今回は、『優しい嘘と、かりそめの君』です。
2年前ほどに出た作品ですが、同著者の新刊と関連がありそうとの事でこのタイミングで読了。周りから見えないヒロインの為に主人公が奔走する話でしたが、主人公が生理的に無理だったのと、終始淡々として起伏が少なかったので、楽しめずでした。
あらすじ
藤城遠也は、高校の入学式の日にマッシュヘアの生徒が女子に言い寄るのを目撃し、助けに入るも、それがきっかけで暴力を振るったとして、目つきの悪さも相まって不良生徒の烙印を押されてしまう。
当然周囲と馴染む事の出来なくなった遠也は、旧校舎で1人佇む先輩の女子、夕凪茜と出会う。友好的に接してくれる茜と意気投合するが、茜にはとある秘密があり…。
感想
感覚的に言えば、ヒロインキャラの茜が少女の祈り像に願った事がきっかけで、周囲から認識されなくなるという設定は、青ブタと変猫をミックスしたような感じですね。
人の相談を受けるのが好きな茜が、その相談への対応に齷齪し出して、像に上手く立ち回れるように祈ったら、別の完璧超人の茜が生まれて、本人は周囲から見えなくなったという流れ。百相百解の清乙女の噂を信じたものが、本来の茜が認識外となる。
ただ、ストーリー自体は淡々と進んでいって、自分だけに優しい先輩がひたすら可愛いぜ!とか、意外とよく食べるのかとか、そういう部分は良かったですが、主人公の良さは全然感じませんでした。寧ろマイナスでした。
掴み所がないと言えば良いのか、こういう時にぼっち特有の捻くれとか、気持ち悪いけど面白い感じの分析とか、コメディやギャグがあると、好感を持てるのになぁと思いました。
いや、まだ中盤くらいまではフラットな目で見ていましたが、終盤は大きくマイナスに傾いて、流石に痛くて恥ずかしいしかなくて、見てられなかった…。
とらドラ!とかだと、主人公が不良に見られがちなのに、実はかなり家庭的で心優しいというギャップがあって好感持てるのに、今作の主人公はまぁ不良ではないんですが、端々に荒っぽい言動が見られて、何お前…って感じでした。
極め付けは、終盤の茜の偽物と集会で口論するシーン。これがもう気持ち悪くて、ヒールになる事に酔ってるのか、意味分からない屁理屈や突っ掛かりをしていく。
いや、そもそも先生や生徒が普通に止めて摘み出すのが普通なんですよ。姉が教師にいて仕込んでいると言っても、流石にこんなのはあり得ない。寧ろ前に遠也の頬を引っ叩く行動を見せたのに、ここで静観する感情もよく分からない。
言い出すと、他のキャラクターも行動が謎なのが多かったです。親友ポジションのリョウは不良扱いの遠也を助けるどころか、近づくな!みたいな屑だし、かと思えば何故か後半は協力姿勢になってるし…。
深森さんに至っては、ゲーマーな風なのに、半日しかプレイした事のない遠也から教えて貰ってようやくクリアとか、どんだけ効率も頭も悪いんだ…?
本来の茜を取り戻す為に、偽物が完璧に相談をこなせない所を目撃させるという目標も何か分かりづらかったですね。鍵の瞬間移動?までさせた能力はやはり謎でしたが…。
集会での公開告白の件は、それ相談じゃなくね?と言われればそれで乙だったのではという気もする。まぁ本当あのシーンは無理があったとしか言いようがない。遠也だけじゃなくて、茜への周囲の認識なんかも含めて。
で、結果的に先輩は戻って来て、両想いみたいなエンドになりますが、やはり茜が遠也を好きになる要素、根拠が弱くて頭を傾げざるを得なかったです。透明な状態から見つけてくれた時点で好感度MAXですか?という。
それと、茜が認識されない範囲とかの説明ももっと早めに詳しくして欲しかったです。家帰って寝てるの?とか、それこそ、こういう状況下での鉄板である、他の人から見たら服だけ動いてるの?とか。今回は、認識が修正されるパターンのようでしたが。
それから、家族が噂を信じてるのはギリ分かるとして、学校の外の人は勿論、学校内でも必ず茜が見えてる人っている筈なんだよな…。そんな学校丸ごと茜の虜って訳ないんだから…。そういった粗も終始気になってました。
先輩の遠也は他人と仲良くして欲しい!という願いを逆行する行動しか取らんコイツまじで何なん…。それと話の都合上、主人公が心無い言葉を言われまくってるの読む側にも気分が悪いよね…。
今回のbest words
……べつに森林浴してただけです (p.90 遠也)
あとがき
ニャンボス好きの深森さんをすこれ。
茜好き好きの玲奈先輩が、茜が入れ替わってるのに気付いてないの悲しい。