心和のラノベ感想

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掟上今日子の備忘録 感想

掟上今日子の備忘録 2014.10

 

今回は、忘却探偵シリーズ1巻です。

2015年にドラマ化もされたシリーズ。2024年現在で14冊刊行の、寝ると記憶がリセットされてしまう探偵・掟上今日子が1日で事件を解決するミステリー作品。今巻は、4つの事件が収録。

ラノベ感想の当ブログにおいて扱うのは微妙なラインですが、このブログはラノベを中心に感想を残すサイトという事で一つ。面白いかどうかが重要とした場合、ジャンル分けは却って不必要ですし。

ですが、いつもの西尾維新さん作品にしては言葉遊びが鳴りを潜めていたのも事実でした。随所にらしさも見られましたけどね。

感想

〜初めまして、今日子さん〜

冤罪を受けやすい体質の隠館厄介が、転々とする職場の内、更科研究所という3D技術の研究所の助手をしていた時に、笑井室長の大事なバックアップデータが入ったSDカードが亡くなったという事件に巻き込まれる話。今までも色んな探偵とコネがあったり、今日子さんとも接点があったようですが、厄介は今日子さんを呼ぶ。

無い物を証明する悪魔の証明の大変さは語るべくもないですが、今回は今日子さんのテクニックで解決。SDカードの在処を大袈裟に言い当てた振りをして、その目線がそちらに向かわなかった人が犯人という、ハッタリというか引っ掛けですね。

動機は余談というか蛇足ではあるものの、読者は知りたいもの。一応は、犯人の祖母の視力がある内に研究を進めたいのに、この研究所では時間がかかるとして外部に持ち出そうとしたとのこと。やはり動機があると人間味も増すなと。

SDカードから一旦データを削除して、その場では証拠とならないものの、後日データ復元をすれば完全犯罪というのは、日々進化するテクノロジー推理小説も追い付かないといけないという事で、大変だなと感じました。

あと、体に油性ペンでメモを残しておく今日子さんですが、睡眠薬で眠らされるというのは1話にして明白な弱点の露呈でした。

〜紹介します、今日子さん〜

100万円と1億円を交換しろという脅迫から始まるインパクト大な話。100倍の価値の差を覆す理由が何かを考えるのが面白い。個人的には、厄介と同じくレア紙幣なんじゃないかとの拙考に止まりましたが…。

初出の編集者の紺藤さんとは厄介は面識があって、この後も気の合う良い人として何度も登場。事件は、売れっ子漫画家(里井先生)の冷蔵庫から100万円が盗まれ、冒頭の脅迫があったものの、当人はそれを許諾しようとしているというもの。

結論としては、厄介の着眼点は本筋から外れていなくて、シリアルナンバーをあらゆるもののパスワードにしていたという話でした。ネタ帳とかも含めて。犯人は、部屋でそれを見て知っていたアシスタントというオチ。

不思議と里井先生の紺藤さんへの好意は感じ取れました。それと、漫画家も儲かるんだなぁ。ピンキリでしょうけど。

〜お暇ですか、今日子さん〜

ミステリー界の重鎮・須永昼兵衛の遊び心のある原稿探しゲームへの参加を紺藤さんから頼まれる話。今日子さんは当作家のファンということで、一も二もなく参加決定。私服。

4つのヒントから、ビデオテープにデータという形で原稿を発見。確かに、鉛筆で巻き取ってるのを見たことがあるような…。まぁ世代では無いのですが。

実は須永先生はこの宝探しの直前に亡くなって、それをファンである今日子さんに隠しながら行動していた厄介でしたが、その言動から今日子さんは気付いていたようで。洞察力もさながら気遣いまでしてくれたと。

にしても、この事件も後の事件の伏線的な意味合いがありますね。

〜失礼します、今日子さん〜

亡くなった須永先生の死因に不審な点があるとして、遺稿となってしまった作品も含めて調査する話。厄介がセキュリティ万全の置手紙法律事務所を訪れて、徹夜しながら須永作品全100冊を読んでいく。

徹夜と聞いて自分に照らし合わせてみると、精々1日が限度だなと思う。人生の三分の一が睡眠と言いますが、本当寝ないで過ごすのは難しい。ただ、今日子さんは寝ると忘却してしまうので、一気読みするしかないという。

そんな今日子さんが寝ないように観察するのが厄介の仕事となるのですが、これは役得ですね笑。勿論、自身もほぼ寝ないで付き添うこととなる訳ですが。今日子さんの頬を抓ったり、眠気故に言葉が荒くなる今日子さんを見ていると、西尾さんらしいなぁと感じました。後の介護の件も含めて。

須永作品のチェックリストは、色んな作品のオマージュだったりするんですかね。瞳悟空とかは当て字で面白い。しっかし、今日子さん速読で凄い。

〜さようなら、今日子さん〜

シャワーを浴びに行ったまま、厄介が気付いた時には寝てしまった今日子さん。全裸の今日子さんを介抱したばかりか、罪悪感と事件から手を引く為に今日子さんの全身の油性ペンを厄介は消しにかかる。ということで、前の章からの続き。

この章をして、あぁこの本面白かったなと思えました。後日談というか解決編でスッキリするような感じ。というか、このシーン絶対にドラマではカットだよな…笑。ガッキーの全裸姿をお茶の間に流させしめたとは思えない。

さておき結局、須永先生は自殺ではないのではというのが結論。例のチェックリストの中から、シリーズものを除外して1巻完結の物をピックアップした時に、それが全て2月刊行という共通項があったこと。ノンシリーズそれぞれに、昔自殺した近所の女の子が脇役として出続けていたという推理でした。

それで、遺稿となった作品にもその脇役が出ていてまだ死んでないことから、続きを書く意思があったのではと。何か世間的には気付かないけど、作者だけが分かるメッセージがあるというのは奥床しい。作者も人間だし、育った環境を作品に取り入れるのはよくある事だろうなとも思いました。

という訳で、須永作品を全て読む必要は無かったとは言え、時系列順に読むことには意味があったようです。

そして、今日子さんは厄介の介抱の途中で目が覚めてそれ以降は狸寝入りだった事が判明。まぁ、今日子さんが好きな厄介にとっては、信頼してもらえたのは良かったのではないでしょうか。意外と今日子さん男好き…?

今回のbest words

失礼……ですね。仮説は……ありまふにゃにゃ (p.249 掟上今日子)

あとがき

今日子さんを探偵に仕立て上げた人物とは。紺藤さんが海外で見た今日子さんの空似とは。次回も楽しみです。

筆者あとがきは、記憶の話。似たようなのは前も見たような気もしますが、記憶の取捨選択。前からこういう事を考えてたからこその忘却探偵という設定でもあるのか。記憶の消す消さないというのは、スマホの写真を見ている時に似ているかも。あれは全て記憶してくれていて便利なのですが。