心和のラノベ感想

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毛布おばけお金曜日の階段 感想

毛布おばけと金曜日の階段 2002.12

 

今回は、毛布おばけと金曜日の階段です。

短編集で3編収録されていますが、キャラクター設定なんかは全て共通で、主人公の視点が変わる感じでした。主な内容は、タイトルの通りで、橋本さんらしい素朴な話の中に大事な教訓が含まれているようなテイストで、面白かったです。

感想

〜みちのながてをくりたたね〜

タイトルは万葉集の句から。父を交通事故で亡くし、母は精神病院に入ってしまった管野未明。取り立てて得意なものはないが、何をしても完璧な姉を持つ。

しかし、その姉は金曜日になると毛布に包まった別人格?の毛布おばけとなり、階段で未明、そして当たり外れのある自作菓子を持ってくる和人と共にお菓子を食べる、そんな奇妙なお話。

そんな中、未明は親友の真琴ちゃんを女の子として密かに好いていて、そんな真琴ちゃんは引っ越しする事になり、和人に背中を押されて当日、告白しにいく。自転車を引ったくって後で怒られるのが面白い。告白は友達としてで受け取られてしまうというオチだけれども、すっきりしたのなら良かったよねと。

和人が父の愛人のいる京都に未明を連れていくのも、中々凄いことだ…。両親が健在なだけ幸せと言えるのか。

〜花火の下、きみの微笑みを〜

和人視点。実はこの和人は未明の5つほど離れた姉さくらと付き合っているらしい。そんな和人が背伸びして10万円の指輪を買う為にバイトに明け暮れるけれども、さくらは本当に高い物を貰ったら喜ぶのかという話でもあり。金曜日以外は普通なんですよ。

レコード店のバイトは橋本さんもそんなバイトをしていたとあとがきで書いてたような笑。

女は必要とされている実感が金や物より大事とか、男はバカくらいの方が丁度良いとか、知らないで痛い目に遭うより知って痛い目に遭う方が良いとか、迷っていると分かっているなら迷っても良いとか、人生の深さを感じます。

〜缶コーヒーの行方〜

このタイトルも最後まで読むと味わい深い。直で入らなくても良い。前の話で和人に的確な助言を与え続けた都築が、お試しで未明と付き合う事になる話。結局上手くはいかないんだけど、未明がやっぱり真琴ちゃんを好きだと確信できたのは良かったのでは、みたいな。

なんだけど、何となく未明には和人の方がお似合いな気もする。和人の明るさや思い切りの良さが、未明にとっては明るさを与えているというか。あの毛布おばけの時間が大切だったり。因みに、未明の読み方は"みはる"です。

アーノルド・シュワルツェネッガーのパネルを運ぶ話が好き過ぎる。お父さんに喜んで貰おうと思っている少年が微笑ましい。

今回のbest words

アーノルド・シュワルツェネッガー (p.230)

あとがき

1冊の完成度で言ったら、結構好きな部類だったなー。これはお勧めしたい。ヤスダスズヒトさんのイラストも好きなんですよね。

毛布おばけがどうなったのか、未明の恋はどうなったのか分からないままですが、何となく前向きな終わり方だったので安心かなぁ。