今回は、忘却探偵シリーズ2巻です。
表紙絵の通り額縁がテーマの2巻。語り部は親切(おやぎり)守という警備員に変わりましたが、もしかして毎巻変わるパターン?話自体は事件が2つでしたが、1冊として繋がっているという形式でした。
冒頭から語り部の一人語りで、西尾維新さんらしさがのっけから出ていて、ページ数が400頁弱と多少中弛み感もありましたが、面白かったです。挿絵が無いのにも慣れてきたような。
感想
〜鑑定する今日子さん〜
念願の警備会社に入社し、美術館の警備に当たっていた親切守が任を解かれるまでが書かれた話。その引き金となった人物は3人いるという。
まず1人目は今日子さん。毎日美術館を訪れては、1枚の絵を見て1h佇む事が続いていたのを親切が話し掛ける。白髪からお婆さんと勘違いしたのはご愛嬌。
絵を見て、2億円と鑑定した今日子さんだったが、とある日を境に200万円と曰うように。価値が100分の1と見定めた理由は後述の通り。
次に2人目は剝井陸という少年。1枚の絵を熱心に模写していてその腕前が凄い。美術館内で絵を描くのはグレーな所ですが…。剥井くんは、3人目の弟子。
最後に3人目は和久井和久という老人。名前の由比ヶ浜由衣感よ。この人物が、1枚の絵を前に激昂し杖で絵を破壊してしまい、責任を問われた親切が引責辞任となってしまうという理不尽さ。
解決編としては、和久井翁が有名な額縁匠であり、その絵の為に作成された額縁が取り替えられていた事を知って憤激したという。人をコーディネートする事で見栄え良くする事が出来るように、絵をより際立たせる額縁という存在も馬鹿にできないなぁと思う所でした。相性というのも厳然とあるんだなと。
〜推定する今日子さん〜
失業することとなった親切の元に、和久井翁から連絡が。それは、生涯最後の大仕事をするに当たって、アトリエの警備員として雇用するという内容で…という話。
和久井翁はアトリエ荘という名の高層マンションを保有しており、画家の卵を無償で住まわせるという太っ腹さがあり、剥井くんも在籍。警備の話を今日子さんに持ち帰って、再度アトリエを訪れると、ペインティングナイフで刺された和久井翁を発見するという流れ。
マルチタスクを実行する今日子さんの応急処置を始め、手際の良さは素晴らしかったです。すわ殺人事件かと思われましたが、後に一命を取り留めたので良かったです。
〜推薦する今日子さん〜
和久井翁殺害未遂事件の解決編。まぁ、はっきりとした登場人物が剥井くんだけだったのと、モザイクアートというのも想定内だったかなーと。
子供だと高層エレベーターのボタンが押せないとか、ナイフの刺さった位置とか階段の血痕の位置とか伏線とかはよくなされていたと思いますが。ニア・ダイイングメッセージを残さなかったのも、結果的にはシンプルに犯人を庇う為で良さそう。
漫画家の時もとうもろこしの軸の時もそうでしたが、割と今日子さんはローラー作戦をしがちだなーと思いますが、今回は変装した上で(髪に絵の具を塗りたくる)、30階分の店子をインターホンを押して調査してました。
今回の話も額縁とあとはパズルがヒントとなっていて、大量発注の額の素材はその名の通り大きな作品を作る為であり、画家の卵達には秘密で和久井翁が進行していたのが仇となった形で、まー少々評判悪めとは言え、本人はそんな悪い人ではなかったのではと外野的にはそう思いました。
剥井くんの動機は、そのプロジェクトに参加出来なかったことの腹いせのようなものということでしたが、剥井くんがモノクロしか描けなかったことが原因で、腕前云々ではなかった、つまり誤解が故に生んだ悲劇パターンだったようです。極端な話、芸術家は思い込みが激しい的な?
因みに、今日子さんが剥井くんをやんわり自首させた方法は、自ら階段に落ちて失神する事で記憶を無くすと見せ掛けるというものでした。そんな使い方がって感じですね。しかし、今日子さんはやはり演技も上手いということで。
自首した事や年齢も鑑みて罪には問われなかった剥井少年でしたが、今後大成するのは間違いなさそうですねー。そんな剥井くんに自身を描いてもらった今日子さんはラッキーだったのかも。そういや、クビキリサイクルでも絵のモデルになるシーンがあったけれども、あれは見れず仕舞いだったんだっけ?
ミロのヴィーナスは両腕がないから美しいとも言えるし、完成品も見れるなら見てみたいとも思う。
今回のbest words
額が変わったのは、額が変わったからです (p.114 掟上今日子)
あとがき
"才能ってのは、より高度な努力をすることができる、資格みたいなもん"とは確かにその通りかも知れません。
筆者あとがきは、これまた前に見たような気もしますが善悪の基準の話。環境で意図も簡単にひっくり返るから用心すべしと。