誰が勇者を殺したか 預言の章 感想

2024.8

 

今回は、だれゆう2巻です。

預言者が魔王を倒すまで死を繰り返しているという事実から、預言者の苦労を描いた話であり、それ以上にザック達が外側から見て如何に異端だったかを知る話でもありました。

ザック達の冒険の補完というよりかは、この作品の世界観を少し広げる意味のある巻で、個人的には蛇足気味かと思いましたが、良い話ではありました。

あらすじ

預言者は世界編纂という唯一それだけ異能を持ち合わせていた。魔王討伐の為に勇者を選定し、失敗すれば自分の死を持って再びやり直す事の出来る能力。しかし、1回の試行で数年を要する観測は、預言者の精神を摩耗させ疲弊させていった。

そんな時、預言者が目を付けたのはレナードという冒険者だった。腕は確かだが、法外の報酬を要求するといった悪い噂が幾度となく立っていた。預言者は、レナード率いるパーティを見守る事に決めるのだった。

感想

今回の教訓を挙げるとすれば、人を噂だけで判断するな、でしょうか。また、筆者あとがきで触れられていた、逃げる事も時には必要だし、かと言って逃げた事を後々にまで引き摺って十字架にもなり得るというのは、ストーリーを通じて痛感したところです。

今回の話は、預言者が失敗続きで心が折れそうになっている所で、たまたま目に付いたレナードという、周りからは金にがめついと悪評のある冒険者を勇者に見出し、徐々にレナードの為人を知っていくと共に、心変わりしていくというものでした。

このレナードという人物は、先の魔人との戦闘で逃げ、勇者と崇めるルークの犠牲によって生き存えた過去を持つ剣士でした。また、生きていくには金が必要だという正論から、依頼人にがめつい男という評判。

そんなレナードなんですが、先の生き残りであるソフィア、ニーナ、エフセイを仲間に加えて仕事を熟していました。これは、因縁の魔人を倒すという目的の為でした。

報酬の悪評についても、魔人に自分の腕を聞かせて後々の対面の機会を作る為だった?のと、得たお金をちゃんと流民に充てていたりと、実は良いやつだった訳です。

それでもまぁ、腕利きとは言え結局は壊滅する未来なのですが、世界編纂でザックを勇者にするという正解に辿り着いた時に、預言者がレナード達を助けるというのは熱かったです。

預言者は遠くから見てることしか出来ない点で無力ですが、能動的にも動けるという証左でした。

というか、ザック達のパーティが強過ぎる笑。因みに、レナードが崇拝していたルークはザックの父という繋がりもありました。何だ、ザックは遺伝子的にもつよつよだったんじゃん!という。

蛇足気味と言ったのは、1巻で纏まっていた物語に水を差してしまう部分もあると思ったからで、世界編纂という能力も1巻で出ていたものの、愚直さで現実を塗り替えていったザックに対して、異能をあまり軽々に持ち出すのもなぁと感じたからです。

ただ、この世界間で1つの物語としてはまた綺麗に纏まっていたし、保管すべき挿話もあるのは分かるので、意味がない訳ではないなと。

今回のbest words

どうですか、わたしは美しいですか? (p.250 預言者)

→自分だけが記憶に残っているというのも残酷ですが、それを置いても良いシーンでした。

あとがき

実は3巻も刊行が決定しているという事で、何というかストーリーは完結している上で補完的なストーリーで巻を重ねていくというのは新しい。

レナードが生き残ったのは意味があったんだなぁと思います。一時の逸りで花を散らすのはかっこ良くても、命あっての物種とも言いますからね。ただ、覚悟を決める時というのもあるのは確かで、タイミングなんだなと思います。