主人公の幼馴染が、脇役の俺にグイグイくる 感想 ★★★★★

2025.1

今回は、主人公の幼馴染が、脇役の俺にグイグイくるです。

駱駝さんのラノベは初めて読むのですが、流石長編ラブコメを完結させているだけあって、ラノベらしい文章や会話が鏤められていて、安心して読めました。

ジャンルとしては、青春やり直し系ラブコメという事で、勿論タイトル通りの展開を辿りつつ、SAOの川原礫さんのような一旦貶められてからのカタルシスがあったりで、とても面白かったです!

あらすじ

石井和希は、親友で何の変哲もないながら、怒涛のヒロイン攻略でさながらラブコメ主人公のような天田照人の取り巻きの女子によって嵌められ、家庭崩壊を招いた挙句、屋上から飛び降り自殺を図る。

意識を取り戻した和希は、記憶を持ったまま高校の入学式まで時が戻っていた。一度目の人生の失敗を繰り返さない為、周囲の人間関係に気をつけながら過ごしていると、和希に近寄る女子がいる事に気付く。

感想

とても面白かった!周囲から氷の女帝と呼ばれながら、アグレッシブな努力家の一面をグイグイ出してきて、良きっ!とか古風な喋り方をする命が可愛かったです。

そして、一度目の人生での失敗を2回目で存分に生かし、追い詰められながらも相手の上をいく爽快感が堪らなかったですね。月山に対しての、写真送ってくれなかったよな?と、天田に対しての、そのスマホ月山のだぞ?の切り返しが最高。

にしても、仲が良かった天田が黒幕だったと判明した時の怖気も凄かったです。本当、とんでもねぇ奴がいたもんだ…。これも、1回目を経た事で正体を暴けたのが大きいし、命が早い段階で仲間だと信頼出来たのも大きかったと思います。

和希の復讐劇と命とのラブコメという意味ではかなり纏まった1巻だったので、1巻完結かと思いきや、2巻も鋭意制作中との事でどうなるかな。脇役がラブコメ主人公に成り上がってしまうのか、新たな問題が勃発するのか。

なぜ命が和希を好いていたのかというのは、子供の頃に公園で遊んだ過去があったかららしい。命は父の愛人の子であり家庭で居場所がない存在で、我慢する自分を慰めてリストバンドをくれた和希を好きになったと。

その公園には幼き天田もいて、自分を主人公と疑わない天田はそれからずっと命を好きでアプローチをするも、リストバンドを奪った事でずっと命に嫌われていて。という記憶を和希は忘れている為に、命の好意には気付いていなかったという背景。

1回目では真っ白な状況から始まるので、和希は天田と仲良くなり、命へのアプローチの手助けをしたりしていた訳なんですが、全て天田の打算だったのが本当恐怖。全然靡かない命を和希を挟む事で糸口を探っていたとか、そもそも全て理解した上で取り巻きを傀儡してるとか。

そして、最終的に取り巻きのヒロインの感情を利用して、盗撮されて脅されたと、態々スマホにそういう写真も仕込んだ上で和希を断罪、クラスに和希の父が働く会社の社長の息子である月山もいた事で、家庭崩壊にまで発展したという流れでした。

飛び降り自殺の前に、命が追ってくるシーンもありつつ、1回目では全く好意に気付けず終わったんだな…と少し悲しくなりました。ただ、2回目の命が鋭過ぎて、アグレシッブな努力家だけでは説明がつかない気がするので、命も前の記憶持ってたんじゃないか説ある。

という事で、2回目は天田と距離を置く方針に切り替えながらいく訳ですが、手を替え品を替え仕掛けてくる天田が、やはり手強かったですね。小悪党の諦めの悪さがとてつもない。

ただ、やり直してる分アドバンテージがあって、上手く躱せていて良かったです。現実もこう上手く進められればなぁと思ってしまいました。それにしても、恋する女子の行動が時に恐ろしい…。

今回のbest words

違う。俺はユズだけでなく、父さんと母さんも大好きだ。つまり、これは決してシスコンではなくファミコンだ。いや、スーパーファミコンと言っても差し支えがないだろう (p.21 和希)

→幼少期に妹と砂場で遊んでいて、「ふじさんよりたかい」って会話してるのも好き。

あとがき

学校という狭いコミュニティーであっても、例えそれが捏ち上げだろうと断罪に巻き込まれるのは恐ろしいなと思わされました。虐めて良い免罪符を得た人間は同調圧力に弱いというか。手心、手加減も大事。

元々の登場キャラの名前が日本神話絡みだったのはなるほどなと。星座繋がりにしたのは中々お洒落。確かに日本神話が本編に全然関係ないから変えた方が良いというのは正論ですね笑。