レイの世界 ―Re:I― 1 Another World Tour 感想 ★★★★

2025.11

今回は、レイの世界1巻です。

キノの旅の世界観を骨子として、主人公を歌&演技が得意で明るく天真爛漫な女子高生とする事で、また新たな面白さを醸し出してました。予備知識なくても読めるのも良い。

3巻までの刊行が決まっている本作ですが、時雨沢さんの安定感は流石だなぁ。因みに、1番好きな話はとうもろこし星人かな笑。

感想

〜初仕事の思い出〜

隕石が落ちる予測によって地球滅亡が決まった並行世界で、レイが小さな村の音楽イベントに参加する話。

1話なので簡単に本書の仕組みに触れておくと、女社長が切り盛りする有栖川芸能事務所に所属するユキノ・レイが、白髪155cmの男の子?因幡さんの取ってきた仕事を遂行するというものでした。

その因幡さんが取ってくる仕事というのが、並行世界か異世界のものであり、事務所のエレベーターを降りて、地下駐車場を出ると、そこはもう世界が切り替わっているらしい。

何故そんな事が出来るかと言うと、ただ出来るから、だそう。

そんな訳で、色々な現実とは違った分岐を辿った世界を、ある意味で歴訪するという作風となっていて、その点でキノの旅に通じるものを感じました。

話を戻しまして、何も知らずに訪れたレイは目一杯歌を披露しますが、それが終わると同時に隕石によって全てが無に帰したという、一発目の仕事にしては中々のインパクト。

因みに、現実世界に戻る方法が正にその地での死亡であるようで、現実に戻るまでの時間は因幡さんがコントロール出来る模様。

隕石が落ちると分かっているので、有名歌手らは他のイベントに参加していた為、レイに出番が回って来たという経緯であり、現地の人らにとっては最後の余興だった訳ですね。

 

〜歌合戦、出場!〜

化け物と戦う国で、レイの歌声が武器として駆り出される話。

簡単に言うと、ジャイアンの歌声になるんでしょうけど笑、敵の化け物の歌がこちらにとって騒音でしかなく、それに対抗する為のレイの歌という扱いでした。

中々に複雑な心境な所かと思いますが、レイの歌は化け物らにとって効果覿面であり、これによって休戦協定が結ばれたとの事。

歌が役に立ったとは言え、そっちかぁ…みたいな。

 

〜領主の結婚〜

異世界で結婚詐欺をする話。

横暴な領主に見初められた才媛が村人らに売られそうになるのを、男装したレイが婚約相手としてやり過ごすといった感じ。

オチは依頼人がその少女ではなく領主であり、逆に領主がその少女の進路を守ったという話で、好きな人の為なら我を枉げてでも一芝居打つといった、人間の不思議さ?でしょうか。

 

〜ロウソクは消えない〜

有名監督の作品に死人役でレイが出演する話。

その役というのが、冒頭で本当に服毒して死ぬ役どころであり、死んだら元の世界に戻るだけのレイにはぴったりな仕事でした。

悲しい事にその迫真の演技(演技というかほぼ実演)は、映画の好評と同様に評価されたものの、当の監督は因幡くんの能力を信じていなかったが故に、レイの正体は明かされず、勿論次の仕事が入る訳もなく、という結果に。

監督は、自殺願望のある少女を用意されたくらいにしか思ってないようでした。

大役を果たしたものの、何とも糠喜びというか拍子抜けというか…。

 

〜たった一つの願い〜

10万人くらいの大衆を前に、レイが歌を披露する話。

これが喋るトウモロコシが出てくる回!笑。コミカルに思えて、実は1番シリアスで考えさせられる内容でした。

異世界と思わせての並行世界というのが、より人類に警鐘を鳴らすものであり、トウモロコシ星人が地球にやって来たケース。

何故レイが大勢の観客の前で歌ったかというと、初めて歌を聞く人間の反応を得たかったかららしい。

要は人間サイドが家畜となった世界で、出荷される人間に何をしたら美味しくなるだろうかという話であり。それは、植物に歌を聴かせるが如く。

植物?が人間よりも上に立つような、言わば倒錯的な世界ですね。

まぁ実際のところ人間の肉ってあんまり旨くないって聞きますけど、1つ間違えれば人類側が捕食される生態系にもなるという意味で、良い教訓だなと思います。

因みに、このルートに入ったきっかけは、別にトウモロコシ星人が悪い訳ではなく、偶々人類サイドの1人がネゴシエーターとして念話が出来てしまい、その人が人類を家畜にする事を願ったという経緯らしい。

戦争ばかりで人類滅亡するくらいなら、食料として管理された方が絶滅しないのではという、意外と尤もらしい理由があったようです。

言われてみれば、トウモロコシも美味しいからこそ人間に育てられ、結果として種の保存となってると言えるけど。尊厳は何処へ…。

 

〜救済のメソッド〜

役者に入り込み過ぎた女性の救済の為、レイがその女優の生い立ちを演技する話。

レイにとっては演技にのめり込み過ぎるのを心配しなくて良いというのが、慰めというよりかは全然期待されてない!と思えて苦笑します。

レイという名前は光ではないのだろうか。

 

因幡メランコリア

因幡さんのライフワーク語り。

人類滅亡の原因は様々あれど、それを観測するのみの立場にいれば、身構える必要もないし、寧ろ楽しんでしまうのはしょうがないかな。読者も同罪です。

今回のbest words

まったく闇が深いわー。ブラック・アンド・ディープだわー。巨匠って、みんなどっかアタマがアレなのかしらねえ (p.127 女社長)

あとがき

語り出しがほぼ毎回固定なのも好きです。そういや、レイの世界はイラストから着想が始まっているらしい。

社長と因幡さん含めメインキャラの生い立ちも気になる所です。