心和のラノベ感想

1ヶ月15冊読了目標!

わたしはあなたの涙になりたい 感想

わたしはあなたの涙になりたい


今回は、わたしはあなたの涙になりたいです。

第16回小学館ライトノベル大賞の大賞受賞作。ラノベっぽくないイラストも相俟って、これから良い話が始まる感が凄い。twitter等でも評価は高そうだったので楽しみにしてました。

が、個人的には微妙でした…。僕が感動系そんなに刺さらない派の人間であることを差し引いても、ちょっと上っ面というか薄かったというか。

話としては、特段これといった才能もない少年と、ピアノの天才少女が中心で、つかず離れずのまま時が過ぎて、立派なピアニストになりかけた少女を塩化病が襲うというもの。失って空いた穴の大きさを知る、という感じ。

あらすじ

三枝八雲が小学3年生の頃、母が塩化病に罹る。八雲は、ふとピアノの音に引かれて出会った少女、五十嵐揺月と仲良くなる。勝ち気な揺月は学校で虐めに遭い、家庭でも母のスパルタなレッスンに苦しんでいるようであった。

中学、高校と時は流れる中、八雲はただ呆然と過ごす一方で、揺月はイタリアに留学する。友人の勧めで小説を書き始めた八雲だったが、中々梲が上がらない。そんな折に、揺月から誘いがかかる。久々に会った揺月は美人になっており、ピアノの演奏技術も格段に上昇していた。しかし、演奏の途中で指が崩折れ、直に塩化病と診断されてしまう__。

感想

どんな話なんだろう?と全くの予備知識なしで読み始めた今作、全然塩化病が出てこないな…と思い始めて、案の定ヒロインが悲劇のヒロインとなるパターンでした。というか、八雲母を塩化病で退場させる意味ってあったんですかね…。僕の半分は影で塩だ、みたいな文章は好きでしたけど。

それからは、徐々に不自由になっていく揺月を支えながら、亡くなった後に八雲は抜け殻になってしまい、それでも揺月の残したビデオレターを見て再起を果たし、小説を書き上げるという展開。なので、テンプレ感は否めないかなと。

文章表現なんかは結構独特で、綺麗な世界観にマッチしていたのと、甲子園の高校名だったり、東日本大震災なんかは、現実のものを採用していて、そこは虚構としては珍しいのかなと思ったり。基本的に、揺月と八雲を中心に描かれるんですが、ギャグみたいな展開が一切なかったのも珍しいかなぁ。

義手とか、物語化とか、風評被害とかその辺りにはメッセージ性が強く現れていたように感じました。でも、後半で物語化が使い方によっては肯定されるという見方もあったので、タイトルの意味も含めて良かったです。

途中で、親に嫌気が差した揺月が八雲に逃避行を誘うシーン、あれで八雲が待ち合わせ場所に行ってたらどうなってたんだろうなーというのは気になりますね。夢で良いから、その世界線の2人の行く末を見て、八雲にどう影響を与えるかみたいな展開も見たかったかも。基本的に、主人公の八雲がキャラとして弱い気もします。流されてるだけというか。

あとちょっと残念だったのが、揺月の両親の扱いですかね。一流になれなかった母が娘にピアノで暴力を振るうとか、父はそれを止めることは出来ず娘に罪滅ぼしの為かお金を渡していたという家庭だった訳ですが、どこかしらに若かりし頃の2人のほほえまーエピソードか、あるいは裏では揺月を大切にしているエピソードなんかが入ると救済されるのになと。なんか輪郭が暈けているというか。ちゃんと看病してるだけ親やってるんだけど、遅いんだよなー。

揺月の死語2年の間どうやって八雲は生き存えたのでしょうか…?

今回のbest words

……もしもいるとしたら、揺月以外の誰かじゃないよ (p.66 三枝八雲)

↑両想いなのがエモい。後半の接吻のシーンで敬語になる所も良かったですね!

あとがき

塩化病の存在理由って、塩になった揺月を食べてタイトル回収する為だけだよな…、うーん。似たような他作品と比べて、突き抜けた何かがあった訳ではないのでアレなのかなぁと思いました。四月は君の嘘とかの方が良き。

事故に遭って義足になりつつも甲子園でHRを打ち、八雲に小説家を勧めた良き親友の清水くんや、小説家の仕事の為に離婚した八雲の父の話とかには触れなかったけど、そこは是非読んでみて下さいということで。