やがて君になる 佐伯沙弥香について(2) 感想

やがて君になる 佐伯沙弥香について(2) 2019.5

 

今回は、『やがて君になる』外伝ノベライズ2巻です。

高校生になった沙弥香が、燈子の隣にいられるよう奮闘する模様が描かれましたが、負けヒロインムーブが強いですね笑。

面白かったものの、今回も尺が足りなくて深く感情をぶつけ合ったり、文化祭等の行事をがっつり描くみたいなのがなかったりは少し残念でした。

あらすじ

中高一貫の女子校を蹴って高校に進学した沙弥香は、代表挨拶をする七海燈子に一目惚れする。自分より入試の成績が良かったという事実よりも、それは一目惚れと言う他なかった。

燈子が生徒会に入る事に釣られて、沙弥香も生徒会に加入し、燈子の生徒会での文化祭の劇をしたいという願いのサポートをしていく。自身の燈子への恋心を胸に秘めたまま…。

感想

内容はかなり原作に掛かる部分があって、少なくともアニメを観ておいて良かったなーと思いました。結論から言うと、沙弥香は高校でも恋愛に失敗します。"押しても駄目なら引いてみろ"で挑んで負けたというか。

冒頭は、後輩の小糸侑がいるシーンからでした。この侑がまさに原作の主人公であり、多分結末でも燈子と結ばれるキャラクター(ですよね?)。本屋の娘で、沙弥香が柚木先輩の影響で小説を読み始めた時に出会っていたというのが面白い。

そして、2巻の大半が高校1年生の沙弥香と燈子を描いた話になる訳ですが、そのタイトルが平行線というのがストーリーにぴったりだなぁと思いました。交わらずに隣にいる事を選び続けた沙弥香は現状維持という名の怠惰に陥ってしまったのか。

とは言っても、やり取りから察するに、燈子が沙弥香から(侑が現れる前に)告白されていたとしても、淡白に断っていたような気もします。燈子が侑を好きになるのだから、百合っ気がないとは言えないんだろうけど、対象が違うというか。

にしても、同級生でも失恋するとなると、運が悪いというか巡りが悪いというか。文芸部の女子は脈ありそうでしたけど笑。

しっかし、頻繁に告白を受けては断っていた燈子が侑に靡いたのは何なんだろうね。恋の不思議さと言えばそれまでだけれども、それは原作の方で見ていくしかないっぽい。弱さを見せられる関係が良いのかなとか。

燈子の過去については、元々目立たない子だったらしい。日南葵パターンか。文化祭で生徒会の劇をやるという動機についても、明確な理由は明かされなかったものの、今は亡き?優秀な姉の存在があったようで。まぁ強引ではあったよね。ジャンケンに弱いとかも後ろめたい過去がありそう。

そういった事情に、沙弥香が遠慮してズケズケと入り込んで行けなかったのも、後から振り返れば上手くいかなかった遠因なんだろうなと。結果論とも言える。自分から話してくれるのを待って、鳶に油揚げを攫われると。それでも、沙弥香は燈子の弱みやら何ならを知った上で好きでいたというのが、ちゃんと恋をしていて切ないなと思いました。

別の世界線では、吉田愛果と五十嵐みどりの百合もあるんだろうな〜笑。ABCクッキーの件なんかは入間さんらしかった。

今回のbest words

時間が長いから気持ちが確かになるとも限らない (p.87 佐伯沙弥香)

あとがき

漫画は三人称視点が基本で、小説は一人称視点という差は面白い。

大学生で沙弥香さんは幸せになれるかな?