今回は、神無き世界の英雄伝3巻です。
レンの家族の事、病気の事と伏線があったのでその辺りを期待していましたが、結果としてはあまり進展せず。それでも、2巻ほどではないにせよそこそこ面白かったですが、ここから広がりを見せようという所で打ち切りなのか…?
あらすじ
オルキヌス星系第5惑星ダリア。レンの母、弟ノア、妹ジャニスが住まうこの地に、共和国は銀河連合からの奪還作戦を敢行する。
しかし、先端が開いてからずっと膠着状態が続いていた。それは、惑星ダリアの絶対防御であるイージスの盾が張り巡らされているからだった。
感想
前述の通り、レンの事柄があまり進展しなかったのが残念だったものの、全体としては面白かったです。
レンの病気に関しては、症状が垣間見えたものの、余命がいくらなのかは判然とせず読者としては成り行きを見守るのみ。一方、家族の方は少し動きがありました。
というのも、ダリア奪還後、母は倒れてしまったらしく不在でしたが、ノアとジャニスがレンに会いに来た為。ですが、感動の再会とならないところが悲しい所で、寧ろノアの凶弾がレンを襲うという始末(ここの描写が少し分かりづらくて、最初ネリーが被弾したのかと思った)。
何故こうなってしまったかと言うと、共和国の腐敗した統治が銀河連合に取って代わり、それが惑星ダリアの住民にとっては希望だったから。それを、レンの活躍で再び共和国が奪還してしまったという皮肉ですね。
そもそも、レンは共和国に反旗を翻す企業連盟サイドなので、本当は見当違いなんだろうけど。結局、レンが司令官になった報酬を弟妹に渡してお別れとなりましたが、分かり合えた感はないのが残酷でした。
因みに、司令官になった報酬は宝籤に当たった位の金額らしい…。
ノアが銃を使用した事について、レン自身によって揉み消す形となりましたが、この理由がまた温かい。それは、弟妹に累が及ばないようにというのは勿論のこと、2人を連れて来たネリーが銃を奪われてこのような事態を招いた側面もあって、それによる降格処分を揉み消す為でもあると。
加えて、ダリア攻防戦の途中、家族の事で身が入らないレンをネリーが引っ叩くシーンも印象的で、後にレンがネリーを必要な存在と言ったのも良かったです。ネリーはネリーで、クローバー家の中で家督争いを忌避してから浮いた存在になりかけていたものの、こうして必要と言って貰えたのは大きかったのだと。
逆に、天才過ぎるが故に化物と呼ばれるレンにも人間的な部分があって、普通に接してくれるネリーの存在は大きいのではと思います。今後は、オフィーリアだけでなくネリーもレンのバイタルデータを見る事が出来るようになったと。これは、アスナに似てるぞ…笑。
また、地味に印象的なのがロイの人間味が司令官として立つ中で出ていた所。イージスの盾の突破方法を部下達に知らせないのはどうなんだと思いましたが、地上部隊のジョルダーニを身を挺して向かわせたり、信頼をしたりというのは良かったです。戦闘前は衝突があったりもしましたが、ロイが不器用なだけな気もする笑。
因みに、イージスの盾の突破方法は思考回数を増やしての乱数パターンの解析でした。これは正に電子妖精の領分ですね。
今回のbest words
僕がまだ生きているのは、ふたりのおかげですね (p.245 レン)
あとがき
総評を述べるとすれば、この作品は3巻で終わるには惜しい面白い作品だったと思います。もっと先が見たかったと思える作品。シャナよりも敵にもしっかり感情移入できる点も良い。
中立宗教国ノウスベルンのソウハク・コウユウを見てみたかったし、ネリーとレンのやり取りも追いたいし(ネリーの笑顔はいいぞ)、ロイの家督争いや成長も見たい。無慈悲さのないトップというのもまた良いのでは。