今回は、忘却探偵シリーズ4巻です。
章は細かく分かれていたものの、ストーリーは1つでした。遺言書が一応テーマ。そして、1巻以来の厄介くんでもありまして、少し嬉しい。確かに幸不幸のバランスは取れている…?!
表紙はセーラー服今日子さん。本編でもそのシーンあり。
あらすじ
古本屋『真相堂』での仕事の帰り道、隠館厄介は飛び降りて来た女子中学生・逆瀬坂雅歌の直撃を受ける。骨折で済んだ厄介であったが、自殺未遂の少女は飛び降りる前に遺書を残しており、それはとある漫画の引用句であった。
当の漫画家の阜本舜は、自身が少女の自殺を招いたとして廃業を考えていた。それを阻止する為、また奇妙な違和感を探る為、紺藤は今日子さんへ調査を依頼する。
感想
昨今の漫画やアニメが子供に与える影響(しばしば悪の方が強調される)に触れつつ、また極端に捻られた(捻くれた?)真相には驚き面白かったです。まぁ気持ちの良い晴れやかなラストとも言えないのですが。
始まりは、厄介の身に少女が落ちてくるという、化物語を彷彿とさせるものでしたが、勿論蟹の怪異に憑かれているということはなく、モロにダメージを受けて右手右足を骨折。これは不幸過ぎる。
遺言を遺してビルから飛び降りた少女の巻き添えを食った形で、寧ろニュースでは厄介の方が悪者扱いという、冤罪体質ここに極まれりですね。
ここで面白いのが、遺言の内容が阜本先生の漫画を準えたものだったこと。その漫画はある種自殺を讃えるような描写があると。それ故に、阜本先生は責任を感じて漫画家を辞めようとしているとのことで、紺藤さんから調査が入る流れ。
まぁ、ヤンキーの素質があるから不良漫画を好むのか、不良漫画がヤンキーを生み出すのかみたいな話もある訳ですが、漫画等の影響を否定は出来ないものの、コンプライアンスで固めてしまったら、良い影響までも潰してしまうとか面白さがなくなるとか、一概には言えないという結論にしかならないんですよねー。
さておき、今日子さんは例の如く阜本先生の漫画を履修してくるんですが、当の『チチェローネ』は人を自殺させる程面白くない!と本人を前に言っちゃうのは流石でした。逆に、阜本先生の新作は甚く評価していたし、本人も漫画が与える影響を大なり小なり感じた事で創作意欲が高まったようなので、これはこれで良かったなと思いました。
それでこの事件の真相ですが、自殺ではなく殺人でした。それも、飛び降りた遺言少女が犯人というもの。古本屋の店長を狙って飛び降りたのが、人違いで厄介だったという話。
雨の日を選んだのは、目当ての人物を傘で判断する為で、7階という微妙な高さのビルを選んだのは、古本屋がテナントで入っているから。なるほど、違和感というのにはちゃんと理由があるもんですね。
遺言少女については、人の邪推を特に嫌う性質があったらしい。家族や友人との不和が理由で自殺と思われたくないから遺言を準備し、殺意を隠す為に自殺を装った。趣味の読書も、ジャンルに偏りを持たせない為に敢えてバランス良く借りるなど。これは、思春期故のシャイさとも言えるけども極端ではある。
動機はこの際確かに蛇足かも知れないけれど、売った本から自分の好みを古本屋店主に悟られたからとのこと。突発的な殺意とは言え、子供の悪戯心で許される範疇からは逸脱していると言わざるを得ません。でも、読み終わって何かスッキリはしたかも笑。
今日子さんの内腿に書かれた文字を拭き取る絵面がセクシーである。
今回のbest words
元の服は、女子中学生に燃やされました。焼却炉で (p.152 掟上今日子)
あとがき
刊行ペースが早くてページ数も控えめなのは読み易くて良きです。
筆者あとがきは、もし明日地球が終わるとしたらどんなお店で食事をしたい?という問いについて。そもそもお店やってなくない?とかそんなにスパッと終わらないのでは?とか。