心和のラノベ感想

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リバーズ・エンド5 change the world 感想

リバーズ・エンド5 2003.7

 

今回は、リバーズ・エンド5巻です。

もう1巻後日談の短編がありますが、シリーズとしては最終巻。安直と言ってしまえばそうなのかも知れないけれど、過酷さを目の当たりにしてきた身としては、良い終わり方だったなぁと思います。良き作品に巡り会えたという気持ちです。

あらすじ

唯が目を覚ました。しかし、記憶を喪失し言葉を話せない形でというものだった。拓己は唯の食事の介抱などを行う。そして、検査ではバグスを倒す際の生々しい血飛沫から、満足な行動がままならなくなっていく。

拓己をデウス・エクス・マキナとして昇華させたい伊地知は、起きたばかりの唯をコクーンに搭乗させるのだった。

感想

爆発的な面白さとは違うのだけれど、しみじみと読んで良かったなぁと思える面白さでした。最後の猫の話もまた良いんだよなー。野良で生きていくには、人慣れしない方が良いって唯と話してたのが効いてくる。記憶失う前の唯からのメールとかもずるい展開よね笑。

結末としては、何か半ば放心状態で突っ込んだら敵の親玉倒しちゃって、人類勝ちましたー、しかも、共に戦ったスクールの生徒らも無事生存!という、ある意味安直なハッピーエンドでした。その側面で見ると。

安直ではあるんだけど、これまでが中々にしんどいシーンもあったので、許せてしまうというか、ご都合主義!とツッコむよりも、上手くいって良かった!という気持ちの方が上回りました。この感覚にさせるのは難しいと思うので、展開や構成の妙かなと思います。

いやまー、流石に主要キャラ殺す展開はこの期に及んで、あまり喜ばれる展開じゃないってのはありますけど笑。それと、バグスとの戦いは実を言うと、本編的には些末と言っても差し支えないんですよね。拓己達が乗っていた母艦とかどういう仕組み?とかは分からずでしたし。

人類の滅亡の阻止は、結局巻き込まれたものに過ぎなくて、拓己にとっては唯と一緒に過ごすことが1番な訳です。その点で見ると、ある種ハッピーエンドに非ずとも取れる。というのも、万全の唯と共に歩くことは叶わないから。

それでも、珠玉の数々の記憶は残っていて、譬え脳にダメージがあっても唯は唯として接していこうというような、言葉を教えていこうという前向きな終わり方だったので、そこは良かったなーと思います。

記憶に関しては無力な主人公だけれども、そこに温かさがあるというか。それと、純粋で猫みたいな唯も唯で可愛かったです。不謹慎かもだけど。ある意味穢れを知らない無垢な唯。

巻き込まれたものと言うと、伊地知もそうだったんだろうとも思います。結局は、人類滅亡を400年後から受信して、分からないなりに進めてただけだったようですし。だから、別に伊地知さん未来人説は棄却かな…。

でも、最終決戦での中での死=現実の死という嘘を拓己にだけ伝えたのは、中々に酷でしたねー笑。あれはかなりの極限状態でしょう。

そして、七海は結局、告白しちゃってましたねー。ある意味言えたのは本人にとっては良かったのかなとも思いました。叶わないと分かった上で告白する勇気も凄い。伊地知の話で落ち込む拓己を励ます意味もあったのかなぁ(影がないように見えるという比喩も素敵)。最後、絵本で喜ぶ七海も可愛いかったです。

唯にぞっこんの拓己は、唯の記憶が戻らないとは言え、別の人との結婚はしなさそう…。でも、猫の去勢の話も踏まえると自身の血を未来に残す尊さもある訳ですが。

遥のキノピオは最後に人間になったかと話すシーンも印象的でした。確かに、自分も覚えてない笑。それで、直人が調べて人間になると教えるんですが、これには遥も報われるだろうなーと思われます。自分を人形だと思ってるので。

それと、普段図書館に行かない直人が、行ってまで調べたというのが、これは直人は遥を好きなんじゃないかと思ってしまう。遥には弱い様子も随所にありましたし。まぁ、好意からではなく直人の男のプライドのみという説もありますが、恋愛絡んでて欲しい笑。そういや、直人は影で煙草吸ってる悪いやつでした…。

結局、唯が死ななくちゃいけない理由って何だったっけと思い出してみるけれど、分からない。拓己が能力を発現するのに必要だったとか?もう一回1巻を読むと唯の躊躇度合いとかが分かるのやも知れん。

今回のbest words

もう遅いわよ。覆水盆に返らず。蛙飛びこむ水の音よ (p.35 七海)

あとがき

いやー本当、ボトルメール的な展開から始まった物語が、箱庭のスクールでの共同生活から人類滅亡の危機を懸けてVRMMO的な世界観にまで発展するとは。作家って改めて凄い。神無き世界の英雄伝の如き宇宙戦争感でした笑。というか、この作品がSAOに影響を与えてたりしてね。

絶妙な切なさが堪らない印象に残る作品でした。クローズドサークルな感じではあったけれども、外では世の中は普通に動いていたと分かるのも何か、セカイ系ではないけど、人類滅亡云々よりも、唯の方が大事というかそんな気がします。