心和のラノベ感想

1ヶ月15冊読了目標!

いまさら翼といわれても 感想

いまさら翼といわれても


今回は、古典部シリーズ第6弾です。

まず思ったのは、これで完結やないんかい!ってことです笑。いや寧ろ良い所で終わってしまったという感じ。本書のタイトルは6本目に収録のサブタイトルと同じで、今回も短編集。小さなミステリーを扱う上ではこういう構成の方が理に適ってる気がします。

感想

〜箱の中の欠落〜

生徒会長選挙が行われたものの、開票した際に生徒数以上の票が投票されていた謎を扱う話。厳重に行われた選挙の中でどのタイミングで偽の投票があったのかや箱の中を疑うのではなく、各クラスに分配される投票箱以外の投票箱が使用されて、そこの部分の確認がシステム上怠ってしまっていたという結末でした。

奉太郎の姉宛に来ていた3年I組同窓会のお知らせの郵便物が、昔はクラスが今より1クラス多かったというヒントだったとは。人助けはやらなければいけないことの埒外って感じですかね。

〜鏡には映らない〜

面白かったです。奉太郎が俺ガイルのヒッキーに思えてきます。

中学3年生全体の卒業制作で、鏡とそれを囲う板に彫刻をする事になり、各クラスでパーツが分配され、奉太郎が担当した箇所は生徒がデザインしたものとは違うものを提出したことで、奉太郎が嫌な奴として疎まれたという話。しかし、伊原は今考えてみると折木はそんな奴じゃないということで、真相を探るという内容でした。

肝は、デザインした生徒の名前が鷹栖亜美であり、真相を探るうちに浮上した関係者の名前が、鳥羽麻美だったことで。何と、鷹栖は作品のデザインに逆さに見ると「WE HATE ASAMI T」と隠されたメッセージを残していて、それに気付いた奉太郎が細工をした結果「WE HATE A AMI T」としていたと。

自分が矢面に立って汚名を受けた奉太郎でしたが、鳥羽さんからしたら確かにヒーローですよね。でまたこういう事を言いふらさないのが格好良いなぁ。ぶっきらぼうに「だって曲がってると面倒だろ」ですもんね笑。

〜連峰は晴れているか〜

これはアニメ化されてた話ですね。中学時代の小木先生が前にヘリコプターが好きだと言っていたことや、雷に3回打たれた事があるらしい(当たったのはサンドダー)というふとした記憶から、当時の先生の気持ちを明らかにしていくというもの。

結果として、当時のスクラップから小木先生は山岳会の会長である事が分かり、例のヘリコプターを気にしていた日の前に、山で遭難事件がある事も判明し、救助の為のヘリコプターが動員できるかの天気を気にしていた事が今になって分かる。

この話の優しい所は最後の部分で、この事実を知ったことで先生は単にヘリコプター好きだったと片付けてしまう無神経さを恥じていた所でした。自分の好奇心<他人の心配をする奉太郎に千反田は何を思ったのでしょうか。

〜わたしたちの伝説の一冊〜

伊原が漫研を辞めるまでの話。辞めたって話はどっかで出てたと思いますが、前向きな理由だったので良かったです。

漫研の中で、読んで楽しむ派と描いて楽しむ派に分裂してしまって、後者にいる伊原は、派閥のメンバーからひっそり同人誌を作って有利に進めようとした所を、相手方にバレて立場が危うくなる…という展開。

紆余曲折ある訳ですが、結局伊原を救ったというか導いたのは、文化祭の時に揉めた河内先輩で。この部で油を売ってる暇があるなら自分の才能を自覚して一緒に漫画を作ろうと。河内先輩は悪い人ではなかったですね。掃き溜めに鶴って感じかな。

頼んだコーヒーが苦くて角砂糖1つを入れたらやけに甘かったという話、真相は元からコーヒーに1つ角砂糖が入っていて、そこにもう1つを1個目だと思って入れてかき混ぜたから想像より甘くなった、というのは面白い。あと、奉太郎のメロスの読書感想文、全然本筋に触れてないのが奉太郎らしいなぁ。

因みに、わたしたちの伝説の一冊=夕べには骸にですね。

〜長い休日〜

調子がいい奉太郎も珍しいんですが、このタイトル、単に1日が長く過ごせたラッキーって話ではなくて、奉太郎のモットーを崩す人物の到来を供恵が予期したものだったと。そんな訳で、奉太郎の「やらなくてもいいことなら、やらない。やらなければいけないことなら手短に」が如何にして生まれたのかの過去話があって、興味深かったです。

奉太郎が小6の頃、校内環境係で男女ペアで花壇の水遣りの仕事をしていた。女の子が家の事情で早く帰る必要が出来て、奉太郎に仕事が一任されるようになって、始めこそは謝罪と感謝があったもののそれも薄れていったと。そんな時に、その子のランドセルが紛失する事件があって、その理由が放課後遊んでいたからという事を知り、それがきっかけで自分が都合良く仕事を押し付けられがちな事を自覚してしまったという話。

これを読んで、貧乏籤とか縁の下の力持ちとかが浮かんできたんですが、うーん押し付ける側も悪いし、押し付けられる側も悪いのか…。こういうのはどっかで断ち切らないとズルズルいっちゃう気がします。よく考えてみたら、奉太郎の字にも「奉」という字が入ってるな。

言いたくなかったらでいいです。=言いたくなくなったらでいいです。の所は千反田らしい笑。

〜いまさら翼といわれても〜

合唱祭に出場予定の千反田が会場からいなくなったと伊原から聞いて、千反田を探す話。千反田は前日に家を継がなくても良いと急に言われ、途方に暮れたのではないかと。いまさら自由に生きろって言われても、いまさら翼といわれても…。

しかもこれ、結末が書かれていないんですよねー。千反田を見つけた後に会場に向かったのかそうでないのか。ただ、雰囲気的に戻る事=問題を解決して吹っ切れたか、自暴自棄になったかだと思うので、責任感は抜きにして戻らない方を選択しそうな気はします。いや、奉太郎がここで例のセリフを言えばもしかすると…?

今回のbest words

えるきてるよ (p.244 十文字かほ)

あとがき

古典部シリーズは高校卒業まで続くと期待しても良いんでしょうか。いや、期待というより希望?しかし、今巻の刊行は6年前なのだが…。やっぱり期待?