心和のラノベ感想

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半分の月がのぼる空8 another side of the moon_last quarter 感想

半分の月がのぼる空8


今回は、半月8巻です。

短編集第2弾。そして、半月シリーズも最終巻…。

表紙は、ウェディングの里香。

感想

〜雨(後編) fandango〜

のっけから前回のノリで、女子の隠し撮り写真のオークションが行われていて。里香の何の変哲もない写真を結局1万円で落札してしまう裕一だったと笑。高校生ってお金ないもんなぁ…。それでも、里香の写真を他の人に渡したくないという気持ちに男を見ました。

山西は実は建設会社社長の一人息子だったのかー、偏差値37だけど笑。司とみゆきの仲の良さに機嫌を悪くしたのではなく、料理でやっていこうとする司とは異なり、自分の力で生計を立てていけないというか、家族が政治家と建設会社の結び付きで私腹を肥やしながらも、それを否定できない自分に苛立ちのようなものを感じていたとは。根は真面目なのかなとも思えてくる。

そして、里香はやはり演劇に参加することになって、夏目の計らいで裕一が相手役として飛び入り参加をして。里香は演劇に天稟があって、でも最上の笑顔を引き出せるのは裕一だけで。里香は我儘だけど不器用で恥ずかしがり屋なんですよね、実は。

〜蜻蛉 dragonfly〜

飯テロ話。唐揚げ丼が食べたひ。世古口家の人は大食漢で健啖家であるなぁ。

旧字体が沢山出てくるのが面白い。コメディ色強めな話かと思いきや、割としんみりというか、ハッとさせられる感じ。

夢を持てないとか迷って懊悩するとかある訳ですが、それって今が自由で選択肢があるからこそそういうことを考えられるんだよと。戦争の時代は、有無をも言わせぬ雰囲気があって、先人たちの事を思うと自分も頑張らないとと思えてくるというか。すごいけど馬鹿らしい話、慥かにそうだなぁ。

トンボっていうと、前にしか飛ばないから不退転の象徴みたいに言われてますが、特攻隊と重ね合わせてるのかな。あとは、秋へと移り変わる季節的な。

〜市立若葉病院猥画騒動顛末記 the war〜

多田コレクションを巡って、患者と病院側で闘争をする話。昔の人って血気盛んというか言論の標榜が好きですよね…。いや、今の若者が意見を余り持っていないとも言えるかも。

1巻の前日譚に当たるエピソードだと思いますが、何となく腑に落ちないのが、里香がエロ本の存在をここで知ることになる点です。2巻冒頭で、戎崎コレクションがバレる訳で、この時点で里香が多田コレクションを知っていた場合、裕一は2巻の時に言い訳出来たんじゃないかな、と。

実際、見つかった時に裕一が言っていた造反有理というワードが今回出て来ますしね笑。

〜君の夏、過ぎ去って as the summer goes by〜

里香の中学時代の頃のクラスメイト、吉野綾子の話。人間の弱さとか醜さが随所に見られて少し暗めな感じ。里香が気に食わない医者にお粥と味噌汁を浴びせたシーンも。

小夜子さんと筆者が言ってること同じ笑。

今回のbest words

もうちょっとそばにいろ (p.97 里香)

あとがき

半月もこれにて終了です。奇跡も、魔法も、ないんだよという物語でしたが、それでこそ人間らしさがあって、他人にとって何でもないような、とりとめのないものが大切だったり幸せだったり、まぁそんな心温まる話でした。