今回は、妹さえ14巻です。
予定通りの最終巻。各キャラクターたちの3年後の様子、そして伊月の予知夢⁈から生まれたさらに10年後のお話が収録されていました。
表紙が1巻と似た構図になっているのもポイント高い。
感想
シリーズを読み終えてまず言いたいのが、『妹さえいればいい。』という作品は断じて妹萌えではなく、青春群像劇の作品だったのかということ。伊月の妹萌え作家というアイデンティティすら消失しましたしね笑。タイトルに騙されてしまった。寧ろ展開から言うと、伊月の作品である『主人公になりたい』の方がそれっぽい。
今作の好き嫌いの分水嶺は、成長(変化)を認められるか否かなのではないかと思う。それは、結婚してやけに大人しくなってしまったカニ公然り、新たな恋を始める京然り。成長にも種類がある訳ですが、今作の登場人物たちの変化は最初から見ると劇的で、その方がリアリティも出てくる一方で、個人的にはうーんという部分もありました。
やはり最初に1巻を読んだ時の衝撃、面白さを考えると、尻すぼみの印象は拭えないかなと。保守に入ったというか。ストーリー的には、最初から好き同士だったヒロインと主人公が結ばれて、途中喧嘩もしながらも最後までいくんですが、やや平坦過ぎるというか平和過ぎるというか。
はがないのどっちつかずな終わり方を考えると、しっかりハッピーエンドに持って行って貰えたのは良かったものの、終盤は起伏に乏しく物足りなさが残ったかなと。それと、とにかく伊月の事が上手く運び過ぎる一方で、伊月の苦悩の描写が少ないように思えるので、やっぱり才能じゃんとかご都合主義だな…って気持ちになる。俺TUEEEEの爽快感でもないし。
まぁそんな感じでモヤモヤするというのが正直なところでした。また、青い小鳥たちで、伊月の息子の宙とアシュリーの娘の優羽と伊月の妹の栞の話があったんですが、そもあまり感情移入できないし、濃いキャラ付けも相まって何を見せられているんだろう…って感じでした。だったら、京と春斗のぎこちない恋愛模様の方が見たかったかなぁ。というか、三田洞娘みたいなキャラ出す必要あるんでしょうか…?
今巻の展開で熱かったのは、京が伊月とエージェント契約を結んでいて、『主人公になりたい』以来の、ターゲットを那由多にしての伊月の新作『明日の君さえいればいい。』で、1巻の伏線だったぷりけつとのタッグ復活の部分ですね。そういえばそうだったと笑。
是非とも有能イケメンと化したプリケッソと千尋が結ばれて欲しい…。それから、百合になっていた蚕もアレでしたが、扱いに困った撫子が残念キャラ扱いされてるのは許すまじ…。
今回のbest words
待たせすぎですよ、先生 (p.134 恵那刹那)
あとがき
期待度が高過ぎたが故に、少し否定的な意見が多くなってしまったものの、作家と編集者の苦悩が随所に見られつつ、ユーモアたっぷりで、各キャラが主人公たらんと奮闘する姿は面白かったです。
最後の伊月のスピーチですが、"変わることは、進むこと"という心境に達したことが大きかったのではないかと感じました。