今回は、狼と香辛料24巻です。
Spring Logとしては初の短編集ではない形で、久々に狼と香辛料らしさを感じました。
それに、ロレンス達がエーブやキーマンといったキャラ達に再会して、羊皮紙を含めてこれまでの話を上手く包括した集大成といった模様で、とても面白かったです。最終巻と言っても差し支えない完成度でした!
あらすじ
木材の関税絡みの問題を解決したロレンス達。しかし、木材の関税が高止まりしたことによって、港町カーランが安く木材を仕入れられなくなり、結果としてトーネブルク領の森林を切り開くことになったと、森林監督官に聞かされる。
森の開墾に反対するホロの意見もあり、問題の解決に乗り出すロレンスであったが、事態はエーブやケルーベのキーマン、薄明の枢機卿まで絡む退っ引きならない状況である事が判明していく。
感想
序盤こそまた複雑な状況でやきもきしたものの(地図の挿絵が欲しい…)、ストーリーの繋がりとそれらの落とし所が見事としか言いようがなかったですね。ドキドキハラハラする展開と、これまでの羊皮紙等を読んできた事が報われるような流れは素晴らしかった。
そして、何と言ってもエーブとの再会ですね。これが見たかったんだよ!と。今回は、当時とはある意味で進化した完全版エーブが見られたのが良かったです。というのも、正攻法を使いながら、自身の身を削ることなく莫大な利益だけを得る構図を作り上げるという。この末恐ろしさを出しながら、最後は人ならざる者であるホロの力を借りながら逆転していく展開、熱いに決まってる!
上手く薄明の枢機卿を味方に引き入れていたエーブの手腕も流石でした。それから、この歳でもう殴り合いはごめんだよというセリフで笑えました。
まぁ、エーブが丸くなったとも言えるものの、結末としては誰が損をしたではなく、エーブが取り過ぎていた利益を上手く分配したということなので、穏便だったとも言えますが。
そして、分配と言えば、正に話は有限なパイを如何に分配するかというのが根底にあったなーと思います。雇用の創出なんかも大事というか。
にしても、概要を書こうと思っていたけれど、やっぱり複雑で難しい…。木材の価値がまず高くて、カーランというケルーベとは扱う品物が似ているけれど、新興で発展を目論む町があって、エーブがほぼ独占している羊毛を得るために木材が必要で、神聖な?トーネブルク領の森を切り出す必要がある。ここの部分で、薄明の枢機卿が絡んでいる?
実はカーランとケルーベは啀み合っている訳ではなくて、共にエーブに苦められていて、森林を伐採せずに何か温泉のような特産品を作れば良いとなる。そこで、前回のクラップマークが生きてきて、ホロによって水源を発見。トーネブルク領の水資源で羊毛の縮絨などの加工を行うことで、万事解決みたいな。
ロレンスががっつり物語に絡みながら、自身は殆ど利益を出してないというのがまた良いんですよね。それに、森を守りながらホロの為に偉勲も残すと。守るべきものがあるとそれが弱点になるとは言いますが、ロレンス達は寧ろ補完し合っていて大丈夫そうですね。
今回のbest words
わっちゃあその顔が、一番好きじゃ (p.245 ホロ)
あとがき
ロレンス達がコル達に会うことは暫くなくなりそうですねー。
この巻を読むまではEpilogue以降の香辛料を読む為には、羊皮紙を読まないとという義務感みたいなものがありましたが、読んできて良かったです。次の刊行は羊皮紙になるそうですが、ロレンス達の助けが必要になる流れとなるか。