今回は、少女は書架の海で眠るです。
マグダラで眠れのスピンオフ的なストーリー。アブレアという例の異端審問官が生きている時の話でもあるんですが、それはある意味変人的な立ち位置で出てきているだけで、主眼は書籍商を目指す少年フィルとその友人のジャドが、クレアという訳アリ美少女に出会う話でした。
あらすじ
書籍商を目指す少年フィルは、友人のジャドが向かう修道院への納品に同行する。出迎えたフードを被った小僧はお金を必要としているようで、蔵書の閲覧を頼むものの門前払いされてしまう。
後日改めて、異端審問官のアブレアを連れて修道院へと赴いたところ、ひょんなことからその小僧は貴族の少女であり、修道院内に全く大人の姿がない事が判明していく。
感想
面白いは面白いんですが、もう一つ足りないかなぁという感じでした。1冊で纏めるにも少し中途半端というか。アブレアの過去話というには弱いし、ラブコメとしても弱い。ただ、本が残っていくことの大変さやありがたみは読んでいて伝わりました。
書籍商という職業については、高価なばかりか戦の真っ只中だとあまり必要とされず、フィルも最終的には望みは繋がった?とは言え、諦める形で、本文中でも本が役に立たないシーンも描写されていました。世知辛いんですが、アブレアが残そうとしている天使?の話はマグダラの方で回収されるかどうか。
ジャドというキャラは、さっぱりしていて男らしくて憧れるなーと思いました。友情も女の子の扱い方も上手いですよね。その一方で、本ばかり読んで仕事に全然生かせない穀潰しが主人公なんですが、最後は物知りが生きた形か。
話としては、身寄りのいなくなった貴族の娘クレアと出会って、修道院にいた大人が皆疫病で亡くなっていた事を知ると。残ったのは父が寄付した2000冊の本で、クレアは父から何も手紙を貰っていない事に気落ちしていたものの、フィルはクレアの父が集めていた本の傾向から、クレアの為を思っての本たちである事を突き止める。で、最後は押収されそうになった本を異端審問官のアブレアの焚書という切り札を使って回収したという感じ。
そして、クレアからの頬へのキスを頂戴してめでたしめでたし。恋の行方はどうなるか分からないですが、ジャドは介入してきそうにないので、フィルとクレアは商会で今後働いていって結ばれるのかなぁ。
にしても、物知りで何でも出来そうな感のあったクレアが、中盤ポンコツになりかけてたのは面白かったです。井の中の蛙だからしょうがない部分もありますが。
今回のbest words
おほう (p.331 ボッチョ親方)
あとがき
世の中には人の一生では読みきれない量の本が汪溢しているので、一期一会だなぁと改めて思いました。
挿絵が少女漫画っぽくて良きでした。