りゅうおうのおしごと!12 感想 ★★★★

2020.2

今回は、りゅうおし12巻です。(再読)

姉弟子、創太、鏡洲さん、辛香さん等が鎬を削る三段リーグ終盤戦と、八一の帝位戦の模様でした。最近ページ数が熱い!いや、厚い!!

八一と銀子がじわじわとイチャつき始めましたねぇ…。

あらすじ

姉弟子への思いを自覚した八一は、まだその事をあいに伝えられずにいた。しかし、聖天通商店街夏祭りのイベントで、銀子は八一のことを頼むと告げる。

少ない枠を掛けて争う三段リーグに挑む銀子は、将棋界の1番長い日を迎える。一方の八一は帝位戦に挑戦する事が決まるのだった。

感想

相変わらずの奨励会の過酷さと、その結果の天国と地獄の悲惨さでした。そして、浮き彫りになる八一の才能。ソフトで才能を見極める段階に?

という事で、三段リーグの方は相変わらずの人間ドラマが繰り広げられていました。やはり、個人的には虐げられる側の方に同情したくなります。

その立場だったのが、鏡洲さんでした。今回のリーグ戦でトップを走りながら、最終的にまたプロになれずに終わってしまいました。

厳しい面を出しながらも、やはり心優しき青年だったからこそ、勝負の世界では食われてしまうのかなと思うのが何とも虚しいですが、自分らしさを貫く所は格好良かったです。

これだけ人生を振り回されても、将棋が好きという気持ちは変わらないし、変えられないんだろうなぁと思います。

そして、鏡洲さんのバトンを受け取ったのが創太でした。彼の何でも器用に熟してしたう天才ぶりの回想もあって、将棋なら全力でやれるという話があったのも良かったです。ようやく笑顔が見られた。

過去、孤高の天才になりかけていた創太に声を掛けたのが鏡洲さんであり、師匠を亡くして途方に暮れていた鏡洲さんを後援したのが、清滝師匠という繋がりもまた熱い。

そして、もう1枠を勝ち取ったのが何と銀子でした。最後、肋骨を折りながら病に対抗して、鏡洲さん相手に勝利。

辛香さんとの対局では、辛香さんが盤外戦術や搦め手を使う卑しい人かと思いきや、実は良い人だと分かって嬉しかったです。

というのも、奨励会を退会した後、職を転々として明石さんの病院で清掃をやってたっぽい。そこで、子供に将棋を教えていたようで。教えていた子が死んだりとキツい職場だったとの事でしたが、だからこそ銀子の体調面を実は気遣っていたり。

とまぁ、銀子が女性初のプロ棋士となった事で、封じ手が明かされる事に(本当は挿絵でキスシーンやりたかったんだろうけど)。

それと、次点による坂梨さんの4段昇級もあったようです。これがまた鏡洲さんには気の毒なのですが、でも4連敗から14連勝する坂梨さんも凄い。

あと、インパクトあったのが於鬼頭さんが剃髪してきた事。このシーンは何か覚えてました笑。結局、何でそうしたか語られてないんですけど、より機械化して邪魔な物を削ぎ落とすイメージなんでしょうか。

その帝位戦は、2日目で八一が勝利。ずっとソフトは先手優勢を示しながら、自玉が詰まない事を読み切った、曰く人間にしか指せない手で逆転勝ち。

封じ手で、スマホとか機械類は持ち込めず、他人ともほぼ話せない状況に置かれるとは言え、一晩自分で考えられるというのは確かに大きいかも。

しっかし、ソフトに初めて負けて一度は自殺未遂もあり、自身もソフトに染めた(染めざるを得なかった)於鬼頭さんが、人間である八一に負けたのは、屈辱や嫉妬もあるとは思いますが、それ以上に救われた部分もあったのかなと個人的には思います。

密かにソフトに勝る人間の力を期待、嘱望していたのではないかなと。そう考えると、この帝位戦で八一が奪取する可能性は高い気がします。

いづれにせよ、銀子は公式戦で戦う資格は得たとは言え、プロになりたての実力では八一と同じ土俵に立つのはまだまだ先か。大きな一歩ではあるのですが。

今回のbest words

ぶちころすぞわれ? (p.63 桂香さん)

→銀子の惚気話がクリーンヒット

あとがき

ネクタイ直す振りして八一にキスする神戸のシンデレラが可愛過ぎた件。

著者の挫折が鏡洲さんや桂香さんを生み出しているとは。