今回は、狼と香辛料3巻です。
今回も神回だったなぁ。帯の"なぁ、ぬしよ、わっちを抱いてくりゃれ?"がどういう気持ちで言ったのかを知ると何とも哀しい…。
あらすじ
何とか奴隷になる運命から回避したロレンスらは、クメルスンという町を目指していた。そこで、同商会のロレンスよりも若手のアマーティと出会う。若くして才覚を見せるアマーティは、ロレンスに対しトレニー銀貨1000枚と引き換えにホロへの結婚を迫る。
一方で、ロレンスは年代記作家を頼ってホロの故郷ヨイツの情報を聞き出していた。しかし、ホロの小さな悪戯がきっかけとなり、ホロと喧嘩をしてしまう。
市場では、黄鉄鉱が物に反して異常な値上がりを見せ、ホロがアマーティに奪われてしまうとロレンスは焦る。考えた結果、ロレンスは黄鉄鉱の価格を下げる為に奔走するのだが…。
感想
面白かったです。言及したいことが山積み過ぎるんですが、シンプルに、目的がはっきりしている話の展開だと物語に没入できるなと思いました。
言ってみれば今回の話は、ロレンスにとってホロの存在は何?ということでした。中盤で、ロレンスはその問いに答えられずに仲違い的な感じになってしまうんですが、あぁこの命題が最後のオチになるんだろうなぁと。
ロレンスとホロの出会いって確かに幸運というか成り行きみたいなもので、苦労して手に入れた訳ではないからこそ、即答が出来ない。けれども、失ってみてやはり1人は寂しいし、いかにその存在が大切な物になっていたかに気付くと。正にマルクが言っていた通りで、ロレンスが町を走り回るのは誰の為?ってことですね。
行商人に友達が出来ないってのはそうなんだろうなぁと納得もしました。評判が大事な町商人と行商人の考え方の違いなんかも勉強になりました。副業で儲け過ぎてもってのはなるほどなぁと。これがまた上がり過ぎた黄鉄鉱の裏取引にも絡んでくるのもgood。
実は今回、1,2巻に比べると危機的状況ってほどでもないんですよね。実際に、借金を抱えるでもなく、何かに追われるでもなく。それに、アマーティの申し出だってホロの考え次第では意味も成さない。
それでも、振り返ってみれば先述の問題を考える為には必要な展開でしたね。ディアナとロレンスの話を隠れてホロが聞いていたという展開もめちゃくちゃ好きだなぁ。自暴自棄で発言した抱いてくりゃれ?が今後良い意味に変わっていくというか。ホロを積荷に喩える話も良き。ディアナさんとホロも似た者同士ということがあとで分かるという。
あとは、喧嘩の原因として、ロレンスがホロの故郷の情報を集めようとしていたことも裏目に出たんだろうなと思いました。勿論良かれと思ってやってるんだけども、ホロからしてみれば早く別れたいの?と思ってしまうと。
けれども結局、何だかんだでお互いがお互いを求め合ってるんだなーと知れたのが本当良かった。読者としても、ホロが故郷に戻るのを見たい一方で、この関係性が終わるのは見たくないという矛盾があって、でも今回で故郷に行ったとて旅を続けてくれるのではないかなーという淡い期待も生まれました。
そういえば、ロレンスに届いた武具の暴落の知らせの手紙があったのは面白かったです。もっと早く知れていればと。でも、逆にこの情報をくれた主は手紙というお金がかかる手段を用いてでも伝えようととしてくれた信頼のできる相手だと気付けた、みたいな解釈が出来るのが商人なんだなぁと感心しました。
今回のbest words
わっちに首ったけ (p.123 ホロ)
あとがき
売り注文を増やすことで、黄鉄鉱の価値を下げて信用売りをアマーティにとって損をさせる。何とも株取引みたいなんですが、実際には1人2人の力では物価への影響って微々たるものなんだろうなぁと思います。
ま、今回は愛はお金で買えないし、利益云々よりもホロが1番大事という話でした。