今回は、忘却探偵シリーズ15巻です。
『冤罪王』隠館厄介が探偵を呼ぶ所から始まる短編4本でした。言葉遊びも全開で、網羅推理で寄り道しながらも、最後に辿り着く意外な真相は、やはり見ていて面白かったです。
歯を全部抜く死体損壊のインパクトの強さたるや笑。
感想
ベビーシッターとして働き出した厄介が、誘拐の冤罪を掛けられる話。
珍しく?不眠症で現れた今日子さんは、忘却のアイデンティティの喪失で、1週間前の依頼人の厄介からしか探偵の依頼を受けられないとは、まさかの展開であり、今日子さんにとっては渡りに船の事件といった所か。
にしても、1週間冤罪にならないだけでも運が良いという厄介は流石の体質である。ある意味、今日子さんへのエンタメ提供者とも言える(本人はギリ嬉しくないだろうけど)。
依頼人の、頼瀬川三、エイ江さんという名前も面白いですが、誘拐された子供は渡河ちゃん。手のかからない赤子。
寝ている渡河ちゃんと目を合わせると起きて泣いてしまう為、厄介は後ろを向いたまま子守りをしていたらしく。目の前で誘拐されたのに気付かないなんてある?というのが肝でした(厄介からして見れば、目の後ろで、みたいな文章が気持ち良い)。
この事件の真相は、狂言誘拐でありまぁ想像の範疇ではありましたが、ハンカチ落としを持ち出しながら、実は最初からベビーベッドには渡河ちゃんがいなかったというもので、両親にとっては最も安全な欺きだったんだなと。神隠しならぬ親隠し。
この事件で1番分からないのは犯人の動機であって、両親共にバリバリのビジネスマンであり、賠償金とかではなく、金持ちだからこそ人を雇いたくないとか、子育てを人に任せたくない証明という奇天烈なものだった模様。回りくどいな…。
こぼれ話のマイクロプラスチックの海洋放出の冤罪って、どんな疑われ方だったんですかね…笑。
〜掟上今日子の親知らず〜
厄介が歯が全部抜かれた死体の犯人と疑われる話。
これは確かに、抜かれてから殺されるより、まだ殺されてから抜かれるの方が痛く無さそう…。というか、歯を抜くって出来るもんなのか、やった事がないから全く想像つかない。
目的については、文中で2人が議論している通り、金歯だったから盗みのため?とか、コレクション説とか、歯に何か仕込んでいるスパイ説とか、その辺りが頭に浮かびますね。
真相は、被害者の抵抗を受け腕を噛まれた犯人による、証拠隠滅っぽい。歯型という名の犯人の足跡か(何か変な表現)。
親知らずのせいで、いつもの決め台詞に"いてて"が混ざってしまう今日子さん可愛い。
〜掟上今日子の船酔い〜
厄介が探査船内で起きた人死の冤罪を掛けられる話。
ヘリコプターで颯爽と駆けつけた今日子さんでしたが、チャーター料金も厄介持ち?お財布事情厳しすぎというか、働けど赤字な気がする笑。
コルクスクリューが凶器となり船員の1人が密室で死んだという事件、これは大時化の揺れでの事故って解釈で良いのかな。低確率でも起こり得るといった事例。
そういや大逆転裁判でも、船の揺れがトリックになる話があったような。
もう一つ沈没船の中での密室事件があって、こっちは沈没が確定した状態での自殺とされてました。溺死よりも楽な死に方で…。
金塊に目が眩むのはいつも通り現金な今日子さんである。
〜掟上今日子の猫アレルギー〜
キャットドアの付いた一軒家で、元警官の不審死の冤罪を受ける厄介の話。被害者は、厄介が別事件で冤罪を掛けられた相手でもあり。
キャットドアがいきなり扉に付いてたら、流石に被害者が不審がるでしょ、と思いきや、これが設置されたのは死後の事?偽装工作か。
猫を使役して、死に至らしめたなんて暴論も出つつ(猫に寝込みを襲わせる)、真相は猫素材の寝巻きを猫アレルギーの被害者に仕込ませた、ということらしい。必殺の衣服で、厄介に濡れ衣を着せた、か。犯人は身近な人?
この真相に辿り着く鍵が、風が吹けば桶屋が儲かるの、三味線を猫の皮で作るから来ているのも面白かったです。好奇心が猫をも殺す事件、なのかなぁ。
アレルギーは本当に人それぞれで症状や強弱が違くて、花粉症じゃない人からすれば、花粉症の辛さは共有出来ない…。あと、医者の不養生の患者版はただの不養生とはその通り。
四足歩行で現場を歩き回る今日子さん、可愛い。
今回のbest words
無実と無罪は違うなんて言いますが、僕の場合は一緒です。潔白です。なんなら清廉潔白です。当時の新聞では、僕はセイレーンと渾名されました (p.154 厄介)
あとがき
たまーに、バラバラにされた〜とか、猫派みたいな会話とかで、厄介と今日子さんは、阿良々木と羽川の関連性がありそう?みたいな匂わせがあるような。
筆者あとがきは人生100年時代についてでしたが、自分の寿命が最初から宣告されてたら、今よりもっと必死に生きるのかも。
3密が懐かしく感じる!