今回は、チラムネ8巻です。
藤志高祭が迫る中で、七瀬悠月が本気を出しましたという回なのですが、まさか480ページあって本番に差し掛からないとは誰も予想していなかったでしょう笑。いくら祭そのものより当日までの準備がいっちゃん楽しいと言ったって。
そんな訳で、8-9巻は上下巻構成となっているみたいです。まぁ、悠月が停滞を打ち破ったように見えて、多少朔を覆う膜を突っついたくらいで、朔もまた変革の兆しがあるのかな?くらいでしたけど…。
あらすじ
紅葉の望みを聞いてある種の絶望、自分の至らなさを恥じた悠月は、自分の中にある美学よりも女を出して朔と向き合う決意をする。
箍を外した悠月は東堂舞との1 on 1を制し、インハイ常連の強豪である金沢の朧高校での練習試合でも、他を寄せ付けない活躍でチームを勝利に導く。
相方に置いてけぼりにされた風に感じていた陽は、美咲先生の誘いで秋吉にて一杯付き合う事に。
感想
紅葉の煽りを1番真っ向から受けた悠月がリミッターを解除する話でした。
それは、バスケにおいても恋愛においても。
特にバスケでは、相方の陽を動揺させるに足る出来事となりましたが、美咲ちゃんもまた芦高顧問の冨永先生と似たような関係性だったようで、気障な男の一言での奮起を期待したい所です。
恋愛においては、前巻の紅葉が嘘だったかのように、紅葉の存在感が薄く感じるレベルで積極性を見せていました。
元々美人な悠月が、ボーイッシュで普段は纏めていた悠月が女を見せ始めたら、それは前に自分で言っていたように、さぞ蠱惑的に映った事でしょう。
今回はいつもより一歩踏み込んだアクションも見せていて、優空の代わりに朔の家に料理を作りに行き、そこから朔を組み敷き誘惑する場面もありました。
ちゅ、ちゃぷといった擬音による官能的なシーンが続きましたが、結局は朔の制止によって既成事実は作れず。
確かに、悠月は自分を見失いかけていて、半ば自暴自棄で身体を預けようとしている面もあり、朔が止めにかかる理由は理解出来ます。
しかし、あそこまで女を出してくれた悠月の気持ちに応えないのも、それはまた不誠実な気がしてしまいました。好きだと思っている内の1人にあそこまでされて、自制が効くというのもどうなのかなぁ。
もちろん作品的に、キラキラな青春群像劇だしラノベでもあるし、まだ心を決めかねている状態で、抜け駆けの済し崩し的に関係を持つのもまた不誠実というのも分かります。
ですが、悠月の決意を踏み躙るのであれば、もっと朔に傷付いて欲しかったというか、何か煮え切らない終わり方になってしまった気がしました。
ここまで来ると、ヤリチン糞野郎って何だったんだろうと思ってしまいます。慣れてるのかと思いきや、普通に初な感じだし、本来ならもっと早めの段階で止めるべきだったんだろうなと。
そんな辺りに、作為的なものを感じてしまったのが良くなかったと個人的には思いました。
それこそ、本気を出して届かなかった悠月の失望を、今の朔は本当に丸め込められるものだったのか、とか。
また、白雪姫の劇における暗雲姫の役どころに合わせて、悠月と鏡の描写がちょくちょく出てくるのですが、悠月が他人を模倣する意味があまり分かりませんでした。
一皮剥けた悠月はそのままでも魅力的であるのに、態々それも紅葉が見下した相手を真似たら本末転倒というか、寧ろ逆戻りしているのでは…と感じました。
七瀬悠月は何者かを演じていないと成立しない存在なのかも知れませんが…。
というか、七瀬悠月を演じている七瀬悠月だと朔を振り向かせられないから頑張ったのに、七瀬悠月を演じている七瀬悠月が好きと言う朔が鬼畜過ぎるよ…。
今回の出来事は、蔵センが朔に話したように、"みんなのヒーロー"から普通の"千歳朔"に変わる時が迫っているのを再認識する所でもありました。
八方美人だった朔が1人を選べるのか、語弊があるかもですがハーレムにどう決着を着けるのか、やはり難しい所ですねぇ…。
あと、あらすじでは触れてませんでしたが、劇に関しては、なずなが亜斗夢を指嗾したりしながら、取り纏めていて有能っぷりを発揮してました。
朔発案のクラスT→クラT→蔵Tのアイディアは中々面白いですよ?
しっかし、藤志高祭過密日程過ぎるだろ…。
今回のbest words
七瀬じゃもの足りないって思われたくないんだもん (p.360 悠月)
あとがき
1巻完結による満足感と、量が多すぎる事の忌避感の天秤は確かに悩みどころか。
全然関係ないけど、水篠くん影が薄くなり始めてません…? 動かし倦ねているような。