今回は、忘却探偵シリーズ5巻です。
4つの死体の事件を繙く一応シリーズ初の短編集ということらしい。ということで、死体が4つ。このシリーズって、始めは古典部シリーズのように身近なミステリーを解決するパターンかと思っていましたが、しっかり殺人事件も取り扱いますよと。
相棒役はそれぞれ女性警部でした。
感想
〜掟上今日子のバラバラ死体〜
バラバラ殺人被害者は聖野帳。数々の悪事で恨まれている人も多い。しかし、死因は絞殺。その後で鋸で15分割。バラバラにするのは2時間ほど掛かる工程であり、何故犯人は現場に長く止まる選択をしたのか。そこまで深い怨恨だったのか。
容疑者が多くて、それぞれに2時間以上のアリバイはある。この事件の真相の意外さは面白かったです。というのも、犯人は15人全員だったから。
15人それぞれが、絞殺、1パーツ毎の切断を役割として受け持って数分刻みで持ち場を離れて犯行を行なったという。犯人は1人という常識を裏返す何とも逆転的な発想でした。これ罪も分散されるということはないんでしょうね。
今日子さんは、死体のあったバスタブに入ったり、切断面を体に描いたりといつも通り体当たりでした。
〜掟上今日子の飛び降り死体〜
西尾維新さんだから野球の話くるよなーと思ってて、ようやく登場。スタジアムのマウンドで、ベテラン投手がうつ伏せで亡くなっていたという事件。近くに高い建物等がない中での死因は転落死だという。
真相は、ランニングに来た選手が空いていたマンホールに転落死というもの。それを球団職員が哀れに思って、生前の言葉に準えてマウンドに運んだという。前の事件に続いて死体の工作パターン。これも良かれとは言え何らか罰がありそう。
今日子さんは、バックネットに身軽に登って転落して失神して記憶を失うという、アグレッシブさを見せてました笑。
地上で転落死が無理なら地下に落ちれば良いというのは面白いアイディアでしたが、結局死体を運んじゃってるから、うーん…。
〜掟上今日子の絞殺死体〜
92歳の老い先短い男性の絞殺事件。先が短いのなら殺す必要があったのかというのは確かにそうですね。早く相続金が必要だとか、自分の手で下さなければという殺意故か。
こんな風に、今日子さんが色んな可能性を挙げてくれるのは見ていても楽しいし、思考実験にもなって良いですね。
真相は、リクライニング機能付きのベッドによる自殺でした。途中でそうかなーと思ってました。病気がキツかったのかも知れないし、家族に迷惑を掛け続けるのが忍びなかったのかも知れないし、そこは本人のみが知る所。
最後、死から抗ったのがある意味救いなのかも。というのも、幸せな死が何かというテーマで、まだ生きたいと思いながら死ぬのが良いかもと思うから。周りを悲しませたくないというのもあるんだろうけど。
今日子さんは記憶のリセットによって、最新技術への情報がないのが難しい。ある意味新鮮な見方も出来るとは言えるけれども。
〜掟上今日子の水死体〜
公園の浅めの池で水死体が見つかった事件。死因は撲殺。容疑者は何故近くの公園に死体を遺棄したのか。今回は、犯人やトリックではなく遺棄した理由の調査。
真相は、犯人が犬を飼っていて死体に付いた毛を洗う為、池に死体を沈めたというもの。発見されにくくするのではなく、毛からDNA判定で自分の容疑を遠ざけるためだったと。
今日子さんは、そんなに綺麗でもない池に飛び込むというこれまた体当たりさを見せてました。あまり救いようの無い事件ではありました。
今回のbest words
あなた誰です?ここはどこです?……私、もしかして始球式に呼ばれたのでしょうか? (p.115 掟上今日子)
あとがき
定石から少し外すというのは面白いなーと思います。
筆者あとがきは、始めるより続けるのが難しいという話。その通りだけど、始めの一歩もまた大事ですかね。