魔剣少女の星探し2 魔剣名鑑 感想 ★★★★

2025.6

今回は、魔剣少女の星探し2巻です。

読むのに時間は掛かってしまったのですが、広げた風呂敷を畳み切って、次回への余韻を残す手腕は流石だなぁと思いました。

終盤の感動シーンの筈が、腐っては生み出されるパンの壁というのを頭の中で想像すると、シュールで笑いました。

あらすじ

龍日祭を控えた頃、災厄の1つ『傲慢』を退けた夜明けの星(ステラ・アウロラ)はお金に困っていた。

そこへ来て、リットはセントラルに至る前に起こした雪崩の責任を問われ、ブラッドフォード商会に金貨50万枚の借金で連れて行かれ、ソフィアはクララの伝手で北方連邦国宮廷魔術師団『大鎌の輪』7人の大賢人の1人エカテリーナの護衛をする事に。

一方のクララは、セントラルに運び込まれた謎の荷物の調査に当たっていた。そこで、非弱そうな銀髪のお姉さんと出会い、行動を共にするのだが…。

感想

結社の陰謀に巻き込まれるリット達と、先の事件で冤罪をかけられた少年ラスティ、のじゃロリ大賢人エカテリーナの過去を乗り越える過程、結社の意図とは別に動くソフィアの姉セレナの出現と、絡み合った展開でしたが、キャラクター達が上手く噛み合っていて、面白かったです。

やはり色々と混み合っているので、読むのに時間が掛かってしまいましたが、背後関係などが徐々に明らかになっていく様子は良かったです。

情報の整理が出来てない部分も多々あるかも…。

でも、リットの父が見つかったというのも、大きな出来事でした。赤髪だからもしやと思ったけども。

リットの父は東方大公国内務卿のアルフォンス・カイエン六世という人物のようで、リットの母の為に魔剣戦争を終結に導いた立役者でもありました。

ただ、最愛の妻の元でずっと居られた訳でもなく、平和のためとは言え、妻の願いとは逆の方向に進んでしまったのは、皮肉というか何というか。

それと、ミオンは西方皇国の使者だったらしい。ミオンだけが、リットとアルフォンスの関係性を知ってしまっている状況なのね。

サブタイトルの魔剣名鑑は、エカテリーナが持っていた魔剣の位置や能力を示す辞典のようなものでした。これが、魔石に籠められている感じ。

鍵の魔剣を探して、4つの国の和平を崩そうとしている?結社にとっては、そりゃ喉から手が出るほど欲しい物である。

という事で、出てきたのがセレナであり、これにてソフィアの(血の繋がらない?)姉の生存が確認されました。銀の姫であり、十三位階でも第1位の剣の実力者。

クララとの対決でも終始クララを圧倒する技倆の持ち主で、『全能』は相手の魔剣の能力を無効化する魔剣っぽい。だからこその小細工無しの剣の腕前であり、天才クララを以ってしても、互角かそれ以上の強さでした。

今回の騒動には直接の関与はなく、第2位の暴走だったようですが、ちゃっかり魔剣名鑑の複写には成功していました。

その際に述べていた『科学』という言葉が印象的でした。禁書目録みたいな感じになるのかな?笑

そもそも魔剣使いは魔法を使えないという制約があるので、代用としての『科学』という事なのかな。それにしても、この作品の時代的には『科学』は突飛なものと言えるかも知れません。

セレナさんが、主人公らに対してかなり情報的には進んでいるように思いますが、何を企んでいるのか、敵なのか味方なのか気になります。

話を戻しまして、今回の事件のあらまし。

教導騎士団の内部にも結社の手が入っていて、セントラルに持ち込まれた禁忌術式『黒百合』という呪いによる混乱。魔術に関するものを黒い霧に変えてしまう凶悪な呪い。

そんな事は露知らず、リットは商会の推薦で照覧試合に出る事になり、一方のソフィアもエカテリーナに強さを認められて出場する事になり、リットは勝ち負け抜きで能天気にソフィアと戦える事を喜んでいたのは微笑ましかったです。

照覧試合の景品である魔剣名鑑の写本は売れば大金になるらしく。

前回ほぼ何も出来てなかった教導騎士団でしたが、ロシュフォールさんは普通に強そうでした。面目躍如。師匠のミルグラム枢機卿がどれくらいの強さかも気になりますね。

エカテリーナを護衛していたソフィアは、路地裏で孤児を匿いながら運営している『潜む蜘蛛(ラティア・アラネア)』のラスティやボーマンに出会う。

そのラスティは、エカテリーナの祖父を殺す等の事件の濡れ衣を着せられた少年であり。四大国が結社の存在を知らないと思わせる為の犠牲と言った事情も分かるのと、当時の行動を本人が悔いていたという側面もあったようで。

そして、その事件の時に使われたのも黒百合で、最後にソフィアがラスティの『苦蓬(アブシンディウム)』とボーマンの『六分儀(ゼクスタント)』で核を斬る流れも良かったです。

『苦蓬』は斬った空気を腐らせるもので、ラスティは敵の足場を壊したりにも使っていました。『六分儀』は対象の急所を見せる魔剣。

エカテリーナの口添えもあって、ラスティは恐らく罪は雪がれた一方で、それを支えていたボーマンは、結社の手下だった模様。

ただ、ボーマンは成り行きでその立場になっただけの言わば被害者であり、その辺りの苦悩もまた辛いものがありました。

騒動に乗じて魔剣名鑑を奪取、エカテリーナの殺害までが命令だったようですが、人の良さが勝ったという感じ。

エカテリーナに関しては、麦1粒からパンを沢山生み出せるという魔術を持っていて、正に兵站には非常に助かる魔法の使い手でした。

が、大賢人だった祖父アレクセイを守れなかった過去から、自分の魔術を大した事ないものとして、武力を求め、またその力を持つ魔剣使いを羨むといった傾向がありました。

そんな態度だったエカテリーナでしたが、今回の件で祖父の遺言を思い出し、武力に依らない力もまた活用の道がある事を再認識し、悩みを断ち切ったように見えて、前向きになったように思います。

ソフィアを崇拝し過ぎて、お姉様と言い始めたのは迷走な気はしますが…笑。多少クララとギクシャクしてたのも解消したようで良かったです。

それと、セントラルの地下構造と黒百合の関係性なんかも、気になる所!街のイメージはヴェネチアなんでしょうか。

後日談として、リットがお金を貸した怪しげな話が詐欺ではなく、実話だったのも笑いました。何か上手い事借金が帳消しになりましたとさ。善人の周りに善人がいると平和である。

本作における星は、魔剣というよりも大切な仲間を指すのだろうか。セレナが言ってた。

戦争による戦災孤児などの負の側面もありながら、武功を立てたいとか、それこそ面目躍如を目指す人もいたりというのが難しい所ですねぇ。

今回のbest words

覚えておきなさい。……巡り続ける限り、生きている者は死なない。命は消えるのではない。それは、円環の中で後に続く誰かに託されるのだ (p.318 アレクセイ)

あとがき

2巻の価格が税込で1000円を越えたという事で、色々察してしまうのが悲しい所。印刷製本はロットが多いほど単価が安くなるものだから…。

1巻以上に2巻は楽しめたので、是非3巻で車椅子の老婆の活躍を見せて欲しい…笑。百手のアルルメイヤさん、像があるほどの人なのに悪役なのか…? リットに助言をした場面もありましたが。