心和のラノベ感想

1ヶ月15冊読了目標!

わたしたちの田村くん 感想

わたしたちの田村くん 2005.6

 

今回は、わたしたちの田村くんです。

とらドラ!で有名な竹宮ゆゆこさんの電撃文庫デビュー作。2人の特徴的でギャップを持つヒロインと、兄は頭脳明晰で弟はスポーツ万能にも関わらず兄弟に挟まれて平凡な田村くんが織り成すラブコメディーであります。

これが本当に面白くて、古き良きラブコメ(古きと言ってしまって良いのか?)で、竹宮ゆゆこ節(パワーワード多数!)が随所に見られる作品でした。これぞラノベという緩くて軽快な文章だけれども、幼稚さを全く感じさせないただただ読み易くて面白い文章でありました。女性作家だからこその面白さもあるんだろうなー。

感想

〜うさぎホームシック〜

中学生最後の夏を前に、友人の高浦から彼女を作るべきという話を受けた田村雪貞が、電波少女、松澤小巻に恋する話でした。非モテって言葉、昔のラノベしか聞かないなぁ笑。

松澤のミステリアスさは、故郷の月に帰ると曰う所から伺える。そして、謎の学校のグラウンドでの早朝ランニング。それに、田村くんは体当たりで付き合っていくというのがまず面白いです。Oじゃなくて、θでショートカット!なんて表現も素晴らしい。

松澤は陸上部員らしく全然追いつけず。ボディ○レードで鍛える田村くんが微笑ましいけど、次にボディブ○ードって○の位置ずらす表記もベタながら好き。

毎日ランニングを共にする中で、徐々に会話が進化して成立していく過程も面白かった。そして、この電波系娘が実は事故で家族を亡くしていたという事実が明らかになっていく。

そして、松澤の言う月とは単なる妄想ではなく、途中からは比喩表現として使われ出す。地球と月のような心の距離のように。結局、身寄りのおばさんも亡くなり松澤は遠い親戚の元へ行く事になったものの、田村くんの気持ちが少なからず届いて、全くの別離ではなく遠距離恋愛的な関係となって終了。2人でする花火も良き。

渡したハンカチで鼻をかむヒロイン、好きです(創作の中なら)。

〜氷点下エクソダス

最初は大河っぽいなーと思ったけど、こちらのヒロインもギャップ持ち。いやでも、ツンデレってやっぱり良いなぁ。

雪貞の兄の直がバレンタインの夜中に家の前で、家庭教師の教え子の告白を断っていた所から始まり、その少女が腹いせに投げたチョコレートが田村くんの部屋の窓を割って顔面直撃という幕開け。

無事高校に合格した田村くんは、クラスの自己紹介でその野蛮少女、相馬に再会するという展開。美人な相馬は寄って集るクラスメイトを一閃、急に浮いた存在に。

それ以降、急に田村くんに対して、雑用の手伝いに立候補したり、朝の迎えや弁当を作ってきたり、チャリ2人乗りしたり(田村くん後ろ)、寄り道に誘ったりと甘い対応になっていく訳で、これがまた可愛い。

何より面白かったのが、国語科準備室のシーン。p.169の挿絵の手を壁に突いた田村くんの上に立つ相馬というのが、本当シュールでよくこんなの思いつくなと笑。そして黒ですよ(何がとは言わないが)。田村くんが自分の家に案内するシーンも良かった。

そんな中で、相馬は強がっていながら中学時代に不登校になった過去があることが判明していく。でもまぁ、自分の心の持ちようなんですよね、結局。それを田村くんが味方として分からせるといった展開でしたが、1人でいる相馬の元へ駆けつけるのは良き主人公だったなー。

にしても、遠距離恋愛って難しいよな…ってのっけから思ってしまいました笑。妄想で出てきてくれないと本当に。相馬のキス含めインパクトが強過ぎて松澤さん上塗りされるよ、これは。揺れますねー。

〜高浦さんちの家族計画〜

高浦が田村くんに恋の話を持ちかけるまでの前日譚。

高浦の家は医者家庭で裕福らしい。厨二病っぽい妹、伊欧がいるものの、伊欧の母が財産目当て的な感じでそういう環境だったのも悪影響だった、みたいな。

今回のbest words

……巨乳……スペース……サンプル画像…… (p.69 田村くん)

あとがき

この作品を読んで、ヒロインにはギャップが大事だなぁとか、緩くて軽快な文章力も必要不可欠だなぁとか色んな事を思いました。ひねくれてるってほどではないけど、陰キャ寄り目線のラブコメもまだまだ面白いなってのも感じました。

田中角栄の真似とか世代が違うのが逆に笑える。