今回は、忘却探偵シリーズ6巻です。
今日子さんの講演会とか厄介へのインタビューはさておき、ある意味探偵らしい身辺調査の話でした。それでいてトリッキー。厄病神というのは本当に存在するか否か…。
あらすじ
今日子さんの講演会は、有る事無い事織り交ぜながら盛況の内に質問コーナーに移り変わる。最後の質問で、黒髪の女性は似たような男性を好きになり失敗するという話題を持ち出す。
隠館厄介は言わずもがな冤罪体質である。そんな厄介に冤罪についての取材の話が舞い込む。そのインタビュアーとして現れた囲井都市子は、先日の黒髪の女性であった。取材の後、囲井さんはこう告げる。
「隠館さんには現在、お付き合いしている女性はいらっしゃいますか?」
感想
厄介に対しての今日子さんが、変質者扱いバージョンと大好きバージョンの両極端が見られて面白かったです。サブヒロインの登場で今日子さんが本気を出した…(違う)。
今回の話は、これまで好きになった異性が全て破滅していると曰う囲井さんが、厄介にプロポーズを掛け、今日子さんに依頼をして囲井さんのその言わば厄病神としての遍歴を探って貰うという感じでした。
まー、確かに厄介に降りかかる災難とそれを潜り抜けて来た経歴は、相手を破滅に追い込む囲井さんにとっては安心材料と言えるかも知れない。それにしても、最速なプロポーズ過ぎでしたが。
囲井さんの男性遍歴について、まず幼稚園の近所のお兄ちゃんが事故の後に転校、小学校の頃のお相手は飛び降り自殺。それからも、サッカー部の人が怪我を負ったり、大学中退だとか、退職だとか、会社が潰れたとか。2度あることはどころではない。
という訳で、今日子さんを頼った厄介でしたが、女性の身辺調査を女性である今日子さんにした事で、厄介は変質者扱いという汚名が。娘の送り迎えを気にするフリで自己防衛してる今日子さんが笑えます。
調査結果としては、破滅してない事が判明。塞翁が馬に近いのか、囲井さんの語った過去の出来事の後には普通の生活をしているのがほとんどだったと。というか、これを4時間で調べ上げた今日子さんの情報網には脱帽ですね…。手法は不明だが。
ただ、囲井さんの思い込みだったで終わる事もなく、今度は今日子さんが厄介への変質者扱いをリセットした上で論理を再構築。些細な点から、失恋が本質である事を突き止める。2人目の自殺は、いじめられっ子を助けた囲井少女がその子から告白を受けて断った事で、自殺の理由となったのでは、と。
そこまで考えると、その他の5例は彼女の被害妄想というか破壊願望というか、そんなやけっぱちみたいな物があったと。つまり、破滅しそうな人に敢えて近づく事で自分を厄病神に仕立てた。自分が間接的に自殺させてしまった子の話を厄病神のエピソードの1つとして紛れ込ませた。上書きして上塗りする為に。木を隠すなら森の中とは正にぴったり。
そういや、親切さんちゃんと今日子さんのボディーガードやってるっぽい。今回の厄介にとっては救世主でした。うーん、しかし囲井さんは本当に厄介を好んでいたのではという気もしましたが、今日子さん一筋かな?
今回のbest words
なんでしたら、今日子と呼び捨てにしていただいても構いませんよ? (p.202 掟上今日子)
あとがき
自分が昔から気に掛けていた人が大成したよりも、失敗するパターンの方が絶対数は多い。でも、アニメ化した原作の事を考えると、ちゃんと昔から応援してる人ってのも存在するんだよなーって話を思い出す。
筆者あとがきは、昔の思い出は美化されたり大袈裟になったりすることについて。あの時あんなに面白く感じたのに、読み返したり見返したりするとそうでなかったり…。