心和のラノベ感想

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半分の月がのぼる空4 grabbing at the half-moon 感想

半分の月がのぼる空4


今回は、半月4巻です。

これは神回じゃ…。夏目吾郎の過去話が中心なんですが、こんなにしっかり深掘りして貰えるとは。

あらすじ

「おまえにとっちゃ、最悪の結末だ」

手術室から出てきた夏目は言った。里香は生きているとのことだが、様子が分からない。そうこうしている内に、裕一は里香の母から里香に近付く事を禁じられてしまう。

彼女が出来たと燥いでいた山西だったが、後に当て馬だった事を知り、裕一と病院の屋上でヤケ酒を呷る。一方その頃、亜季子は夏目から過去話を聞いていた。

感想

一人の人生を追体験しているようで、とても良かったですね。そして、如何に夏目という人物像が形成されたかが詳らかになる。裕一の境遇ととても似ていて、夏目は昔の自分を見ているような感覚で裕一に接していたんだろうなぁと感じました。

主人公でもないキャラクターの過去がこれほどまでに丁寧に掘り下げられるということにまず感激でした。そして、これがまた良い話なんですよね。等身大で、ありがちだけれど、劇的で。

夏目は、その要領の良さから順風満帆な学生時代で。派手目な女子と付き合う事も多かったけれども、大人しめな小夜子に出会って何故か惹かれて。トントン拍子で医大、大学病院へと進んでいく中で、小夜子が病気(それも心臓の)だと分かっていって、散々悩んだ挙句に、出世街道よりも小夜子を選ぶ決意をして、と。

漠然と医者になるのって大変なんだなぁと思いつつ、何でもないような2人のやり取りが温かくて、小気味良くて。小夜子が超美人という訳ではなくて、お淑やかというか普通寄りなのがまた良いんですよね。夏目が帰ってくるのを、家で見ていて料理を出してくれるシーンなんかは、素朴だけど胸にくるものがありました。

また、一旦裏切って他の女の所にいく部分なんかは、裕一とも重なりますよね。

今回通して、里香の病状は明確に描かれていなかったですが、やはりこれ以上快方に向かう感じはなさそうです。彼女の幸せが何より選ぶべきことと思えるかどうか、これが肝なんだなと読むほどに痛感します。

裕一の選択が夏目の救いになって欲しいなぁ。

また、未成年飲酒をしちゃうってのが昔のラノベらしいですよね笑。まぁ、昔はもっと緩々だったでしょうし、そもフィクションなので良いんじゃないかと思いますが。

イーだの顔好き。

今回のbest words

里香のためだと思えば、なんだってできるだろ。本当に欲しいものは自分の手で強引に掴み取れよ。おまえの両手はそのためにあるんだぜ。 (p.307 夏目)

あとがき

半分の月という表記が今回頻出してました。半分と言うからには、やはり欠けているものがあるんだろうなと思います。どんなに嬉しいことがあろうと、悲しいことがあろうと、平然とそこにあるのが月というもので、良くも悪くも捉えられるのかなー。

里香の病状は気になる所です。今回の話が綺麗に纏まっていたから、クライマックス近いと思いきや折り返しか。

司のプロレスコスは今回も健在でしたが、兄も出てくるとは笑。