心和のラノベ感想

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ブギーポップは呪われる 感想

ブギーポップは呪われる 2023.9

 

今回は、ブギーポップ24巻です。

4年経っての最新刊。副題が無くて面食らいましたが、独特の雰囲気や読み易さは変わらず。呪いがテーマで、また少し水乃星透子と末真和子の底知れなさが深まったという感じでした。キャラ毎の時系列の前後はありつつ、ストーリー展開はいつも通り。

あらすじ

県立深陽学園は呪われているという噂。水乃星透子の飛び降り自殺やその他行方不明者多数、小規模な暴力沙汰も日々起こる。

南野梨杏は、人の悪口をよく言う少女であった。梨杏は帰り道カーブミラーに描かれた赤い線によって、自殺寸前の所をブギーポップに助けられる。それ以降、梨杏にとって同じ道でブギーポップと会話するのが日常となる。

向居準一は昔助けられたものの霧間凪を嫌う。その一環として、向居は凪を学園で頻発する暴力沙汰の調査へと巻き込む。それは呪いによるものなのか。調査の途中、赤い線で操られた向居は凪を襲う。

生成亮は、〈クロース・トゥ・エッジ〉という人間が開き直る瞬間を見抜く能力で統和機構に所属し、校内では"お祓いさん"と自称している。そこへ、ナンバー3のギノルタ・エージ(鬼乗汰栄二)とカチューシャも参入してくる。

ギノルタは、統和機構の監査役にして〈ノー・ブルース〉で他人の情報の遮断、植え付けを行う事ができた。しかし、MPLSの〈シャドウプレイ〉臼杵未央によって傀儡と化す。

河上睦朗と木下哲也は腐れ縁である。哲也は百合原美奈子を、睦朗は臼杵未央に好意を寄せることになる。

感想

内容的には難しかったですが、呪いというテーマを掘り下げるのは面白いなーと思いました。呪いと言うと、他人への嫉妬だとか恨みだとかで陥れようとする、マイナスなイメージがあります。その人が気付かない内にかけるのが呪いだとも。

その一方で、呪いは責任転嫁の側面としても使えるという。例えば、世の中上手くいかないのは呪いのせいだと言ってしまう事もできるし、逆に期待すらも呪いとなり得る。言ってしまえば、呪いは万能なのである。

面白いのは、梨杏という悪口をよく言うキャラなのだが、実は根は良い人であるのではないかという部分で。悪口は、他人を悪く言う呪いのようなものでありながら、他人を心配して忠告する意味合いもあるのでは、とブギーポップは語る。悪口を言う事で危うい行動を抑制させると。

"のろい"と"まじない"というのは正反対の意味に思えるものの、漢字で書けばどちらも"呪い"となるのも実は表裏一体という表れなのでは。ま、この辺りは物語シリーズなでこスネイクとかでも触れられているテーマですね。

内容を簡潔に言ってしまえば、いつも通り周囲を危険に晒した臼杵ブギーポップが仕留めたという話なんだけれど、臼杵は中々の強敵だったと思います。人を操って従わせたり、赤い線を使って罠を仕掛けたり。

ナンバー3という事はカレイドスコープの下に位置するギノルタですら、臼杵の能力に呑まれる形でした。呪いが効かない凪でも時間稼ぎが精一杯という様子。ただ、水乃星透子はそんな臼杵ですら恐怖させる力を有していたらしい。この辺りの謎が明らかにならないと、ブギーポップシリーズは完結しないよねー笑。

そんで、その水乃星透子と対等と言っても良い存在が末真なんでしょう。今回ギノルタを狂わせる一員となったのも末真の言動でしたし。にしても、水乃星透子への記憶云々の件も呪いの一種なのかなー?

今回のbest words

君は、いつも他人の悪口を言っているだろう。あれは呪いを掛けているんだ。世界は悪いもので満ちている汚いものだと定義しようとする試みであり、同時に、自分はその汚濁とは切り離された、純粋な存在であろうとする呪いだ。〜 (p.45 ブギーポップ)

あとがき

人は何でも責任を擦りつけようとして、そして、物事に名前を付ける、定義付けをしたくなる生き物というのは何となく分かりますね。得てして呪いは人外のもののせいにされる。

人を呪わば穴二つとは言うものの、呪いは人間とは切っても切り離せないものなのでしょう。