涼宮ハルヒの憂鬱 感想

2003.6

今回は、涼宮ハルヒの憂鬱です。(再読)

第8回スニーカー大賞〈大賞〉受賞作。言わずと知れた人気作であり、自身もこれまで読んだラノベの中で最高評価を付けさせていただいてる作品で、近々最新刊が出るとの情報を聞きつけて再読しました。

簡単に言えば、日々の生活や自分の存在の小ささに気付いたヒロインが、自分の思い描く理想を願い(自身が改変能力を持つと知らないまま本当に事象改変が起き)、それに主人公らが振り回されていく話でしょうか。

あらすじ

「ただの人間には興味ありません。この中に宇宙人、未来人、異世界人、超能力者がいたら、あたしのところに来なさい。以上」

高校のクラスでの自己紹介でそう言葉を発したのは、涼宮ハルヒだった。そんなハルヒに少しずつ会話を試みていくうちに、キョンSOS団と称する集まりに加入させられ、不思議な現象に巻き込まれていく。

感想

飽きさせない文章と多彩な比喩表現、ストーリーの面白さ、無駄のないキャラクター造形、勉強になるSF知識、1冊としての纏まりの完成度、全てにおいてケチのつけようがない作品だと改めて思いました。

終盤にかけての展開が、ハルヒによって新たな世界が創造されようとしていて、その場にキョンが選ばれた事、未来のみくるの"わたしとあまり仲良くしないで"発言から、この事象に巻き込まれる直前のキョンとみくるの絡みが引き金となったと考えられ、ハルヒの極大のツンデレだったと腑に落ちる瞬間が素晴らしい。

全ての始まりは、ハルヒキョンに出会った所から始まるものの、キョン自身は普通の人間という判定。その体で話は進んでいき、読者目線からもキョンの巻き込まれ体質や小言が面白い。

ただ、ここまで来ると本当にキョンは普通の人間なのかという疑問が湧いてくるのは当然なのではないかと思う(ハルヒを御している時点で普通ではないというのはさておき)。

気になっているのは、ハルヒの自己紹介において出てきた異世界人だけがまだ現れてない所。だからと言って、キョン異世界人と決めつけるのは尚早なんでしょうが、世界五分前仮説に則るなら、キョンハルヒから選ばれる何かしらの蓋然性はある筈で、読者を騙す設定があるかも知らないと期待もしてしまいます。

キョンの本名は現状の最新刊まで明かされてないのもまたミステリアスです。今風の名前じゃないからとかだったら納得ですが。戯言シリーズも"ぼく"の本名が謎のままだったなぁ。

あと、ハルヒキョンに前に会った事ない?と聞くシーンが序盤にあったのに気付いたのは嬉しかったです。これは、笹の葉ラプソディの伏線なのか。

と、長々と所感を述べてきましたが、ここからはキャラや出来事などを振り返っていきます。

まず、長門有希ですが、元々は文芸部にポツンといて、ハルヒのなすがままに部室を明け渡した少女として登場。その正体は、ハルヒを観察する宇宙人とも呼ぶべき存在(対人間用の機械?)で、一人暮らしのマンションでの長広舌は、普段の寡言からは度肝を抜かされます。

最初は電波かとキョンから思われながらも、クラス委員長の朝倉涼子長門の仲間の中でも過激派として、キョンを襲ってきたのを助けた事もあって、かなりの信憑性を持って受け入れられる事に。

改めて聞くと、デアラの鳶一折紙と似てたし、青ブタの双葉のような安心感と頼りになる存在だなーと思いました。そして、ハルヒにポニーテール萌えと伝えたように、眼鏡属性が無いと伝えてから眼鏡をしてない長門が良かったですね。こりゃ長門有希ちゃんにも繋がるとも。

次に、朝比奈みくるさんですが、一つ上の学年でありながら、ロリ巨乳という属性によってハルヒに拉致された少女。その正体は未来人であり、ハルヒとの接触も察したように対応していたのが印象的でした。"禁則事項です"を多用するのも印象深い。年齢不詳。

シンプルにキョンから可愛いと思われている存在でもあり、バニーガールやメイドなどのコスプレで(ハルヒからの強制)、読者を楽しませてくれました。左胸の上に星型の黶があるのも言い添えておくべきでしょう。

古泉に関しては、変な時期の転校生としてハルヒに注目された好青年。その正体は、超能力者という扱い。ハルヒがストレスから無意識に生み出した閉鎖空間で暴れる青い巨人を撃退する事が出来る。

3年前にハルヒが無意識に能力を発現したのをきっかけに、宝籤に当たるかの如く勝手に能力が身に付いたのを自覚したらしく、ある意味では被害者でもある。

ハルヒについては、コンピューター研究部から、部長にみくるの胸を触らせて冤罪を吹っ掛けてPCを強奪する等、自己中心、唯我独尊なヒロインでした。しかし、容姿は可愛い。

最初の発言もそうですが、曜日によって髪型を変えるなんかも奇妙奇天烈な訳でしたが、行動力がある一方で繊細な一面もあるのがまたいじらしい。甲子園に親に連れられて行った時に自分のちっぽけさを自覚したみたいな逸話が好き過ぎる。

とまぁ、集まるべくして集まったSOS団が、最後にハルヒの我儘で世界が改変されそうになった所を、白雪姫よろしくキョンハルヒに口付けをした事で、万事解決となりました。思い合っているのかは微妙なラインですが、1巻の締めくくり方としても綺麗でした。

今回のbest words

似合ってるぞ (p.293 キョン)

→この言葉だけで、夢を共有していた事実を伝えている、かも知れない。

あとがき

長門に助けられた放課後に谷口が教室に入って来たシーン、ゴーヤプリンって言ってなかった笑。

名作は何度読んでも面白い。