心和のラノベ感想

1ヶ月15冊読了目標!

春夏秋冬代行者 春の舞上 感想

春夏秋冬代行者 春の舞上


今回は、春夏秋冬代行者 春の舞上です。

ヴァイオレット・エヴァーガーデンの作者である暁佳奈さんが電撃文庫デビューという今作。

上下巻で、約400ページずつというボリューム感で少し躊躇していましたが、来月に続刊が出るとの事で読み始めました。

大正時代とかそういう話かと思っていましたが、時代設定はほぼ現代だと思います。代行者と護衛官の悲しくも心温まる優しい物語に徐々に引き込まれました!

あらすじ

はじめに、冬があった。それから、春が創られて、夏と秋が後に加わった。そして、四季の代行者は生まれ、一部の人間に現人神として力が宿った。

春の代行者、花葉雛菊とその護衛官、姫鷹さくらは、10年ぶりに春を齎す儀式の為、竜宮の地へと足を運んでいた。

冬の代行者、寒椿狼星とその護衛官、寒月凍蝶は、道中交通事故に伴う渋滞に巻き込まれていた。狼星は、能力を使用し事故車の救出に尽力する。10年前の出来事に心に疼痛を抱えながら…。

夏の代行者、葉桜瑠璃とその護衛官、葉桜あやめは双子の姉妹であり、月と太陽のような対照的な感性の持ち主だった。瑠璃は、あやめが婚約し自分の元から離れる事を嫌がり、ストライキ中のようで…。

秋の代行者、祝月撫子とその護衛官、阿佐美竜胆は年齢が離れているものの、姫と騎士のような関係。しかし、『賊』によって撫子が誘拐されてしまう。

感想

始めの方は、何が起きてるのか、どういう話なのかを探るのに少し苦労しました。しかし、第2章に入った辺りから、段々と春夏秋冬の代行者の役割と柵、季節間の関係が明らかになってきて、スルスルと読んでいけました。

冬と春の関係性が土台としてある中で、代行者としての冬と春も物語の根幹となっている。そもそもの始まりが、冬の代行者、狼星を狙ったテロの結果、雛菊が人質となったことでした。

それから10年の時を経て(実際にはそれより前に戻ってきていた)、雛菊が帰還した所から物語が始まる。この、図ったように100ページで序章を纏めてくるのが凄いですよね。

そして、ページを追うごとに、テロの際に起きたことや、物語の設定が明らかになっていく。

帰ってきた雛菊は、吃音となり、中身も別の幼子に入れ替わったかのようになってしまうものの、再会したさくらと徐々に、お互いを信頼しあっていく。これは、ただの百合とも違って、神聖な感じがあります。

それから、この10年の間は、テロの際に一緒にいたものの雛菊を守れなかったさくらや狼星、凍蝶の心の澱となっていた訳で。最後に、狼星と雛菊の出会いと恋心を抱くまでのエピソードを持ってくるのもいじらしいところでした。

全体としては、いい意味でラノベらしくないとも思いました。挿絵や演出にも拘りが多々見られて、見開きの絵があったり、ページ下半分の挿絵があったり、暗転したページがあったり、同じ単語を繰り返したりと視覚的にも楽しめました。

それから、文章も洗練されていて、女性が書かれた文章なんだなと随所に感じます。また、普段のラノベにあまり出てこないような難解な熟語も頻出します。

章の順番もまた作為的なものが感じられた良いですね。春→冬→夏→秋とそれぞれ2人ずつのストーリーが展開される。

また、表紙は雛菊と狼星なんですが、読む前はよく分からない訳で、読み終えた後に愛着が湧いてくるこの感じがまた堪らないです。

あとがき

広大な世界観をここまで昇華する技術は流石だなと感じました。これからの展開も全く読めないです。

まぁ、喫緊の話では、春夏冬の代行者の協力で撫子の奪還と四季会議辺りでしょうか。それから、『改革派』と『根絶派』といった敵の話も出てくるのかな。

にしても、作者のあとがきが尊い

2022.6.26