〈卵王子〉カイルロッドの苦難⑤ 野望は暗闇の奥で 感想 ★★★★

1993.10

今回は、〈卵王子〉カイルロッドの苦難5巻です。

イルダーナフなしでの北への行軍でしたが、影ことグリュウも加わって、何だかんだで上手く回ってました。

あらすじ

イルダーナフと袂を分かったカイルロッドとミランシャは、道中で賞金稼ぎのレイブンと成り行きで行動を共にする事となり、遺跡の研究をするホー・シェンに出会う。カイルロッドと意気投合し、遺跡を見ていると、その地下でカイルロッドそっくりな黄金像や浮き彫り発見する。

2人と別れた後、再びタジェナ山脈を目指していると、花の化物の奇襲を受けてしまう。そんな窮地に現れたのは、グリュウ(ミランシャ命名)だった。それから、グリュウの案内を受けながら歩を進める事に。

感想

前半は怪しいと思ったらみんな良い人達だった!な話で、後半は不気味な街&刺客?という苦難を跳ね除ける話×2という感じでした。

同行者がコロコロ変わるのも印象的で、レイブンはイルダーナフに憧れる女戦士で賞金稼ぎ。ホー・シェンは所謂オタクのような感じで、カイルロッドとは盆栽の熱意で親近感を覚えていて、グリュウは相変わらずミランシャに懐いていました。

まず、遺跡の件ではカイルロッドに似た人物が偶像視されていて、普通に考えたらカイルロッドの実父なんだろうと思われます。

イルダーナフが、元々のフェルハーン大神殿がその遺跡そのもの的な発言をしていて、今の大神殿は偽りのものと推測されます。だからこそ、今の大神殿はカイルロッドを亡き者としたいんだろうなと。

イルダーナフがトパックの会話の中で、ムルトよりもその後ろにまたある人物がいると言っていたのも気になる所で、グリュウも何か心当たりがありそうでした。また、その人物が倒れた時に魔物が台頭してくる的な話も出ていました。

因みに、イルダーナフはカイルロッドらと行動を別にしながらも、カイルロッドが辿った経路を後追いしている様子でした。敢えて突き放したのかなぁって感じですね笑。

こうなってくると、トパックやイルダーナフの存在理由や目的は、調停者というか、世界の秩序や安寧を陰から守ろうとしているように映ります。カイルロッドが敵に回る可能性も考えて、見守っているというか。

という事で、イルダーナフ、カイルロッドの父説は根拠が薄いような気がします。まだ分かりませんが、ある人物こそカイルロッドの父なのかなぁ。

あとは、トパックの大神殿での立ち位置なんかに触れられた場面もありました。人望や実力は申し分ないものの、今の幹部らは腐敗していて、その風紀の紊乱を糺そうとしているんだなと。

後半の話は、蜃気楼のような街と、雪に見舞われた街でヴァランチーヌという女性に宿を貸して貰う話でした。

蜃気楼の方は、飢えた大人が子供らを食って凌いだものの、その後街が衰退し、子供らと大人らの霊がその地に縛り付けられていた、という顛末。

子供らは大人らを恨んでいた訳ではなく、大人らが罪悪感を感じていただけというオチなのですが、王子の言うように、自分がその窮地に陥ったらと思うと他人事とも言えないのかなと思いました。でも、やっぱり子供を殺して食うのは身勝手が過ぎるけども。

雪の街の方は、雪そのものが魔物というのはびっくりでした。女王雪って単語を初めて聞いたけど笑、操られた雪によって家の中にいても凍死させられるというのは脅威ですね。ヴァランチーヌが魔物だった?

リュウは案の定酒に弱かった模様()

今回のbest words

あの人、美人だもんね。王子、嬉しいでしょ? (p.207 ミランシャ)

あとがき

前神官長だったロワジーの元にメディーナがいたのは驚きでした。イルダーナフはどこまで先を見通しているのか。

親子パーティ地味てきたカイルロッド達は、次回ムルト戦に突入か?!