今回は、忘却探偵シリーズ3巻です。
3本とも死者が出る話でした。アリバイトリック、密室、ダイイングメッセージというミステリーの有名所を抑えながら少しずらすといったテイスト。
3本それぞれ今日子さんの助手役は変わり、警部関連でした。これまでも今日子さんの魅惑さ妖艶さは滲み出ている所ですが、何かいよいよ魔性という感じでした。
感想
〜掟上今日子のアリバイ証言〜
鯨井という元スイマーの男が、アリバイ工作の為に目立った風貌の女性に声をかけるのだが、その女性が今日子さんだったという話。忘却探偵はアリバイの証人にはならない、というこの作品ならではの面白い展開。
最初は倒叙ミステリー風でありながら、終わってみれば捻っているというかそう落着するかーという感じ。というのも、鯨井が時限式トリックを仕掛けた訳ではなく、真相は被害者の宇奈木の自殺というオチだった為。鯨井は自殺幇助というか証拠隠滅的な立ち位置だったと。
ドライヤーのスパークで感電死なんかは推理小説では間々ある死因でしたが、実際起こる事なんですかねー。忘却探偵は記憶のリセットの為に入眠するという使い方もあるのか。しっかし、今日子さんの追求の鋭さも怖いものがありますね…。悪い事は出来ない。
今日子さんの水着姿がラノベの挿絵のように見られなかったのが悔やまれる。
〜掟上今日子の密室講義〜
アパレルショップ『ナースホルン』のフィッティングルームで撲殺体が発見されたという事件。カーテンで仕切れることもあって、これも一種の狭い密室殺人_。
この話の面白い所は、状況からして考えられる犯人像と実際の犯人が真逆になっていることかなーと思います。上手く出し抜いているというか。
ただまぁ、犯人が出ていく姿が防犯カメラに無いとなると、店側の人なのかなーという推理にはなる。犯人の行動としては、元々殺害していた死体を試着室に入れ、自身は被害者に変装して入店、試着室に入って着替えて、人が近くにいないのを計らって出て、後はずっと靴が置かれたままの試着室を発見して貰って終了。
人が近くにいないのを計らってというのが、スマホで防犯カメラの映像を確認しながらということで、犯人は店長という流れ。服が好きな今日子さんにとっては、店がなくなるのも死活問題だったみたいです笑。
〜掟上今日子の暗号表〜
人材派遣会社の社長が、悪どい方法を使う副社長を殺害。そのダイイングメッセージが金庫の番号ではないかと今日子さんを頼るという話。
案外ダイイングメッセージの信憑性って薄いんだなーというのは発見でした。犯人の推察には使えても決定的とまでは断定できないというか。ただ、この場合メッセージそのものが犯人を指し示す訳ではなく、メッセージが何かを知りたい人が犯人というのがミソで。
パイエムという言葉は初めて知りました。円周率の覚え方とかで、字節を区切った文章のことという認識で良いのかな。日本語だと多少厄介だから、確かに語呂で覚えた方が早い気もします。何なら円周率3で割り切ってしまっても良いというか。
今回のbest words
では、またいつか、どこかでお会いしたときは、一から口説いてくださいね (p.14 掟上今日子)
あとがき
今回は書き下ろしじゃないらしい。
筆者あとがきは、同じ話をする事について。これどっちも報われてない気がするけど…。