今回は、キノの旅2巻です。
口絵にも短編が載っているとは何と経済的…!
感想
〜狙撃兵の話〜
キノの師匠が狙撃兵を殺して欲しいという依頼と、殺さないで欲しいという依頼の板挟みに遭う話。見方によって天使にも悪魔にも正義にも悪人にもなるんだなーと。
何人かに1人撃つというのは折衷案になっているのかどうか…。
〜人を喰った話〜
雪の森で立ち往生する男3人を助ける話。キノが狩りで食料を与え続けたものの、実は奴隷商で危うく捕らわれかけた所を回避するという。弱肉強食であり、加えて善行が全て報われるとも限らないという教訓を得た感じ。
ナイフに銃の仕込みがあったとは御見逸れしやした。
〜過保護〜
息子に防弾チョッキを付けるか付けないかで揉める両親の話。僕は、戦争に行きたくないとそもそも論を言う子供が笑える。
こんな言い合いに巻き込まれるキノは本当にお疲れ様ですね…。7頁と短め。
〜魔法使いの国〜
銅像が邪魔で滑走路を確保できない女性が、揶揄されながらも飛行実験を成功させる話。成功したら一転、魔法使い扱いされるというのが、人の身勝手さを表しているというか。
まぁ何か錬金術師を見てる感じに近いのかな。
〜自由報道の国〜
色々な新聞の記事で事件が語られる話。これはシンプルに面白かったし、社会的な風刺も感じて良かったです。
モトラドを触ろうとした男に旅人が発砲して、それが正当防衛と認められて旅人はすぐ出国したという事件。旅人が一方的に悪いと語られる記事もあれば、しっかり事実関係を精査した上で、男は当時酩酊していて、度重なる注意も聞かず歯向かって来ようとしていたから、旅人は悪くないという記事も。
まぁどれが本当かは分からないんですが、そもそもこれってキノ達の話じゃないの?笑 普通にキノって他の話で発砲してるから…。
〜絵の話〜
戦車が好きで書いていた少年の絵が誇張されて高値で取引される話。人が勝手に思い込んで価値を創造してしまう典型例というか。絵を誇りに思う人々と絵描きのギャップが面白い。
後で、続・絵の話で価値が暴落したばかりか絵描きが非難されるという顛末を迎えていましたが、絵描きは何も悪くないし、これは確かに自業自得でしかないな…。
〜帰郷〜
国の生活を見捨てて、外に出たものの希望を見つけられずに帰郷した少年の話。ここでもキノがすぐ発砲してるんですが、それにしてもこの少年報われなさ過ぎる。
〜本の国〜
大量に本があるものの読むだけで、自分で本を書くために出国を目指す男の話。これは、本を実際に書いている作者だからこそ書ける話だなーと思いました。何となく読んで批評だけする人を貶むようなものを感じましたが、少し深読みし過ぎですかね。
ただ、あらゆる本を持ち出しながら会話するのも楽しそうだなぁ。
〜優しい国〜
前評判が最悪な国に行ったら、寧ろ懇切丁寧に歓待されたという話。火砕流で国が無くなることを知っていた住民たちが、悪い記憶を残すのはいけないという思いで、最後の旅人のキノにだけ厚く遇したという事情でした。キノが3日を越えて滞在したいと思ったのはここが初かも?でも滞在してたら巻き込まれていた訳ですが。
国と共に滅亡しようとする人々も凄いのと、狼少年みたいな話だなーと。
「森の人」はここで初めて入手したんかな?とすると時系列は前の方になるのかな。
今回のbest words
旅人に一番必要なのは、最後まであがいた後に自分を助けてくれるもの——。運さ (p.225 キノ)
あとがき
国に入ったり道中だったりの話もありますが、短編形式は読み易いなぁ。
そして、時雨沢さんのあとがきが面白くなってきた!笑