今回は、二番目彼女8巻です。
最終巻に向けてこれまで広げた風呂敷を畳もうとする、言わば繋ぎの回ではありましたが、その複雑な状況をマンネリ感を出す事なく、読者の予想の上を行き、それでいて恒例のやり取りをきちんと入れつつ、各キャラクターの個性も出し切っていたのは、流石の手腕でした!
あらすじ
遠野に別れを告げた桐島は、東京の高校で教育実習生をしていた。そこには同じく教育実習で早坂さん、音楽の講師として橘さんが集う。さらに、男女間のいざこざが勃発する合唱部の副部長は橘さんの妹みゆきで…。
東京に来るに当たって桐島はワンルームを借りているが、そこには宮前の姿があった。宮前は桐島を京都に連れ戻すつもりで、部屋に転がり込んで、そのまま居着いてしまっているのだった。
感想
2が4になって、今回5になったのを再び2にする話でした。三正面作戦は結果的に上手くいった形でしたが、やはり残った橘さんと早坂さんのどちらに軍配が上がるか。もう二番目彼女的落とし所は無理そうですね…笑。
という事で今回は、桐島の教育実習の中でみゆきとどう折り合いを付けていくか、京都のメンバーと如何に友達という関係で固定させるかが描かれました。
まず以て、桐島がしっかり2人に絞り込んだ上で、他から向けられる好意を落ち着けるよう動いていたのが、大人になったと言えるでしょう笑。みゆきとのアレは、役に入り込んでいた為に詮方なかったという事にしておきます。
何で桐島が教職を目指してるかが以前に触れられていたか定かではないのですが、取り敢えず教育実習生として高校に勤務し始めた中で、早坂さんと橘さんがいるのがもう凄い。
さらに、合唱部で男子が女子に色目を使った事で仲違いが起きていた訳ですが、そこで当事者がみゆきだったという、まさかここで再登場するとは驚きでした。
が、よく考えると、みゆきをこのまま出さないまま終わらせるのも痼りが残るのも確かで、前に恋愛ゲームとかしてましたもんね…。
そのみゆきが、高校生と先生という禁断の関係性を迫ってくるキャラクターとして復活。ちゃっかり不道徳RPGで背徳先生のシチュエーションに、しかも恋愛ゲームの重ね掛けで、目隠し味覚選手権まで取り入れたのには笑いました。中島敦大先生()
エスカレートした所で、宮前に目撃されるまでがセット。女子高生に手を出す訳ないだろというフリをした上で、しっかりそこを踏み抜くのがこの作品のルーティンですね笑。
その宮前ですが、ちゃっかり桐島が実習中には擬似同居のような形で、新婚感を出してました。一々おそろいの物を集めて嬉しそうにしてる姿は可愛かったですし、逆に別れが確定となり、それらを捨てる際は読者としても心を痛めました…。
桐島は、東京に来たもののちょこちょこ京都に戻っては、ヤマメ荘周りの事情を何とかしようとしていたらしい。桐島が去った後はそこで集まる影は一つも無く、遠野に対しても何かアプローチを掛けても、すげなく返される始末。
しかし、ここが結構大事なポイントだと思いましたが、別れた男女は極力近付かず離れてしまった方がどちらにとっても良い事のように思えて、でもそれはそれで独善的で無責任なのでは?と。
ここで出てくるのが友達という概念で、それはもちろん、選ばれなかった遠野にしては許容しづらい関係性ではあります。
ですが、これまでの楽しかった日々は偽りではなく、一度縁を切ってしまったら、それっきり会う事はなくなってしまうかも知れない。
一方、許容して友人となったその先で、過去の日々を笑い合える未来もあるかも知れない。そんな可能性を例の種子島の約束が一役買ったのが、何か良かったです。
まぁ、これは遠野が優しかったからこそ、何とか許して貰った面も多分にありましたが、バレーの試合でふと観客に桐島を探してしまうのがまた切なかった…。
桐島が誠意を見せた(?)事で、福田くんが戻って来た場面も熱かったです。京都から逃げるという選択肢を取らなかったのは正解だったんだなぁ。
"恥ずかしいやつ"で済ませてしまって良いのかという気もしますが笑、根の方では関係を続けたい気持ちも燻っていたんでしょう。
あ、今回の早坂さんと橘さんは峠でカーレースしてましたよ。
今回のbest words
宮前が十年後、京都のみんなと種子島にいけるようにする。それが、エーリッヒだった俺が、最後にすることなんだ (p.122 桐島)
あとがき
触れなかったけれど、一応浜波は電話でのみ登場してました笑。次回、譲れない2人に対して、どうなってしまうのか、待ち侘びたいと思います。