心和のラノベ感想

1ヶ月15冊読了目標!

ミモザの告白 感想

ミモザの告白


今回は、八目迷さんの3作目、ミモザの告白です。前2作品を読んで、舞台設定の秀逸さや状況説明の上手さを感じていましたが、今作も読み易かったです。また、これまでの作品では時間移動系の設定絡みでしたが、今回は奇異な設定はなく、高校生活のよくある展開の上に三角関係が入り込むといった内容になっています。

ただ、特異な点としてはヒロインが性同一性障害を自認し、男でありながら女子として主人公に好意を伝える点でしょう。1巻の表紙はメインヒロインというラノベの暗黙の了解がありますが(冴えカノは特例)、表紙を飾る槻ノ木汐は女子高生然としながらも性別は男という。今までのラノベには中々なかったジャンルを取り扱っている作品となります。

あらすじ

紙木咲馬の幼馴染、槻ノ木汐は美少年で運動神経抜群であり、クラスの人気者であった。ある日、忘れ物を取りに教室へ戻った咲馬は、星原夏希を見つけ偶々小説の趣味が合ったことで意気投合し、連絡先を交換することに。家に戻り夏希と連絡をしていく内に夏希への恋慕を意識する。その後、興奮を鎮めるため散歩に出掛けると、肩を落とす女子中学生の制服を着た汐に遭遇するのだった。

衝撃の光景から数日、汐は学校を休み続けていた。そして、10日が過ぎ現れた汐は自分はこれから女子として生きていく事をクラスに告げる。困惑しつつも受け入れたかに思えたクラスメイト達であったが、クラスの女王様、西園アリサはそんな汐を認められず悪罵を浴びせていく。日に日にアリサの嫌がらせがエスカレートしていく中で、咲馬と夏希と汐が三角関係である事が浮き彫りになっていく。

定期考査を近くに控えた頃、東京から引っ越して来たという他クラスの世良慈は、一目惚れから汐に告白をし、汐は学年1位を取れば認めると返答する。咲馬は夏希から1位を取って2人の交際を食い止めて欲しいと相談を受け、必死に勉強をすることに。それと同時に、咲馬は世良について調べていく内に、世良が女誑しであることを知る。汐からの好意をどう取って良いか分からないまま、夏希らの力を借りながら勉強を続け、咲馬は学年1位を取ることに成功する。

相当な学力を持ちながら勝負を投げ出した世良を差し置いて、汐に報告に行く咲馬。そこで、促されるまま自分が好きな人は夏希であると告げると、汐は隙を狙ってか咲馬の唇を奪う。そして、夏希はその現場を目撃してしまうのだった。

感想

まず、タイトルについてですが、ミモザというのは植物の1種ですね。花言葉というのも色々あって曖昧ですが、一応ミモザには愛についての意味や友情、その他にも国際女性デーのシンボルとして使われているだとか、サラッと調べた感じそんなとこみたいです。なので、性同一性障害とか物語の根幹に関わる意味で採用されたのかは判断つかない感じです。

性同一性障害LGBTについては、昨今頓に取り沙汰されてきており、同性婚等も頻繁に議論に上がっている印象です。僕も勿論色々と信条はありますが、この件については、そういう人もいるんだなとか、人の好き好きで良いのではと思っている身です。なので、今作のように今まで男で通ってきた人が、今日から女として生きますといったところで、一時は戸惑いこそすれ、結局はほーんとしか思わないと思います。これは、いかに当事者意識を持っていようとも同様かと思います。

ただ、言い出すタイミングは絶対に良くないですよね。これからの着替えとかトイレとかどうするの?ってそりゃなりますもん。これはもう物語の展開上仕方がないと割り切りましょう。

冒頭で展開はテンプレに近いと書きました。女王様の一連の流れですが、物凄く同ガガガ文庫弱キャラ友崎くんの展開に似ていますよね。スクールカーストってそんなに絶対なものかなぁとつい思ってしまいます。まぁ、こういうのも含めてラノベの青春もののジャンルは確立している気もします。

そういえば、汐が咲馬に絆創膏をしてあげるシーン、あそこは個人的に凄く好きです。何か絆創膏を貼ってもらうっていうのはとても女子らしいし、ドキドキするものですよね。またその絆創膏がキャラものだったりで可愛かったりみたいな。

さて、今作で考えさせられた場面と言えば、アリサによる、女として生きる決意をした汐への批判と、咲馬による、何股もかける慈への批判を比べたところでした。両者批判の内容は全く異なる一方で、他人を批判しているという点では一致しています。人の数だけ価値観があって、正解もまた同様で、自分を正当化し他を排斥しようとする人の傲慢さに警鐘を鳴らしているように感じました。また、他人と違うことはしたくないとか、悪目立ちしたくないとか人間心理の悪い部分も加えて考えさせられました。

そもそも、性同一性障害は自己申告するしかないですからね…、周りの人は他人の苦痛などを同程度感じる事は出来ないように、性同一性障害の人の気持ちを完全に理解するのは無理なんですよね。言うは易しですが難しい問題ですね。

あとがき

既に2巻が発売されているので、早い内に読みたいと思います。この物語のハッピーエンドの落とし所はどこになるんでしょうか。うーん、やはり神様が汐の性別を間違えなければこんなことには…。

2022.1.23