りゅうおうのおしごと! 感想 ★★★★★

2015.9

今回は、りゅうおし1巻です。(再読)

6月にシリーズ最終巻が出るという事で、読み返していきます。ブログに感想を残す前に読んでいた作品なので、その辺りでも丁度良いかなと。

本作は将棋を題材として、その熱い戦いぶりは勿論、小学生の内弟子が登場する事でロリコン的な要素も含んだ物語です。ギャグやキャラクター間のやり取りのゆるさ面白さと、硬派?な将棋の奥深さの両側から楽しめるお得な作品だと思います!

あらすじ

15歳でプロ棋士となり、史上4人目の中学生棋士、史上最年少で竜王の座に着いた九頭竜八一は、最近は連敗を重ねていた。

「おかえりなさいませ!お師匠さまっ!!」

自宅に帰ると、見知らぬJSがいた。その子の名前は雛鶴あい。竜王戦で八一に憧れ、弟子になりたい一心で北陸から単身やって来たのだと言う。軽くいなすつもりで対局をすると、あいの才能を目の当たりにすると共に、八一は将棋の熱さを思い出すのだった。

感想

先が気になる展開で、ラノベ的なゆるさも相まって読みやすく面白かったです。

まず言いたいのが、将棋という題材をラノベで表現する難しさをよくぞ書き切ってくれたなという事です。

というのも、こう言ってしまうと語弊があるかも知れませんが、ラノベというジャンルは基本深い知識が無くても書けてしまう場合が多いから。

対して、将棋は一見単純なゲームに見えて、戦術は多岐に亘り、さらにはその業界に関係していないと詳細に記すのが難しい分野だと思います。だからこそ、将棋あるあるみたいな話がちょいちょい出てくると、勉強になります。

実際に、作者は関係者への取材等を通じてこの作品を上梓されているようで、監修依頼も含めて、手間が掛かってる作品なんだなと。だからこそ、フィクションでありながもリアリティがあって、将棋界にとっても良い導入になっていると感じます。

まぁ、将棋を少し齧った事のある程度の自分では、口頭で将棋をやられるとポカンとしてしまうのですが、それ以上に作中に熱量があり、キャラクター間のやり取りも面白いので、読み進められるという感じでした。

また、将棋と言えば派手さがなく静なイメージがありましたが、物語背景やキャラクターの魅力、真剣勝負の模様からこんなに熱くなるんだなと。

さておき内容の方ですが、不調な八一の内弟子を取る事による意識の変化、弟子入りを賭けたあいの研修会試験が主でした。

八一の不調については、恐れ知らずで竜王まで昇り詰めたものの、研究されてからは振るわなくなったという感じ。さらに、竜王の重圧から、下手な棋譜を残せないという思いから、泥臭さを忘れていたというものでした。

2015年時点でもネットでスレが立つような状況で、八一自身も周りの目を気にしている節があったというのは、その若さ故でもあるのかなぁと思います。

高校2年の年齢で、中卒で将棋一筋な訳で、ようやく負けを知り始めた時期。

そんな所で現れたのがJS(女子小学生)の雛鶴あいであり、竜王戦終戦の宿屋の一人娘で、ある意味将棋人生における命の恩人(竜王戦で呼吸困難になりかけた八一を介助した)でした。

後になって、家出して八一の部屋までやって来た事が判明する訳ですが、その行動力や遖です。北陸から大阪に1人でやって来るという。さらに、家事スキルも申し分なし。金沢カレー食べたい。

あとは、"だらぶち"とか咄嗟に方言が出ちゃうのも可愛い。

あいの強さは、始めて3ヶ月でありながら、その類稀な記憶力で詰将棋を極めている所と、集中力の高さ。こうこうこう…が最初に出た所の半分の挿絵が良かったです。

そう言えば、ほぼ開幕の所での清滝師匠のオシッコォォォに触れない訳にはいきませんね笑。八一は内弟子として師匠の家で住み込みで将棋を学び、その恩返しで師匠に勝利する訳ですが、真剣勝負だからこそ利き手側のズボンに皺が寄るし、その悔しさ故に乱調すると。

この衝撃的なシーンは、読んでから何年経っても忘れないです笑。

そして、師匠の娘の桂香さん(隠れ巨乳)は25歳くらいで、面倒見の良さそうなおねいさん。姉的な存在でありながら、弟弟子(ややこしい)。

それから、姉弟子で、浪速の白雪姫こと空銀子。こちらも、年齢では八一の下なものの、八一より早く清滝師匠の弟子になり、2人で切磋琢磨してきた仲。

プロ棋士女流棋士の差は今後出て来るとして、銀子は既に女性棋士としては最強格との事。その強さと容姿から周囲から人気がある一方で、その素っ気なさと毒舌振りも良かったです。ツンデレ適性もあり。

特に、VSで八一の家を訪れる場面で、あいとの修羅場が起きるのが分かっていても面白かったですね笑。あいへの敵対は、八一を取られまいとする心から?

あとは、あいの将棋仲間のJS研として、水越澪、貞任綾乃、シャルロットちゃん(かわいい)や、八一のライバルとして東京の棋士、神鍋歩夢(ゴッドコルドレン)6段なども登場。

歩夢は、将棋あるあるで八一の昔からの顔馴染みで、厨二病キャラでした。対局中に優雅に紅茶を飲むかと思えば、実は下町の豆腐屋の倅らしい笑。だから、弱点は夜中に試合が長引くと集中力が落ちるとのこと。それと、ドラゲキンを広めた男。

香車をランスと呼ぶのは強ち間違いではない、らしい。

とまぁ、キャラクターもてんこ盛りでしたが、全員個性的だったので問題なし。ただ、今後もっと増えていくだろうし、戦術とか力関係とか、バトル少年漫画的な問題に直面しそうで大変だな〜(他人事)。

先述の通り、あいは家出同然でやって来た為、あいの両親が連れ戻しに来る場面も勿論ありました。旅館の為、住み込み弟子の方はすんなり容認されるものの、女将の修行を考えて将棋は辞めさせたい方針のようで。

そこで、研修会試験での3連勝が課題とされ。あいはその才能と実力を遺憾無く発揮し、試験自体には合格するものの、3戦目で銀子と対戦。世の中はそんなに甘くなく、盤外戦術も含め圧倒され敗北。

ただ、才能の片鱗を見せた事は確かで、さらに成長の芽がある事は明らかという事で、八一の熱い説得(相土下座事件)により、何とか女将の許可を取り付ける形に。

無慈悲でなかったのは良かったですが、上手く育てられなかった場合に、婿養子となる事を約束させられてたのは大丈夫なのか…。何か結婚の挨拶っぽい雰囲気になってるのはご愛嬌。

因みに、あいの父も婿入りのようで、女将に何度も頭が上がらないやり取りが出て来たのは面白かったです。未来の八一のifかも知れない。というか、清滝師匠がひな鶴で人間全裸将棋やったせいで印象悪かった説あるな…笑。

今回のbest words

ししょうの玉……すっごく固い…… (p.2 あい)

→こういうなんちゃって下ネタ好き

あとがき

今でこそ将棋はかなり世間的に浸透してきていますが、羽生名人の名声こそあれ、当時はまだまだマイナー寄りだった気がします。思い返すと、そこから藤井聡太らの台頭もあって、その取り扱いが難しいとは言えホットなテーマだったんだなと思います。

感想戦として、バニーの供御飯万智とメイド姿の月夜見坂燎の短編が巻末にありました。銀子を懐柔出来るのはやっぱり八一だけ?!