心和のラノベ感想

1ヶ月15冊読了目標!

クビキリサイクル 青色サヴァンと戯言遣い 感想

クビキリサイクル 2008.4(ノベルスは2002.2)

 

今回は、戯言シリーズ1巻です。

第23回メフィスト賞受賞の西尾維新さんのデビュー作。大好きな物語シリーズと同著者である訳ですが、期待を裏切らない面白さで凄かったです。

今作は、天才と凡才の話?と読み始めでは思いましたが、基本は各方面の天才が多数登場して、主人公含め皆非凡なものを見せていく話でした。そして、中盤以降のミステリー要素も限定的な状況下でありながら、それを生かした二転三転する展開には感嘆しました。

あらすじ

赤神財団の令嬢、赤神イリアは家を勘当されて烏の濡れ羽島に島流しに遭った。そこで、イリアは沢山の天才を島に歓待しているという。ぼくは、今その地にいた。それは、技術師の天才として招聘された玖渚友の付き添いとしてだったが。

個性的な面々が集まる館で、天才画家の伊吹かなみさんが斬首された形で発見される。調査に乗り出すぼくと玖渚だったが、次なる斬首死体事件が起こってしまう。

感想

ストーリーも良ければ、文章も良く、知識に裏付けされた安定感と読んでいて勉強になる語彙や現象(心理学等)、個性的で名言も多いキャラクター設定とキャラクター間の会話、後日談含めて飽きさせない構成、全てが素晴らしかった。

550頁で読むのは時間がかかりましたが、こんなに面白いんだったら、講談社文庫の他作品はどうなってるの?って思っちゃいました。それと同時に、ラノベって何だったんだろう…と。一応、今作のキャラの口調とかはラノベ寄りな気はしましたが、あまりにも有象無象のラノベ作品とは隔絶していると言わざるを得ない。

一応それぞれのキャラについて触れておくと、主人公は凡人寄りに見せかけて事件を一応解決したりと、頭は良さそうな感じ。留学?とか後述の赤音さんのいた機関にも在籍歴があるらしい。ハッキング等機械類に精通した技術師の玖渚友の付き添いとして烏の濡れ羽島へ。

玖渚は、一人称僕様ちゃんで多少生活に難があったり、1人で階段の上下が出来ないといった病を持ちながらも、PC方面の天才。主人公に髪を結ばせたりと好意がありそうだが…という所。

あとは、未来視や過去視など超能力を持つ占い師の姫菜真姫、嗅覚や味覚が優れた料理人の左代野弥生、ER3という研究所の七愚人の1人で天才の中の天才である園山赤音、天才画家の伊吹かなみが招聘客たち。体の悪いかなみの付き添いの深夜さんは、主人公と似た者らしい。

姫菜さんは全てが見えていながらどう考えていたのかとか、主人公にとって敵っぽいと思いきや実は味方だったのかなーというミステリアスさがありました。弥生さんはこの中では常識人寄りかなぁ。赤音さんは、規格外の頭脳を持ってて凄かった!と言いたいですが、すり替わっていたのなら分からないと言うしか。かなみの知らないの?という圧のある会話も面白かったですが、あれが赤音さんだったのか…? 《何々みたい》が褒め言葉ではないというのはそうかも。

その他、三つ子のメイド、メイド長の班田玲、主人の赤神イリアの12人がメイン。イリアと玲がお巫山戯で入れ替わっていたのが、ミスリードの部分ですかね。でも、三つ子達が虚実織り交ぜて話すのがまた面白い所でもあり。

今作の事件は、あるお嬢様が絶海の孤島に、各方面の天才を集めた中で起きる連続首斬り殺人でした。首斬りと言うと、ミステリーにおいては死体すり替えが基本らしい。結果としては、それは今回でも正しく、さらには連続殺人でなかったのは驚きでした。

1つ目の事件は、かなみさんが首を切られた事件。地震で倒れたペンキの川で密室と思いきや、殺人後に撒かれたというのが真相。結局、かなみさんの首は見つかってないけれども、なりすました後で顔認証用とかに使うのだろうか…。

2つ目の事件は、1つ目の最有力容疑者として監禁していた赤音さんが斬首された事件。高い位置の小窓が1つと、後はスペアのないメイドの1人であるひかりさんの持つ鍵のみの密室。

3つ目は、全員にアリバイがある状況で、玖渚のPC機器が物理的に破壊された事件。第一の事件で写真などを撮っていてその証拠隠滅が理由とされる。この出来事で、第三者が島にいるのではとも思いつつ、メイド曰くそんな事はないという。後に、2つ目の事件で赤音さんが死んでないことが分かるので、赤音さんがこの犯人だと判明。

4つ目は未遂で、赤音さんが弥生さんを殺害しようとしたものとされる事件。ということで、これまでの事件は、赤音さんと深夜さんの共謀でしたという一旦の結論が出る。一度、埋めたかなみさんの遺体を掘り返したり、小窓への階段として屍を使うトリックは、正に背筋も凍るといったものでした…。でも、そういう予想外こそミステリーらしい。

そして、後日談。イリアさんの言っていた最強の請負人、哀川潤の登場。まさか女性だったとは(混物語で一度見た気はするけど…)。その破天荒さはさておき、事件の裏側を語る。そう言えば、かなみの描いた主人公の絵に何故か腕時計があった件が解決していないし、深夜さんの動機も分かってない!

というところで、今回事件の唯一の被害者はかなみだった訳だけど、実は屋敷に来た時点でかなみと赤音は入れ替わっていて、本当に死んだのは赤音の方であり、かなみは赤音の経歴を入手し、深夜と上手くやっていると。まぁ、全てを統合するとかなみさんのユーティリティーさがずば抜けすぎるって話でもあるけれど。

イリアが警察を呼ばないことや、検死官がいないからこそ成立するトリックではあるけれど、最後の最後まで見事なストーリーでした。

デジャヴの反対の言葉で、ジャメヴってのがあるの知らなかった。

今回のbest words

……、こういうことを語るのはあまり趣味じゃないが。世の中にはどうしてこれだけのカップルができるか、恋人同士が成立するか、その理由について思考したことはあるかね? (p.264 赤音)

あとがき

書きたい事が多くて感想書くのが大変でした…。でも、面白かった!だけで済ますのは忍びないので。戯言シリーズと言うだけあって、戯言というワードもよく出て来てました。

西尾維新さんと言えばミステリーという見方もありますが、正直なとこオールラウンダーで全て良いよね…笑。