四畳半神話大系 感想

四畳半神話大系


今回は、四畳半神話大系です。

この作品はアニメで観ていて、珍しい白黒調で、阿良々木暦もかくやという軽妙な語り口が印象的だったのを覚えています。アニメ化している分、個人的なカテゴリーはラノベと言ってしまって良いんですが、軽快でありながらも様々な比喩表現を始め、ラノベのようにスラスラ読めないところが、やはり一般文芸寄りなのかなとも感じました。

4章構成で、薔薇色の大学生活を目指して、それぞれ4つのサークルや組織に所属して堕落していく、パラレルワールド的な物語で、徐々に全体像が分かっていく仕組みでした。

感想

〜四畳半恋ノ邪魔者〜

映画サークル「みそぎ」に入るも馴染めずに辞めて、悪友の小津と共にサークル長の悪事を元とした映画を自主制作していく話。何かアニメだともっと城ヶ崎先輩おっぱい星人だった気がする…。

〜四畳半自虐的代理代理戦争〜

樋口師匠に弟子入りする中で、代理代理戦争に巻き込まれる話。樋口師匠も謎だらけなんですが、こういう人がいると心強いというか、毎日が楽しそうには思います。将来には役に立たないでしょうけど。

自虐的代理代理戦争は、過去から連綿と纉継されてきた今となっては当事者ですら何のために戦うのか不明な悪戯合戦みたいな感じ。これは巻き込まれたくないな…。

〜四畳半の甘い生活

表ではソフトボールサークル「ほんわか」という名の、宗教集団から逃げ延びたり、ラブドール沙織との同棲だったり。これもアニメの方が過剰に描かれていた気がする。遊び心があったのかな。

ラブドールの存在感の描写は面白かったです。それから、酩酊した羽貫さんとのやり取りの中でのジョニーとの奮闘も下品になり過ぎず良い塩梅でしたね笑。文通相手が小津だったという悲劇もありつつ、明石さんも参加していたというのがせめてもの救いか。

〜八十日四畳半一周〜

四畳半の迷宮に迷い込んでしまう話。途中から、それぞれの四畳半がパラレルワールドによって形成された姿のものだと分かっていくという話。ラブドールが小津の手によって齎されなかった世界線。因みに、秘密結社〈福猫飯店〉は、図書館警察や印刷所などの複数の下部組織を纏めた名称のようです。

錬金術みたいなくだらない発想が笑える。流石に魚肉ハンバーグばかりの生活はキツいよなぁ…。ここでの話での蛾がどの話にも影響を及ぼしてるんですかねぇ。

____

4つの話を通じて、共通点もいくつかあって、必ず小津が悪友になるとか、占い師とか、浸水とか蛾の大群と小津の骨折とかもちぐまとか。章のオチは4章だけ立場が逆になってました。

好きなところは、やっぱり占い師のとこかなぁ笑。4回繰り返しても面白いんだから凄い。無料であれだけの妖気を漂わせてるんだから〜とか、能ある鷹は爪を隠すで、隠し続けた結果自分でも所在が分からなくなった才能を見抜けるのは凄いとか、唐突のコロッセオとか言葉選びが素晴らしい。

また、小津はいつも八面六臂の活躍をしている訳ですが、確かに解説の通り主人公が4つに分けて語る内容を毎章でやってのけてるのか。にしても、どの話でも結局は明石さんルートで小津も彼女がいたってことになるんですかね。

今回のbest words

この、さびしがりやさん (p.32)

↑このやり取りもクセになる笑。4章での孤独というテーマも重要かと思っての選出です。そういや主人公の名前って…?

あとがき

明石さんの「ぎょええええ」好き。

"我々を規定するのは、我々が持つ不可能性である。"というのは含蓄のある言葉だなぁと思います。結局、主人公は4つの組織に属してどれも馴染めずに撤退してしまう。1つのルートに決めて進んで、後から別のルートにしていたら…と考える事は完全に無駄とは言わないまでも、あまり意味のないことなのかも知れません。自分の力量を見定めて、好機を掴むべしと。