね返される。女を語る入江が面白い。

出撃した秋庭に対して、結晶の部屋に入ることで、秋庭生きて帰って来る要因を作り出す真奈の度胸が凄い。

〜Scene-7〜

あとは秋庭が無事に戻って来られるか否かって話でしたが、入江が前もって米軍に話を付けていたこともあって、無事に帰還してめでたしめでたし。

何の力もない真奈は、秋庭にとって軽い荷物であろうと足掻きますが、秋庭が帰って来られるように重い荷物になろうとする姿は良かったです。逆転の発想。

今回のbest words

来なくていいです、明日なんか__秋庭さんが行っちゃうんなら、そんなもの要らない!あたし、世界なんかこのままでいいもの! (p.235 小笠原真奈)

あとがき

イリヤの空、UFOの夏に近い作品と言えるのかなぁ。世界よりも大切な人を選択する強さには憧れますね。

塩害の世界観の説明が少なかったのが少し残念ではありましたが、その分2人の愛の結晶が見られたのは良かったと思います。

"誰かのためというのは、本当は自分のため"という言葉が印象的でした。一面だけで判断してはいけないというのも。今回たまたまトモヤも真奈に牙を向く形となったものの、一人の恋に悩む青年でしかなく、塩害が無ければまともに罪を償っていたのかも知れないし、入江も悪人に見えて世界の為に行動しているとも言えるし、秋庭にしたって危地に赴くのは世界のためではなく、真奈のためで。案外、真奈に先に死なれたら困るというのが本音なのかもなーと。人に優しくする時に怒りっぽくなるのもありましたし。

塩害によって絶たれた縁もあるし、結ばれた縁もあって。人も物事も多面的に見て考えないとなーと思いました。

 

 

ソードアート・オンライン27 ユナイタル・リングⅥ 感想

ソードアート・オンライン27


今回は、SAO27巻です。

1年ぶりの新刊!今月には延期になった冥き夕闇のスケルツォの劇場版がありますし、来月には、川原さんの新作デモンズ・クレストが出るということで、熱いですね!!

今回も、ユナイタル・リングの攻略と、UWでの侵略の攻防が交互に描かれる形でした。確かに、エオラインの謎についてはまだまだ明かされず…笑。

あらすじ

凍結から解放されたセルカ、ロニエ、ティーゼは再会を互いに喜びつつ、特にティーゼはエオラインからユージオの面影を感じ、憂悶する。

アリスを残して現実に帰還したキリトとアスナは、菊岡の車でそれぞれの帰途に着く。その途中に、菊岡はアスナに未来の猫型ロボット《ヨンちゃん》をプレゼントし、2人にその開発の助力を申し出るのだった。

ユナイタル・リングにダイブしたアスナとキリトは、ラスナリオの変容に驚きはしつつもリズからボスを倒した事を聞き、2階層を目指す。アスカ・エンパイアやアポデに遅れを取るALO陣営であったが、クラインらと合流した後に、ユイが何者かに攫われて…。

アリスからの救援があり、再びUWにダイブしたキリトとアスナは、セントラル・カセドラル等が奇襲を受けていることを知るのだった。

感想

毎回言っていて申し訳ないですが、前回の内容を思い出しながら読むので少し大変でした…。けれども、そうそうそうだったよなってなってからは、展開の面白さに読むスピードが上がっていくという感じでした。

ユナイタル・リングでは、アポデの面々と出会してユイが攫われるというアクシデントもありながら、NPCの説得のためという理由が分かって、まぁという感じ。URだと確か死んだら再ログイン出来ないって話だったと思うんですが、敵との休戦協定も難しいよね…。

《エルフ戦争キャンペーン・クエスト》って、プログレッシブで出てくるんですかねー。アルゴのことも含めてあっちの方も読まないとな…。

主体建築物の説明のところは、読んでてなるほどなぁって呟いてしまったんですが、作中でリズも同じこと言ってたので笑いました。読者も同じく没入できてる証左ですね。

UWの方では、エアリーのお陰で空白の時代が少しずつ分かってくるんですが、何と言っても永久凍結された整合騎士の面々が、今後また復活しそうという所じゃないでしょうか。また、今まで名前の出てこなかった整合騎士たちなんかも伏線としてありそうです。

伏線と言えば、ロニエの婚約者が誰だったのかも気になります。ティーゼの方は予想通りレンリだったようですが。にしても、6世代離れた先祖と会うって凄い状況。

あとは、UWでの反乱が起きる原因と、エオラインを狙うコウガと名乗る侵略者の件なども気になる所です。キリトの助けに来るタイミングはいつも完璧だぜ…。

今回のbest words

ルーリッドの教会のお風呂は大きいと思ってたけど、この大浴場と比べたら牛と鼠だよ (p.89 セルカ)

↑UW版月と鼈

あとがき

UWの方は大分ごちゃついてきてる一方で、URの方は世界観含めて見ていて楽しいですね。

小説内では2022.11.6がSAO正式サービス開始日だったんだよなぁ。現実の方が遅れを取ってるパターンだったか。

〆切前には百合が捗る2 感想

〆切前には百合が捗る2


今回は、〆切前には百合が捗る2巻です。

元々は上下巻の構成だったようで、2巻で纏まっているなという感じでした。恋のライバルの登場と、愛結の両親とのバトルといった回になっていました。

あらすじ

ヒカリは自著のアニメ化に際して、人気声優の須原朋香と知り合いとなっており、その朋香が家に遊びに来る。そこで、愛結は朋香がヒカリの事を性的に好いていることに気付く。

愛結は何も持っていない自分に比べて、多彩な朋香に対しヒカリの隣にいるべきなのは朋香の方ではと思う一方で、ヒカリの方も愛結にとって、自分より朋香の方がお似合いなのではと悶々と、時には嫉妬するのだった。

感想

今回も面白かったです。最後のシーンなんかはベタと言えばベタなんですが、2巻という纏まりを考えると丁度良かったのかなと。今作は割とLGBTの話に触れていて、現代的にもまだ賛否両論の渦中にあって、未だ認知としては進んでないという印象だと思います。ただ、

だからこれは、何も特別な物語なんかじゃない。

一人の人間と一人の人間が恋に落ちたというだけの、どこにでも転がっているようなありふれたストーリーだ。

という風に考えると、揶揄すべきことではないんだろうって気になります。

恋のライバルとして出てきた朋香もストレートではなく、レズビアンという癖を持っていましたが、徐々にオタク丸出しの残念キャラになっていくのは笑いました。フォカヌポウとかニンジャナンデとかは初めて知った。

朋香が百合営業する様子は、同じくホモアピールをする春斗を彷彿とさせました。それで言ったら、海老ヒカリも伊月のイメージなのかも。

今回も、愛結とヒカリは2人でお風呂に入りながらホラー映画を観たり、伊勢海老のために伊勢神宮などに旅行したり、ダイエットのために断食道場に行ったり、朋香のライブを観に行ったり、やはりのほほんとしてました。猫缶を食べたり、赤福氷と出てくると半月を思い出さざるを得なかったですね笑。

あとは、京が名探偵だった。2人の行き先をあらゆる手段から突き止めるという。それと、何となくヒカリが京のことを、みゃーさんと呼ぶのはなんだかなぁって思いました。多分、年齢は京の方が上なんだろうけど、その呼び名は妹さえキャラの間だけにして欲しかったみたいな。

そういえば、p.54の可児那由多のルビが"かじなゆた"になってたのは誤植?

今回のbest words

パピコの前に優佳理さんを食べます (p.35 白川愛結)

あとがき

百合のカップルって前途多難だなぁと思う反面、幸せになって欲しいという思いも募りますね。

もし3巻が出るなら、ヒカリの家族の話が見たいかなー。ベコベコになったランボルギーニさんはいかに…。

〆切前には百合が捗る 感想

〆切前には百合が捗る


今回は、〆切前には百合が捗るです。

妹さえいればいればいい。13巻の最後に挙げられていたプロットの1つがGA文庫から出た作品ですね。カクヨムGA文庫って強い繋がりがあるのか?と思いましたが、作者あとがきによると、前々から声はかかっていたらしい。

妹さえの世界観と共通の部分があって、サブキャラとして京も登場。U35さんの絵も好きですが、大分描く人によってキャラの印象変わりますねー。

あらすじ

「L(レズビアン)」である事を周りに打ち明けた白川愛結は、友人や家族から距離を置かれてしまう。嫌気が差した愛結は、東京に逃げてくるも、当然のようにすぐに行き場を失ってしまう。

従姉妹の京の元へ身を寄せると、あれよあれよと京の担当作家である海老ヒカリを紹介され、身の回りの世話をする対価として2人での生活がスタートする。

感想

面白かったです。女子2人がわちゃわちゃしてるだけで楽しめるのだから、百合というジャンルは凄いよねと。平和なのが良い。

 ヒカリは、妹さえでも名前だけは出ていた受賞作家で、『心臓をさがせ』のインパクトは覚えてました笑。よく〆切をぶっちぎっては担当の京とぶつかり合っているという感じですが、実は実家が金持ちらしく、めちゃくちゃ羨ましい境遇…。

一方の愛結は、田舎の出のため世間知らずな部分があって、そこをヒカリによく揶揄われながらも奮闘する子犬のようなキャラ。家事などは忠実にやってました。 一目惚れから始まって、同じ時を過ごしていく内にヒカリの内面まで惹かれて、最後にはしっかり付き合うところまで進展してくれました。ヒカリの方も愛結が手放せないようになってきたと。

組み合わせとしては、大人っぽいヒカリと子供っぽい愛結なんですが、時にはズボラなヒカリに対して、しっかり者の愛結が目立ったり、愛結の一方的な愛かと思いきや、ヒカリが思わせぶりな事を言ったり、そんなバランスが見ててほんわかしました。

正直なところ、愛結が途中にヒカリに付き合っている人いますか?と聞いて、いないと返答があった時には、読者としても嬉しくなりました笑。どちらも健啖家なのも良い。

スカイツリーなどにお出かけしたり、DIYで棚を自作したり、ニジマスを釣りに行ったり、温泉旅行に行ったり、うん、ずっと見てられますね。

途中に出てきた「原稿に追われているとき『この原稿が終わったら思いっきりゲームしたり部屋の大掃除したり凝った料理を作ったりするぞー』なんて考えたりするんだけど、いざ原稿が終わってなんの憂いもなく自由に行動できるっていう状況になると、不思議とあんまりゲームも料理も掃除もやる気にならなくて、結局昼間からコンビニのおつまみ食べながらお酒飲んで寝ちゃったりするのよ」とヒカリが言うシーンがありましたが、共感できますねぇ。

忙しい時は、早くゲームとか読書したい!って思ってても、休みの日になると何となく時間を無駄にしてしまったり。適度な緊張感とか逼迫感が必要なのかも。まぁ、やるべき事を先に終わらせて後で楽をするってのは大事ですね。

今回のbest words

今日は五月三十二日です (p.185 海老ヒカリ)

↑愛結の誕生日が6/1なのも含めて面白い笑。

あとがき

何か下の名前を呼び合い始めるタイミングってエモいですよね〜d(^_^o)

百合と随所に出てくる作家特有のネタもあって、面白かったです。喧嘩はして欲しくないけれど、付き合った後平坦なのも退屈になるし、どう展開するか難しい2巻、楽しみにしてます。

〆切前には執筆活動を捗らせて…。

妹さえいればいい。14 感想

妹さえいればいい。14


今回は、妹さえ14巻です。

予定通りの最終巻。各キャラクターたちの3年後の様子、そして伊月の予知夢⁈から生まれたさらに10年後のお話が収録されていました。

表紙が1巻と似た構図になっているのもポイント高い。

感想

シリーズを読み終えてまず言いたいのが、『妹さえいればいい。』という作品は断じて妹萌えではなく、青春群像劇の作品だったのかということ。伊月の妹萌え作家というアイデンティティすら消失しましたしね笑。タイトルに騙されてしまった。寧ろ展開から言うと、伊月の作品である『主人公になりたい』の方がそれっぽい。

今作の好き嫌いの分水嶺は、成長(変化)を認められるか否かなのではないかと思う。それは、結婚してやけに大人しくなってしまったカニ公然り、新たな恋を始める京然り。成長にも種類がある訳ですが、今作の登場人物たちの変化は最初から見ると劇的で、その方がリアリティも出てくる一方で、個人的にはうーんという部分もありました。

やはり最初に1巻を読んだ時の衝撃、面白さを考えると、尻すぼみの印象は拭えないかなと。保守に入ったというか。ストーリー的には、最初から好き同士だったヒロインと主人公が結ばれて、途中喧嘩もしながらも最後までいくんですが、やや平坦過ぎるというか平和過ぎるというか。

はがないのどっちつかずな終わり方を考えると、しっかりハッピーエンドに持って行って貰えたのは良かったものの、終盤は起伏に乏しく物足りなさが残ったかなと。それと、とにかく伊月の事が上手く運び過ぎる一方で、伊月の苦悩の描写が少ないように思えるので、やっぱり才能じゃんとかご都合主義だな…って気持ちになる。俺TUEEEEの爽快感でもないし。

まぁそんな感じでモヤモヤするというのが正直なところでした。また、青い小鳥たちで、伊月の息子の宙とアシュリーの娘の優羽と伊月の妹の栞の話があったんですが、そもあまり感情移入できないし、濃いキャラ付けも相まって何を見せられているんだろう…って感じでした。だったら、京と春斗のぎこちない恋愛模様の方が見たかったかなぁ。というか、三田洞娘みたいなキャラ出す必要あるんでしょうか…?

今巻の展開で熱かったのは、京が伊月とエージェント契約を結んでいて、『主人公になりたい』以来の、ターゲットを那由多にしての伊月の新作『明日の君さえいればいい。』で、1巻の伏線だったぷりけつとのタッグ復活の部分ですね。そういえばそうだったと笑。

是非とも有能イケメンと化したプリケッソと千尋が結ばれて欲しい…。それから、百合になっていた蚕もアレでしたが、扱いに困った撫子が残念キャラ扱いされてるのは許すまじ…。

今回のbest words

待たせすぎですよ、先生 (p.134 恵那刹那)

あとがき

期待度が高過ぎたが故に、少し否定的な意見が多くなってしまったものの、作家と編集者の苦悩が随所に見られつつ、ユーモアたっぷりで、各キャラが主人公たらんと奮闘する姿は面白かったです。

最後の伊月のスピーチですが、"変わることは、進むこと"という心境に達したことが大きかったのではないかと感じました。