心和のラノベ感想

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キドナプキディング 青色サヴァンと戯言遣いの娘 感想

キドナプキディング 2023.2

 

今回は、戯言シリーズ10巻です。

10何年振りかの新作という事でしたが、主人公はサブタイ通りで玖渚盾。続編というか新世代というか。タイトルについては、kidnap(誘拐)+kidding(冗談)ということで、哀川さんが盾を拉致する所から始まる物語なので秀逸ですね。戯言だけどの代わりに冗談だけどみたいな新たな使い方も。

あらすじ

玖渚盾は、澄百合学園に通う高校1年生である。そして、戯言遣いと死線の蒼の娘でもある。そんな盾は哀川潤に車で轢かれた挙句に、世界遺産・玖渚城へと連行される。哀川潤に盾の誘拐を依頼したのは、盾の祖父母である玖渚羸、絆だった。

ともあれ玖渚城。そこには、機関長の玖渚直と双子の姉妹、玖渚遠と玖渚近、メイドの千賀雪洞の姿もあった。玖渚羸が盾を呼んだのは、遠と近でも修理が利かない、その昔玖渚友が打ち上げた人象衛星の改修であった。母の言いつけで機械を触れない盾、そしてそんな時、玖渚近の首無し死体が発見される。

感想

紙の本には栞が100種類ほどランダムで入っているんですが、これには戯言遣い戯言シリーズとして、言ってしまえば格言が記載されています。この格言は本編でもいくつか盾の教訓として登場し、西尾維新さんらしい慣用句の重箱の隅をつつくような物になっていました。

戯言遣いらは本編に絡むことなく、娘の盾が主人公。最初は何の取り柄も無いようなキャラ造形でしたが、終盤には探偵役を買って出て、母の言いつけがそんな意味を持ってたのか!という構成でした。

うーん、ただ今回も面白味には欠けてたかなぁ…。キャラがあんまし立ってないし、殺人事件のトリックも動機も犯人像も弱かったです。キャラで言えばやはり歳を食っても哀川さんは哀川さんで、誘拐にせよターゲットを轢くのはめちゃくちゃだよ…。普通に血塗れだったみたいだし。盾ちゃんは勿論哀川さんの名前を捩ってる訳だけど。

今回の話は、まぁ大体粗筋通りだけれども、人の動きを具に観測できてしまうという、玖渚友の手慰みで作った衛星が問題でした。しかも、キャリアアップすると人の動きを制御するにも至るという。玖渚機関恐るべし。

そんな衛星の修理に白羽の矢が立ったのが、天才・玖渚友の子供である盾。なんだけれど、盾は母の言いつけで機械を触れず、これは能ある鷹ではなく本当に不可能なことで。なので、単に祖父母が盾の顔を見たかった訳でもなく、一家団欒でもなく道具として見てないのが悲しい所。絆さんに関しては全く喋らないし…。

道具といえば、玖渚遠、近姉妹に至っては、この事業の為に生み出されたクローンであり、デザイナーズベイビーらしい。高貴な直が妹に寄せて作ったのだからシスコン度が狂気ですね…。うにって言って天才振る遠ちゃんも悲しみが深い。

事件としては全裸で首斬りの近ちゃんが発見されるというものでしたが、戯言シリーズと言えば首斬りが原点ではあるものの、徐々にレベルが落ちてる気がする…。まぁ、畳1畳に乗せて移動させる為のダウンサイジングという発想は斬新でしたが。

で、犯人は誰も動機がないように思いましたが、千賀雪洞とのこと。こちらもクローンで、姉妹がいる遠と近への怨恨みたいな事らしいですが、うーん…。後日談でのどんでん返しも無かったし、これが真相で良いの…?って感じになりました。

そして、盾が機械を触るなと言われていたのは、盾が機械に触れると機械が暴走を起こすからなのでした。ある意味危険な能力…。これが周囲を狂わせる父と機械のスペシャリストだった母との間に出来た子である。

盾が衛星のリモコンに触れた途端に衛星は全て玖渚城周辺に落下、哀川さんによる脱出劇で無事というオチ。結局哀川さんがいてもいなくても世界遺産は壊滅するのね笑。

今回のbest words

他人を自覚的に意識的に踏み台にできる人間ってのは、なかなかどうして怖いものがあるよな (p.55 哀川潤)

→勿論クビキリサイクル冒頭文の引用である

あとがき

自動運転のパラドックスってどうなんでしょうねぇ。お天道様が見てる理論でいけば、ルールを遵守して横断歩道が無法地帯になるってことも無いんでしょうが、少なくとも歩行者の規制は必要かもですね。

盾のベビーシッターだったのって多分崩子ちゃんだな。

今回は結局、盾が親戚に親友が出来る話でした。玖渚焉さんは気になる。