貧乏家族の長男はやがて『魔王』に成り上がる 感想 ★★★

2026.2

今回は、貧乏家族の長男はやがて『魔王』に成り上がるです。

成り上がりという言葉は、抑圧された環境下から無双していくイメージでしたが、貧しい状況の打破という意味でも使えるみたいですね。

ファンタジー設定にしては、現代日本が舞台でキャラクターも日本名なのが珍しい気もしました。ダンジョンというジャンルの中でも細分化はされていて、本作は王道系に当たると思いますが、真っ向からダンまちに刃向かうのは無謀だな…と感じました。

あらすじ

ダンジョンが人々に解放されてから、20年。日本においても、出自や学歴に関係なく実力で金を稼ぐ手段として、冒険者という職業は脚光を浴びていた。

一色樹は両親を亡くし、6人家族の長男である。中学卒業と共に家族を養う為に冒険者を志望した。報酬の分割を嫌ってソロでダンジョンに挑む樹だったが、著しい成長スピードで毎度無事に帰還してくるのだった。

感想

読み易さはあったものの、面白さは感じませんでした。

最近のダンジョンものでは配信と掛け合わせたりと変化球が出て来ている中で、本作はストレートにダンジョン探索して、冒険者としてお金稼ぎする話でした。

そうなると、ダンジョンものの巨頭、ダンまちとの差別化が問題になります。

ところが、ダンまちと比べた時に本作の強みが思い当たりませんでした。

寧ろ、駆け出し冒険者としての主人公の成長スピードが段違いに速いとか、受付嬢に過度に心配されるとか、内容としては模倣しているのではと感じました。

それでいてコメディ要素も薄いし、何の苦労もなく魔法の才能を開花して成り上がっていく姿を見せられても、感動しようがありません。

勿論、本作の主人公は両親を早くに亡くし6人兄弟を1人で養う重責を負う長男として憂き目に遭っているのですが、それはそれとして、何故魔法の才能に恵まれたのか、また困難や危機に直面して成長する場面がなければ、心を動かされません。

それから、ファンタジー設定において重要なのは、その世界観の説明です。

そういった状況整理がほとんどなされないまま、物語が始まってしまい読んでいて困惑しました。そして、会話や展開も横滑りしてる感があり、テンポに乗れませんでした。

例えば、冒険者の数はどれくらいの規模なのか、どこまでダンジョンの攻略が進んでいるのか、死霊王が以前に7回倒されてるらしいけど復活するのか、世界規模でダンジョンは繋がっているのか、別々になっているのかetc…。

説明不足感が凄いです。

世界観で物語の差別化が出来るのに、勿体無い。

一応、現代日本が舞台っぽいので、車とかファミレスとかは普通にあるっぽいですけど。

そういう点で、ダンジョンと普段の生活のギャップのシュールさはあったかもです。

因みに、タイトルにある『魔王』というのは良い意味で使われてるようですね。悪役として立ち塞がる訳ではなく、強い冒険者の異名としての。

1巻ではそこまで触れられてなかったのでタイトル負けしてるような。

それから、一色少年の強さとしては、魔法をコピーしたり、応用して自分で作り上げる力と思われます。

死霊王の強さが比較対象がなく分かりづらいですが、ベテランのスリーマンセル『マンスリー』から推薦される流れは悪意があるのかもとも思ったものの、普通に怨敵を倒してしまってました。死霊王さん特異個体なんですよね?

あと、今作のヒロインは妹の仁奈なのか、受付嬢の白石遥香さんなのか、意外と面倒見の良い姉御肌な霧島優子さんなのかも判然とせず。引越し手伝ってくれる優子さんマジ優子さん。

そういや、将来が嘱望されてた晴人さんが呪いによる背後13秒の死の鎌で死んだの報われ無さ過ぎる…笑。死ぬにしてももっとマシな死に方してくれ…トラウマなんてレベルじゃねーぞ

最後に葬火として登場したけど…。

今回のbest words

だって六百万ですよ、六百万。わかりますか?十円の駄菓子が六十万個買えます (p.317 樹)

あとがき

やっぱり信じられるのはポリエステルらしいボラ。

無双するならもっと圧倒的に無双して欲しいし、成り上がるならもっとどん底に追いやってから復帰して欲しい…。