心和のラノベ感想

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クリスタル・コミュニケーション あなたの神様はいますか 感想

クリスタル・コミュニケーション あなたの神様はいますか 2003.6

 

今回は、クリスタル・コミュニケーションです。

前々から気になっていた作品。250頁弱の1巻完結の為そもそもが読み易いんですが、読み始めて久々に物語にのめり込むというか、先が気になってスイスイ読めました。

安直に言うなれば、透明感のある物語。もし特殊能力があったら?とか、人間の裏表などについて考えさせられる作品でもありました。また、タイム・リープを読んだ時のような古きラノベの雰囲気を感じながらも楽しめました。

あらすじ

竜崎朝人は、大学の受験会場で前の席の少女と知り合いメアドを交換し、2人はそれぞれイニシャルからアルとケイと呼び合うことに。その後、受験に失敗したアルはケイに呼び出され、テレパシーで不正に合格したことを告げる。

一度別れたものの、もう一度会いたいと思うアルは思いがけなく図書館でケイに再会する。それをきっかけに、浪人生のアルは図書館でケイに勉強を教えて貰うのが日課となっていた。

感想

中々新しい作品を読み始める時に、抵抗無く読むことは難しい。それは、全く知らない人物が、どんな設定でどんな物語を紡いでいく話なのか理解するのに時間がかかるからである。

その点、この作品は見事にスルッと設定が頭に入り、すぐ引き込まれてしまった。文章力の高さもあるんだろうけど、展開や見せ方、伏線の張り方も上手かったのだろうと思う。"水晶色"という独特なワードセンスも物語全体に深みを与えている。

ある意味、本作はよくあるボーイミーツガールものであり、その彼女はテレパシーとサイコメトリー(物の残留思念が分かる)を持つ特殊な子だと分かり、すったもんだがある。全てを見通したような彼女に、主人公の愚直さが影響を与えるというのが1つの見所だと思う。

アルの友人である森田が、養子で自分の進みたい道と親の後を継いで欲しい気持ちのぶつかり合いで自殺を決意して、それをケイは知っていながらアルに伝えなかったシーンがありましたが、結局介入するしないではなくてその人次第だとケイは割り切っていて、ある種冷めた態度ではあるものの、気持ちは分かる。

一方のアルはやはり同じ立場に立って踠くものの、変えられないという事を知る。けれども、家出少年に積極的に介入していくようなアルの直情径行さは、ケイの意思に何かを残したんだろうなーと。

ケイが最後亡くなった後に、この手紙を読んでいる時には〜というベタな演出もありますが、そこはラノベっぽいですね。ケイは、他にも未来予知や千里眼の能力まで持っていたなんて。死が見えていながら、女の子を助ける道を選んだという。

能力制限とか遺伝とかそういった部分は分からないままでしたが、テレパシーというのは便利なようで、とてもノイジーなものでもあるらしい。確かに、淀みなく周囲から心の声が聞こえてくるというのは煩わしい。接触までするとその人の過去まで覗けるらしいですが、気を失う副作用あり。

加えて、人間の本音と建前という恐ろしい問題まで分かってしまう。これでは、人付き合いなんてやってらんない訳ですね。でも、アルは違ったと。まぁ、付き合ってプラトニックな関係でと言われると、厳しいですけどねー。

因みに、ケイさんこと矢野鏡子さん普通に頭良さそうだよなぁ。アイス食べたい。にしても、「サイコメトラーは、サイコメトリーと関係あるの?」って馬鹿っぽい質問やな。

今回のbest words

あなたが水晶色だから、私はあなたと時間を共有したいのです (p.20 ケイ)

あとがき

ちょっと評論調で感想を書いてみました。良い作品に出会って少し語りたくなったみたいです笑。

実は、アルの母親が今作のMVP説ある。